お気に入りの食器で食べる食事や、ホッと一息つける一杯は格別なもの。今回は家庭の中で使っている食器の半分以上がファイヤーキングというTomozoさん夫婦に、その魅力を語っていただいた。
好きな車の年代とリンクしたことが、ハマるきっかけに。
Tomozoさんがファイヤーキングを知ったのは、今から15年ほど前。
「妻がアメリカンなインテリアを好んで、さまざまな雑貨を集めていたんです。そのなかにジェダイカラー(翡翠色)のDハンドルマグがありました。最初は100円ショップにも売ってそうだなという印象だったのですが、調べて値段を見てみると数千円から数万円するものだとわかってビックリしましたね(笑)」
「私はもともと50年代から60年代のアメ車が好きで、長年57年モデルの「シボレー ベル・エアー」を所有していました。その車とファイヤーキングの時代がリンクすることもあり、使っていくうちに愛着も湧いて、自然と買い集めるように。一つひとつのアイテムに個体差がみられるなど、現在の製品とは違うアナログなものづくりに魅力を感じて、同世代のモノを中心に、今では100点程度を持っています」
いずれも1950年代に製造されたものと推定。
このように輸出対応用に「MADE IN U.S.A」の表記があるものは1956年以降のものだと言われている。
1941年から1986年まで、アメリカで製造されていたテーブルウエア。同年代のアメリカ映画やドラマにも多く登場するように、本国では誰もが使える身近な食器として普及していた。近年は日本においても、気取らずに使えるアンティーク食器として人気を集めている。大まかな製造年は食器の底に印字されているバックスタンプから窺い知ることができる。
震災時も耐え抜いた、驚くべきファイヤーキングの耐久性。
常日頃からファイヤーキングを愛用しているTomozoさんだが、集め始めたころは他の製品と比較検討もしたのだとか。
「やはり価格も安くないものなので、似たような模倣品も実際に買って、使いながらどちらがよいか試していたこともありました。結果的に頑丈さや丸みを帯びた質感、やわらかい口当たりに惹かれて今でもファイヤーキングを楽しんでいます。象徴的なのが、2011年の震災。棚からいくつものガラス食器が落ちてダメージを受けたのですが、ファイヤーキングはほとんど割れなかった。長い期間使い続けていく上での信頼度が増しましたね」
Tomozoさんが購入される際のこだわりについて伺ってみた。
「どんなインテリアにも合う無地のものが多くを占めています。「アメリカン・グラフィティ」など当時を描いた映画によく出てくる、ジェダイカラー、ターコイズブルーのものが特に気に入っていますね。購入の際は価格と相談ですが、すでに持っているものでも、いい出会いがあれば買うと思います。普段使いでも、来客時でも使える汎用性の高さは、いくつあっても困らないなと」
Tomozoさんのファイヤーキングコレクションを一部ご紹介
チューリップ カッテージチーズボウル
1950年代、街のスーパーマーケットなどでカッテージチーズを販売する際、採用されていたというボウル。Tomozoさんのコレクションは全6種で、おそらくすべてコンプリートできたのではとのこと。
ジェダイ レストランウエア カップ&ソーサー ストレートカップ&ソーサー ヘビーマグ
レストランなど使用頻度が高い場を想定してつくられた、厚みのある頑丈な仕様が特長のレストランウエア。通常のDハンドルマグと比較してみるとその差は歴然(写真2枚目)で、重さもかなりのもの。Tomozoさんもラフに使えるという事で重宝しているそうだ。
ターコイズブルー カップ&ソーサー シュガー&ミルクピッチャー Dハンドルマグ スプラッシュプルーフボウル
ターコイズブルーのシリーズは、50年代後半に3年程度しか製造されなかったことから希少性が高い。光が差し込むことで優しいブルーの色合いに。
プレミアム カップ&ソーサー
60年代に製造されたプレミアムシリーズは、カップとソーサーにそれぞれ花柄の装飾が施されている。全5種のうち4種類を所有。
プリムローズ スナックセット シュガー&ミルクピッチャー
60年代前半に生産されていた、サクラソウをモチーフにした花柄デザインのシリーズ。シュガーポットには持ち手が2つ付いており、独特なフォルムもキュート。
ファイヤーキング本来の使い方で、これからも愛用していきたい。
Tomozoさんのご自宅には、家具や照明など古き良きアメリカ文化を感じさせる品々がたくさん。当時の品を買い集めているほか、家具の多くは自作なのだそうだ。
「テーブルや棚などは、ホームセンターで購入した材料を使ってつくりました。ヴィンテージ家具が持つ雰囲気に惹かれるなか、実際に買おうと思うと価格的になかなか手が出ない。だったら自分でつくってしまおうと。当時のモノを参考にしながら、自分でエイジング加工を施して、楽しみながら使用しています。ファイヤーキングなど、当時のアイテムとの調和も気に入っているんです」
ご自宅には当時のアメリカを感じさせるアイテムが所々に散りばめられている。
最後に、ファイヤーキングの魅力について改めて伺った。
「ヴィンテージと言えど、高級食器ではないので、子どもでもガチャガチャ使ってOKな点はいいですよね。何げなく使われていたものが、時間を経て当時以上の価値を持っている点や、一つひとつが微妙に違う、製品としてのアバウトな一面も面白く感じています」
壁には当時「LIFE」誌に掲載されていたというファイヤーキングの広告も。
「かつて福生に「パラダイスカフェ」というお店があったのですが、そこでは1950年代~60年代当時の食器が実際に使われていました。希少なものだからとあまり大事にしすぎるのではなく、同じように当時のものを本来の使い方で、気兼ねなく使用していきたい。それが、ファイヤーキングらしい使われ方なのではないかなと思っています」
当時のものを、当時らしく。
半世紀以上前の、アナログ感漂うものづくりに心惹かれる方は多いかと思うが、それを実践しようと思うと、現代とのギャップの中でハードルが高い部分もある。
1950年代~60年代のアメリカ文化を心から愛し、暮らしに取り入れているTomozoさんだからこそのこだわりを感じた。
―おわり―
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ファイヤーキングBOOK
ぽてっとしたフォルムが印象的な翡翠色の食器といったら、真っ先に思い浮かぶのがファイヤーキング。
1960年代にアメリカで使われていたこのミルクガラスの食器は、時を経た今でも大人気で、コレクターはますます増加中しています。
『ファイヤーキングBOOK』では、初心者からマニアまで満足していただけるよう、ファイヤーキングの種類や歴史といった基本からはじまり、集め方や選び方のほか、最新のファイヤーキング事情や人気度なども紹介しています。
ファイヤーキングを扱う日本のお店はもちろん、本場アメリカのお店や、アンティークショーの情報も掲載。カタログのアイテム数は、なんと200個以上。きっとお気に入りのコレクションを見つけるヒントになります。
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終わりに
自作の家具やポスター、電話機に至るまで、ヴィンテージ感漂うアイテムに囲まれながら暮らしているTomozoさん。お話のはしばしに、人間味の感じられる「モノ」たちへの愛が感じられました。コレクションの中には、ファイヤーキングとほぼ同時期につくられていたオールドパイレックスもあり、こちらにも興味が湧きました。