第五回 謎めいたところが人気、ニョロニョロ

第五回 謎めいたところが人気、ニョロニョロ_image

文/萩原まみ
写真/柳沼康史

 ムーミンシリーズに登場するキャラクターのコレクションを個別にご紹介していく連載、今回はニョロニョロ。ゆらゆらと集団で移動するが、その生態は謎に満ちている。電気を帯びていて、うかつに触ると焦げたり感電したりするため、ちょっと危険で不気味な存在。ところがグッズを集めてみると、笑えるものがたくさん!

たねから生まれ、電気を食べる!?

 ニョロニョロって何?と問われると、返事が少々難しい。
 動物ではあるようなのだが、夏至のイブにつやつやの白いたねを蒔くと電気を帯びながら生えてくるのだ。ただし、そのたねをどうやって採取するのかは不明。
 言葉を持たず、意志があるのかないのか、仲間同士では会話をしているのかどうかもよくわからない。
それでも何らかの目的があって移動しているようで、雷や気圧計が大好き。「雷を食べる」=雷でエネルギーをチャージしているとも言われている。

 小説と絵本、コミックスでは設定がやや異なり、絵本では木のうろに住んで座ってお茶を飲んでいたり、コミックスでは旅行カバンを手にムーミンやしきに押しかけてきたりしたことも。
 目の色は原作の設定では青白かったり、黄色に変わったり、怒ると赤く光ったりする。グッズの目はかつては目は赤だったが、現在は黒に統一された。「必ず奇数で行動する」という記述もあるが、挿絵を見るとまれに偶数で描かれていることもある。

 よくわからない不気味な存在なのに、白くて細長い形状がデザイナーの心を刺激するのか、さまざまなアイテムが発売されている。ニョロニョロというのは日本語名で、最近は原語名の「ハッティフナット」という文字が入ったグッズもある。
 また、ベリー味と黒糖キャラメル味の丸くてモチモチした食感の「ニョロニョロのたね」入りドリンクを販売する「ムーミンスタンド」というショップも大人気で、日本各地に支店を増やしている。ニョロニョロ尽くしの店内はファンにはたまらない空間。ドリンクのストローにはニョロニョロのホルダーがついていて、持ち帰ることができる。

MuuseoSquareイメージ

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アラビアから発売中の「the Hattifatteners」(2006~)には絵本『それからどうなるの?』が元絵として使われている。ニョロニョロがメインなのはその1点だけだが、左の「Dark yellow(Little My)」(1991~96)にはニョロニョロが床を焦がして亀裂を入れてしまうシーンが。真ん中の「Stockmann」(2012)はフィンランドのデパートで限定販売されたレアもので、他のキャラに混じってニョロニョロも登場している。

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ムーミンベーカリー&カフェ(経営は株式会社ベネリック)のオリジナル商品のなかで、最近の私のお気に入りがニョロニョロスティック。バラ売りなので、1本でマドラーとしても、2本セットでお箸としても使うことができる。ニョロニョロトングとキャラクターパスタは同店の定番人気商品。ホーローのバットも同店のものだが、すでに販売終了。ムーミンの食器でおなじみの山加商店の箸置きはムーミンなどのキャラクターもあるが、ニョロニョロのアクロバティックなポーズがツボだ。小皿はamabroとのコラボで、なんと有田焼!

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今ではムーミンとアパレルのコラボもまったく珍しくなくなったが、これはかなり前のナイスクラップとのコラボのもの。それまではアニメっぽい絵柄のTシャツぐらいしかなかったため、大人買いするムーミンファンが続出したと聞く。原画をおしゃれにあしらったキャミソールや華奢なデザインのTシャツ、トートなどがあり、私も数種類購入。ニョロニョロのなかにスナフキンが隠れている絵柄と、1カ所だけ青を加えたモノトーンがお気に入り。

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ネットでオーダーした住所入りのゴム印と印鑑(販売終了)。キャラクターはムーミン、ミイ、スナフキンなどから選ぶことができたが、いかにもなメインキャラクターは照れくさかったので、ニョロニョロで作ってみた。印鑑のほうは絵柄もプリントではなく彫り込まれていて、本体はツゲ材だったと記憶している。おもしろ半分で実印登録してみたが、何の問題もなくあっさり受理されたため、住宅購入契約の際にもこれを使用した。

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ニョロニョロが気になるー!という方におすすめしたいのが原作小説『ムーミン谷の夏まつり』。「~~するべからず」という立て札に腹を立てたスナフキンが夏至のイブにニョロニョロのたねを蒔き、公園番に一矢むくいようとする驚きのエピソードが登場する。小泉今日子が語りを担当した『劇場版 ムーミンパペット・アニメーション~ムーミン谷の夏まつり』のDVDはアスミック/角川エンタテインメントより発売中。目にスパンコールを使ったニョロニョロ造形は必見!

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4体持っているニョロニョロの抱き枕とクッションはすべて貰い物。右の光沢がある素材で作られたDDIのノベルティはクジで当てた。右から2番目と左端は2007年ごろのクレーンゲーム景品で、ニョロニョロコレクターさんからいただいたもの。左から2番目のいちばん大きな抱き枕は体長約90センチの2Lサイズで、手触りもバツグン(株式会社セキグチ製/販売終了)。クリスマス会のくじで当たったが、持って帰るのが大変だった。

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<トップ画像アイテムについて>

トップ画像の3体は実は携帯用ハブラシ! ざっと集めただけでも、音楽に合わせてクネクネと踊るスピーカー、ソープディスペンサー、ガラスの一輪挿し、ボードゲームのコマ(左手前)、ムーミンスタンドのストローホルダー(左前から2~3列)、講談社文庫のノベルティのスタンプ、貯金箱……。お箸やトングなど、他のキャラにはないユニークなグッズもたくさんある。ニョロニョロだけを集めているコレクターの友人もいるのだが、1カ所に集めてみると特におもしろいのがニョロニョロだと思う。

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プレゼントに、コレクションに最適なオリジナルBOXセット

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ムーミン全集[新版]全9巻BOXセット

大人気キャラクター・ムーミンの原典であるムーミンの小説の翻訳が、約50年ぶりに改訂されました。今までの文章を活かしつつ、[新版]として1巻ずつていねいに、間をあけながら刊行して参りましたが、このたびその完結と、トーベ・ヤンソン最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』の出版から75周年を迎えたことを記念して、新版全9巻のBOXセットを発売致します。

童話・絵本・コミックスに登場する全キャラクターを、さまざまな登場シーンを盛り込みながら105項目で徹底紹介

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ムーミンキャラクター図鑑

ムーミンの童話9冊・絵本3冊・コミックス42冊(未邦訳分を含む)など、すべてのお話から105項目(人数だと105プラスアルファ)のキャラクターを紹介する「登場人物図鑑」です。童話に限定したキャラクター紹介はこれまでもありましたが、ジャンルを横断しての編纂ものは、本書が世界初の企画です。
おなじみの名場面を引用したり、作品を横断する出来事にも注目しつつ、それぞれの人物像に迫ります。
また、「あなたのまわりのスナフキン」「スナフキンになるには?」など、実生活にそのキャラクターがいたら…という洞察もユニークです。

<担当編集者から>
ムーミン谷の個性あふれる登場人物(105人プラスアルファ)がこの1冊に!
コミックスを拾い読みするも良し、童話の名シーンを読み込むも良し、フキダシに記された名言を噛みしめるも良し、カラー挿絵や美しい線画にうっとりするも良し、どのページからでもどうぞ!
ムーミン一家の基本から、人気者スナフキンの知られざるエピソード、忘れがたいひと言を呟く一度限りの通行人まで、さまざまなシーンから魅力あふれる登場人物たちが勢揃い。まだ原作の童話やコミックスを読んでいない人も、もう読んだ人も、たっぷり楽しめるビジュアル満載の図鑑です。

公開日:2015年10月9日

更新日:2021年12月6日

Contributor Profile

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萩原 まみ

フリーライター歴25年。イケメン俳優、北欧、ジェンダー、セクシュアリティなどが得意ジャンル。最近はムーミン愛好家としても活動しており、『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章を担当。趣味は料理。

終わりに

萩原 まみ_image

ムーミン谷随一のキモかわキャラ、ニョロニョロ。グッズとしてはかわいらしすぎず、シャレで使えるようなところが大好きです。ずらりと並べてみると、その魅力がますます引き立つことを実感しました。言葉も喋らないだけに、ニョロニョロの存在をどのように解釈するかは人それぞれ。『ニョロニョロのひみつ』(短編集『ムーミン谷の仲間たち』収録)では「はっきりと世間にせなかをむけている」「半分危険で、とてもかわった、世すて人たち」とも形容されています。そのアウトサイダー的な暮らしに惹かれて、いっしょに旅に出てしまったムーミンパパの気持ち、わかるような気がします。

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