第三回 小粒でもピリリ、存在感抜群のリトルミイ

第三回 小粒でもピリリ、存在感抜群のリトルミイ_image

文/萩原まみ
写真/柳沼康史

 ムーミンシリーズのキャラクターたちを個別にじっくりご紹介していく連載、今回はリトルミイ! 裁縫かごに入ってしまうほど小さいけれど、独立心旺盛で、言いたいことはズバッと言う痛快な性格の持ち主。おだんご頭と真っ赤なワンピースがかわいらしく、キャラクターグッズとしてはいちばん人気を誇る。

30人以上のきょうだいのなかで、最小最強!

「ミイ」と呼ばれる小さな女の子、正確には「リトルミイ」、日本語訳では「ちびのミイ」。ギリシャ語で最小を意味するμ(ミュー)が名前の由来らしい。

 ミムラ族の家長(?)は肝っ玉母さんのミムラ夫人で、少なくとも30人以上の子どもを産んでいる。長女はしっかり者でおしゃれなミムラねえさん。通常、「ミムラ」とだけ呼ぶときは長女のミムラねえさんを指すことが多い。リトルミイは20番目の娘で、下に弟や妹がいるが、なぜかミイがいちばん小柄。
『ムーミンパパの思い出』によれば、スナフキンの父のヨクサルとミムラ夫人が恋に落ちてスナフキンが誕生したとされているので、ミイとスナフキンは異父姉弟にあたる。ちなみに、ミイの父親が誰かは描かれていない。

 ミムラ族の女の子はみんな、髪の毛を“ミムラまげ”と呼ばれるタマネギ型のおだんごに結い上げている。また、リトルミイといえば赤いワンピースがトレードマークになっているが、これは平成版アニメ『楽しいムーミン一家』の設定がベースで、昭和版アニメではワンピースは黄色だった。もともと原作小説の挿絵はモノクロなので色がはっきりしないし、カラーの絵本では白黒のシマシマのワンピースなども着用している。

 小さくて見た目はかわいらしいけれど、物怖じしない前向きな性格で、マイペース。保身や後先を考えることなく、自分のやりたいとおりにやる。誰に対しても遠慮せずに自分の意見をはっきりと述べ、気にいらないときには噛みつくことも! だが、決して意地悪なわけではなく、ミイの言動から物事が動いていったり、ムーミントロールの背中を押す結果になったりすることも多い。

 独りきりでも暮らしていける行動力の持ち主だが、原作小説『ムーミンパパ海へいく』には「ムーミン一家の養女になりました」という記述があり、灯台の島への移住にも同行する。

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アラビアのマグ3点。ミイは本国フィンランドでも特に女の子に絶大な人気らしく、単独のキャラクターマグとしては最多の3回もリニューアルされている。左の緑色が「Little My Sliding」(1999~2008)。廃番になった直後はオークションで価格が高騰し、一時的に復刻されたほど。今年、黄色の「Little My」(2008~15)から、日本ではミイのイメージカラーである赤がベースの新デザインへと切り替わったばかり。

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リトルミイの顔型の巾着ポーチ。ふんわりした素材で、メイク道具やカメラなどを入れるのに最適。こういう笑えるグッズに弱くてついつい買ってしまうのだが、紐をほどいた状態ではミイに見えず、よく企画が通ったなぁと感心してしまう。撮影に使ったオーガニックトート、革財布とパスケースにしている小銭入れ、非売品の文庫カバー、トーベ・ヤンソン展限定手ぬぐいなど、実はそこそこレアなもの。もちろんすべて実用中の私物。

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2013~14年頃、通販メーカーのフェリシモが販売していた大人サイズのニットワンピース(販売終了)。リボンや背中のボタン、スカートの裾がめくれている様子など、すべて編み込みで表現されている。ブーツと黒い手袋をプラスすれば、完璧なコスプレの完成! カツラはフィンランドのテーマパーク、ムーミンワールドで見つけた子ども用のコスプレグッズ。小さめサイズなので、実用品としてではなくネタとして購入。

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日本のグッズとは趣の異なるフィンランドのリトルミイグッズ3点。左からフィンエアーの機内販売限定のぬいぐるみ。表情も服も日本のものとは大きく違う。緑色のフィギュア付きストローはムーミン専門店のクジでもらったもの。険しい表情が笑える。帽子もいただきもので、サウナで汗や水滴よけにかぶるものらしいのだが、現地のサウナで帽子をかぶっている人を見かけたことがなく、使う勇気はまだない。

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ひとりのムーミンファンとして、ミイが言ってもいない偽名言がネット上に溢れていることに心を痛めている。ミイといえば毒舌で心に刺さるようなことをズバッと言うイメージなのかもしれないが、偽名言はセンスが悪く、陳腐すぎ。フィンランドの書籍(左下。上は英語版)を翻訳した『ちびのミイの名言集』(右下/講談社)は名言というより原作の名場面集といった内容だが、自分の道は自分で決めるという本当のミイ精神に触れてほしい。

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ミイのぬいぐるみを買ったら車がついてきた!?

冗談で「我が家でいちばん高いムーミングッズ」と言われているぬいぐるみ。スズキの軽自動車MRワゴン購入者特典だったもので、オークションでも1万円ほどの高値がついていたが、MRワゴンを買って入手した。さすがにこれ目当てで車種を決めたわけではなく、好きなキャラクターがCMに起用されているということは自分好みのテイストだろうという判断だ。車に積みっぱなしで色褪せては大変なので、ドライブの都度、連れ出して名所での撮影を楽しんでいる。

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<トップ画像アイテム紹介>

ベネリックの原作フィギュアと指人形、海洋堂が原型を手がけた北陸製菓のムーミンズランチ、奇譚クラブのフィギュアマスコット、千趣会マンスリークラブのフィギュアコレクション、ペッツ、キューブリック、フィンランドの菓子メーカーFazerのおまけ、ペットボトル飲料やガムのおまけ、おきあがりこぼし、貯金箱、バスボールに入っていたミニフィギュアなどなど。白黒のワンピースは絵本の絵を元にしたもの。

トイ・フィギュアを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

プレゼントに、コレクションに最適なオリジナルBOXセット

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ムーミン全集[新版]全9巻BOXセット

大人気キャラクター・ムーミンの原典であるムーミンの小説の翻訳が、約50年ぶりに改訂されました。今までの文章を活かしつつ、[新版]として1巻ずつていねいに、間をあけながら刊行して参りましたが、このたびその完結と、トーベ・ヤンソン最初のムーミン小説『小さなトロールと大きな洪水』の出版から75周年を迎えたことを記念して、新版全9巻のBOXセットを発売致します。

ちびのミイに気づかされる、自分本来の強さとしなやかさ

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ムーミン谷の名言シリーズ2 ちびのミイのことば

1964年に翻訳出版されてから、ずっと愛され続けてきた「ムーミン」の物語。大人気のキャラクター「ムーミン」は、この全集が原典となっており、今なおその魅力は増すばかりです。その魅力のひとつは、キャラクターたちのいきいきした言葉にあります。ちびのミイの名言を、美しいイラストと共にぎゅっとまとめた1冊です。ギフトにも最適です。

公開日:2015年9月25日

更新日:2021年12月6日

Contributor Profile

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萩原 まみ

フリーライター歴25年。イケメン俳優、北欧、ジェンダー、セクシュアリティなどが得意ジャンル。最近はムーミン愛好家としても活動しており、『ムーミンマグ物語』(講談社)の文章を担当。趣味は料理。

終わりに

萩原 まみ_image

雑誌の付録などでも大人気のリトルミイ。ミイグッズだけを集めているコレクターや、原作もアニメも知らないけれどかわいいからミイのグッズを愛用しているという若い女の子もいるようです。メジャーになりすぎてミイグッズを身につけるのはちょっと気がひけてしまう、なんて言おうものなら、「ばかね、自分の好きにしなさいよ」とミイに鼻で笑われてしまいそう。個人的には『ムーミンパパ海へいく』での蟻に対するミイの衝撃の行動がツボで、何度読んでもぐるぐると考えさせられてしまいます。ミイの「やりすぎ」な感じのところ、ときどき他人とは思えません(笑)。

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