騎手の命を守るために生まれた堅牢な革、ブライドルレザー
ブライドルレザーは英国で生まれた伝統的な高級皮革素材です。馬具用素材として開発され頭絡(とうらく)、手綱(たづな)、鞭(むち)などに用いられてきました。中でも手綱は騎手と馬の意思疎通を測るための道具であり、かつ生命を守る大変重要な道具です。そのため、堅牢なブライドルレザーが多用されてきました。
英国は馬術発祥の地です。1539年に英国のチェスター競馬場で近代競馬は誕生しました。500年以上経ついまでも競馬はイギリスで楽しまれており、毎年6月にはイギリス女王主催の競馬「ロイヤルアスコット」が開催されています。
ブライドルレザーは牛革の皮革を皮から革への加工方法のひとつである植物タンニンなめし製法でなめし、蜜ロウ・タロウ・植物性油などのワックスを表面に塗り込んで作られます。
イギリスで1000年以上前から続く歴史ある伝統的な製法で、長い時間をかけてじっくりと蜜蝋ワックスや牛脂を染み込ませて仕上げることで、革の繊維を引き締め耐久性を高めると共に、独特の美しい光沢を生み出しています。 耐久性も素晴らしく、いまでは鞄や革小物などに用いられるようになりました。
ブライドルレザー3つの特色
表面に浮かび上がる、ブライドルレザーの白い表情
ブライドルレザーの表面に見える白い粉状のものは、ブルームと呼ばれているロウです。これは何か革に悪いことが起きているのではありません。ブライドルレザーである証です。
繊維の細部にまで染み込ませたロウが表面に浮き上がったもので、使用するにつれて何とも言えない深い光沢が生まれます。ブルームは、季節によって見え方が異なることがあり、夏場は高温により固まりにくくなる反面、冬場は表面に白く浮き出やすくなっています。
高級感と堅牢性を兼ね備えた、確かな皮革
ブライドルレザーは元々英国で馬具などに使われていた皮革。乗馬用の馬具に使用されているだけあって、高級感とともに堅牢さも感じられます。そしてロウを染み込ませることによって繊維間の強度を高めています。耐久性は素晴らしく、何十年もの使用にも耐えられる皮革が出来上がります。
ためしに指で押してみてください。確かなハリを感じられます。肉厚な皮革なので、手のひらで握るとグローブを握ったようなギュギュと音が鳴るほど。これらは繊維が凝縮されている丈夫な革の証です。
また、ブライドルレザーはオイルがたくさん含まれていることもあり、一般的な比較に比べると雨に強くなっています。フッ素加工などが施された革には敵いませんが、革本来の風合いを楽しむことができるという点ではブライドルレザーに軍配があがります。
使い込むことで唯一無二の表情に
厚みのある堅牢なブライドルレザーは使えば使うほど柔らかくなります。また、冒頭にも書いたようにブライドルレザーはオイルがふんだんに含まれています。撥水機能やエナメルコーティングなど科学的な加工は施していません。革本来の表情はそのままに、使い手のライフスタイルに寄り添い色艶が深まっていきます。
このエイジングが、ブライドルレザーが愛される大きな理由の一つです。
ブライドルレザーのメンテナンス
使ううちに自然とエイジングするブライドルレザーですが、より美しい表情に育てるならば、定期的なお手入れをしてあげましょう。
難しいことはありません。ブライドルレザーの基本のお手入れは乾拭きです。購入して使い始めた段階では、革の表面からブルームが出てくるので、乾拭きをしてあげるだけで他のお手入れは特に必要ありません。
使用していく内に表面のブルームが無くなり表面にかさつきが出てきた場合は皮革用クリームなどで油分を補給する必要があります。コバの部分など、すれやすい箇所を重点的にケアすることで、色艶だけでなく耐久性を高めることにもつながります。
ブライドルレザーは厚みがあるため、潤いがなくなるとひび割れが起きやすくなります。一旦ひび割れてしまうと修復することは難しいので、表面のカサつきを感じたらケアを欠かさずに行いましょう。
ーおわりー
終わりに
ブライドルレザーを一言でいうならば、経年変化を楽しめる革。日本には「わびさび」という言葉があります。古いものの内側からにじみ出てくるような、自然そのものの作用に重点をおいた美しさが「さび」という2文字に込められています。ブライドルレザーのエイジングはその美意識に重なる部分が多いのかもしれません。