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Jouaniceras (Ainoceras) paucicostatum
【推定年代】 中生代白亜紀後期カンパニアン(約8300万~7060万年前) 【産地など】 北海道留萌小平町達布(小平蘂川?) 【解説】 白亜紀の終わり頃、急激に数を増やした「異常巻きアンモナイト」の一種の化石。 亜属名の「アイノセラス」は、北海道アイヌから名を取っている。 中心の気房部は巻貝のようだが、住房部にいくにつれ巻きが徐々に解けていく構造をしている。 ほぼ割れがない完品の標本で、欠けていることが殆どの先端も保存されている。 オンラインで確認できる科博所有のホロタイプ標本(同亜属kamuy)よりも、状態が良い。 このクラスのアイノセラスは、そこそこな保存度のニッポニテスよりも貴重なのではないか。 割れずに保存された運の良さと、超絶クリーニング技術に感服するほかない。 それなりに高額だったが、金額以上の価値と思われる。
化石Shimomotoyama3
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ヤンソンテナガコガネ(Cheirotonus jansoni)の標本
【年代】 1993 【産地など】 北ベトナム 【解説】 中国南部からベトナムにかけて生息するヤンソンテナガコガネのパッキング標本。 沖縄県北部に生息する天然記念物ヤンバルテナガコガネ(Cheirotonus jambar)と非常に近縁な種で、形態・生態的にもよく似ている。 体長約63mm、非常に迫力のあるコガネムシで、最大の特徴とも言える長い前腕部も含めると人の顔ほどの大きさがある。 この特徴的な長い前腕は雄しか持たない。 人の手の入らない原生林に生息し、詳細な生態は分かっていない。 大木にできた樹洞で幼虫が育つ事が判明している程度。 ヤンバルテナガコガネ同様に本種も希少種で、中国では国家重点保護動物に指定されているという。 新生代新第三紀中新世(約1500万年前)にはこのような大型テナガコガネ類が日本本土部にも生息していたらしく、鳥取県で化石資料が発見されている。 なお、本種含む外国産テナガコガネ類は全て特定外来生物に指定されており、生きた状態では日本に持ち込むことができない。 これはヤンバルテナガコガネとの種間交雑を防ぐ意図があるという。
昆虫Shimomotoyama3
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メソポタミア文明の土偶
【推定年代】 メソポタミア文明後半期〜中アッシリア時代 【産地など】 上部メソポタミア 【解説】 メソポタミア文明期と推定される地母神土偶。 全高16cm弱。 右耳正面側、鼻、脚部下側が樹脂か何かの素材で補修されている。 画像6枚目は、すでに紹介しているメソポタミア文明の土偶残欠との比較。 大きさがほぼ均一に造られている事が分かる。 この鳥とも蛇ともつかないような謎の偶像は、新石器時代〜金属器時代の古代西ユーラシア世界においては普遍的に見られた。(既に紹介中の、ヴィンチャ文化ならびにヒッタイトの土偶も同じものか。) 農耕の開始と何かしらの関係があると考えてみても良いかもしれない。
考古Shimomotoyama3
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古代地中海ガラス玉
【推定年代】 BC2~AD2 【産地など】 地中海地方 【解説】 ローマ初期、前2~2世紀ころのローマン・ビーズで、濃紺のクリアなガラスで制作された長径11mm程のガラス小玉。 ちょうどパチンコ玉と同程度の大きさ。 引きガラス製法で制作され、このため本品の胎には、縦に細い線が確認され、また、孔の両端の面でも孔に向かい細い線が表層近くに残されている。 気泡崩れの跡や縦線の割れ目、また、両側の気泡崩れなど孔などに、小粒の銀化が確認できる。 銀化は、弱い酸性の水がガラスに浸透して、ガラスの成分が周囲の鉄、銅、マグネシウム分などと化学変化が生じ、形成された被膜によってプリズムのような光学干渉を起こして虹色に見える、古代ガラス特有のパティナ(古色)の一種。 特に東地中海地域で制作され、古代世界で植物灰ガラスに代わって圧倒的になったナトロン・ガラスで銀化が多く発生するとされる。 ローマ期のロイヤル・ブルーからネイビイ・ブルーの発色には、少量のコバルトが用いられ、本資料の濃紺や青は、ローマ期のクリアな青ガラスと同様に、コバルト青を着色剤に用いたと想定される。 地中海や西アジアで制作された古代ガラスは、シルクロードを経由して弥生〜古墳時代の我が国にも齎されており、例えば弥生時代の北部九州にみられる首長クラスの王墓では、この様なローマンガラス製ガラス小玉が副葬品として既にみられる。
考古Shimomotoyama3
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縄文土器片 装飾把手
【推定年代】 縄文時代中期 【産地など】 出土地不詳 【解説】 縄文時代中期と思われる装飾把手の残欠。 残念ながら出土地不詳だが、おそらく関東甲信越のものではないか。 立体的な渦巻き模様の意匠が非常に巧妙で、奈良時代の「隼人の盾」逆S字紋様や、アイヌの刺繍に見られる渦巻き紋様に似たものを感じる。 縄文の渦巻き意匠が各地で伝承されたか。 小さいがよく作り込まれており、個人的には気に入っている。
考古Shimomotoyama3
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蛋白石(ボルダーオパール)
【推定年代】 現代 【産地など】 オーストラリア 【解説】 オーストラリア産のボルダーオパール。重量196g(980ct)。 全体に渡って遊色が強く、オパール層も厚く、大きさもかなり良い。 掲載画像は全て乾燥した状態のものだが、水に濡らすと更に遊色が強くなる。 蛋白石(オパール)は、3-10%程度水和された天然シリカのアモルファスであり、特殊な形成条件を満たした極僅かな物のみ遊色を示す。 特に遊色効果を示すオパールをプレシャス・オパールと呼び、貴石の一つとして珍重する。 ボルダーオパールは、オーストラリアに固有のオパールの一種。 現在のオーストラリア東北〜南東部は、白亜紀には古エロマンガ海という内海が広がっており、当地区地下の鉄鉱石を多分に含んだ岩盤層へ、シリカを大量に含んだ海水が流入、岩盤間の亀裂などに充填された。 このシリカ含有海水が、長い年月経過で適度に脱水作用を起こし、茶褐色の母岩の間隙にオパール層が充填されているという、ボルダーオパールの独特な外観を形成するに至る。 なお、この地域では貝化石や木化石もオパール化している事がある。
鉱物Shimomotoyama3
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石鏃・石槍
【推定年代】 縄文時代草創期〜晩期 【産地など】 北海道、青森県、大分県、福岡県 【解説】 縄文時代の石鏃や石槍一式。 石材は、北海道十勝地方産黒曜石、大分県姫島産黒曜石、サヌカイト、瑪瑙、頁岩など。 縄文時代は、大型獣の狩猟のため石器サイズも大型化した旧石器時代と異なり、比較的小さな鳥獣を仕留めるため石器サイズが小型化・軽量化している。 縄文時代の石鏃は骨董市場で多く出回っており、考古資料としては土器片と並んで比較的入手しやすい部類である。
考古Shimomotoyama3
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緑柱石(ベリル)
【推定年代】 現代 【産地など】 パキスタン 【解説】 緑柱石(ベリル)の結晶を含む原石。白い物は共生している雲母。 アクアマリンという事で入手したが、青みが薄くどちらかと言うとゴシェナイトなのではないか。 純粋な緑柱石は無色透明だが、各種イオンが混じる事で発色し、有名なエメラルドはクロムイオンやバナジウムイオンが混じって緑色を呈したもの。 鉄イオンが混じって青色を呈したものはアクアマリンと呼ばれる。
鉱物Shimomotoyama3
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縄文人のフィギュア
【推定年代】 現代 【産地など】 日本 【解説】 国立科学博物館限定のガシャポンフィギュア。海洋堂制作。 同館に展示されている縄文人男性の復元像を、若干チープながらも再現している。 縄文人は日本史において独特な人々で、現代の平均的な本州日本人とかなり異なる特徴を持つ。 最新のゲノム分析から、縄文人はアンダマン諸島に分布する狩猟民や、タイ奥地に住むマニ族という先住民に遺伝系統が近く、またホアビニアン文化と呼ばれる東南アジアの古代人とゲノムの特徴がほぼ完全に一致することが判明している。 身体的な特徴としては、 ・身長が低く、体脂肪値や血糖値を高めやすい。 ・感染症に弱い一方で、アレルギー傾向は少ない。 ・上顎前歯の裏側が平型。 ・顔高・眼窩高が低く、前頭骨・鼻骨が矢状方向に発達する。 などがある。 沖縄人や北海道アイヌは遺伝的にはかなり縄文人に近く、特に北海道アイヌに関しては、骨格を比較した解剖学者から縄文人そのものと考えられていた。 現代では「そのもの」では無いにしろ、遺伝的にも非常に近い存在の事は変わりないという結論が出ている。 本州日本人においてもゲノム中の縄文人由来遺伝子の割合に地域差が存在し、東北各県・北関東・島根県・南九州では縄文人度が高く、逆に近畿・四国では縄文人度が低い事も最近判明している。
海洋堂Shimomotoyama3
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亀ヶ岡式の土器
【推定年代】 縄文時代晩期 【産地など】 青森県弘前市新岡薬師 【解説】 縄文時代晩期の亀ヶ岡式土器。 重量約53g。 湯呑み程度の大きさしかなく、模様も精緻である事から祭祀用であると考えられる。 当初はミニチュア土器とも考えたが、かなり精密に作られており、明らかに粗製土器の系譜ではない。 亀ヶ岡式に特徴的な沈線文が全体に施されている。 完形品で、状態もよく非常に貴重なもの。
考古Shimomotoyama3
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石棒
【推定年代】 縄文時代中期 【産地など】 富山県滑川市 【解説】 緑色片岩製の石棒の残欠。 残欠でありながら、重量312gの大型品。 石棒は縄文時代中期以降に見られる呪術的遺物で、男性器を模した物。 破断面が表面と同じく摩耗しており、おそらく埋納時に意図的に破壊されたものと思われる。
考古Shimomotoyama3
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メソポタミア文明の土偶
【推定年代】 新石器〜青銅器時代(5500〜5000年前) 【産地など】 上部メソポタミア 【解説】 メソポタミア文明のウルク文化期と推定される地母神土偶。 頭と下半身の2体あるが、1個体ではなくそれぞれ別の土偶のものと考えられる。 岡山市立オリエント美術館は、この土偶頭部と酷似した造形のもの(完形品)を所蔵しており、当時流行したデザインなのだろう。 また下半身の一体は、線刻で女性器を表現している点が興味深い。
考古Shimomotoyama3
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Douvilleiceras sp.
【推定年代】 中生代白亜紀前期(1億4500万〜1億年前) 【産地など】 産地不詳 【解説】 アンキロセラス亜目ドゥビレイセラス上科ドゥビレイセラス属のアンモナイト。 一応産地不詳だが、特徴的な黄土色の石質を見るとロシア産の可能性が高い。 進化の過程で、捕食者からの防衛の為に棘を外殻に装備するようになった珍しい形態を持つ。 ドゥビレイセラス属のアンモナイトはそこまで大きくならず、大きくても10cm程度。 この個体も最大径は5cm程度だが、最大厚みが3cmあり重厚な印象。
化石 白亜紀Shimomotoyama3
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コスモクロア輝石岩
【推定年代】 現代 【産地など】 ミャンマー 【解説】 翡翠輝石の組成式にあるアルミニウムが、クロムに置換した鉱物をコスモクロア輝石と呼ぶ。 隕石から発見されたことからこの名が付いたが、ミャンマー北部や新潟県糸魚川などでも産する。 比較的希少性の高い鉱物である。 重量18g程度。 深い緑の発色が、翡翠とまた違う美しさを持つ不思議な石。 ミャンマーではマウシッシなどと呼ばれる。 コスモクロア輝石の他に、翡翠輝石や曹長石、ソーダ沸石を含有するという。
鉱物Shimomotoyama3
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黒水晶(モリオン)
【推定年代】 現代 【産地など】 ブラジル 【解説】 重量846gもの巨大な黒水晶(モリオン)のクラスター。 基底部は煙水晶(スモーキークォーツ)に近く、先端に行くほど黒色が濃くなる。 黒水晶は、結晶中に含まれる微量のアルミニウムイオンが自然放射線の影響を受けて色中心を形成し、黒色を生じたものである。 天然の黒水晶でこのサイズは滅多に流通するものではなく、産地的にも鉱物標本としての価値が高い。
鉱物Shimomotoyama3