今回ひっそりと語らせてもらうのはこちらの時計、チュードル レンジャー2です。
連載初回に時計、というと僕がどれだけの時計愛好家かと想像する人もいるかと思いますが、実はそれほどでもない(笑)。好きで所有している時計はほんの数点。ただ、その中でもこのモデルは僕にとって特別なんです。
何故ならそれは「かっこいいから!」というひと言に尽きるのですが、それでは連載が終わってしまう(笑)ので、敢えて説明するなら、文字盤とフォルムのデザインでしょうか。
文字盤は、数字はローマ数字よりもアラビア数字。長針、短針、秒針のカタチもぽってりとして洗練されすぎていないところが僕好みです。色も、洋服とコーディネートするうえで重要ですね。文字盤のネイビーは洋服との組み合わせの幅が広くて合わせやすい。ちなみに、シルバー×紺色をつけるときは洋服は青や黒系統、ゴールド×紺色をつけるときはベージュやオレンジ、カーキをあわせて着るように2本を使い分けてます。
チュードル レンジャー2は、レンジャーと名前が付いているように探検家をイメージして作られたスポーツモデル。2というくらいなので、もちろんレンジャー1というモデルもありますよ。アウトドアでも使える防水機能を備えたオイスターケース(フェイスボディが牡蠣の殻のように機密性のある作り)搭載のがっちりボディ、そしてずっしりと重く頑丈なステンレスブレスレット。この組み合わせ。ちょっとやそっとでは壊れないタフさを感じますよね。実際つけてみると、本当に重い。でもそこがいい(笑)。いかにも着けてるぞと思わせる存在感がたまらないです。
フェイスは、スペースエイジと呼ばれた1970年代特有の近未来・宇宙を感じさせる曲線を強調したデザイン。チープでキッチュな印象もあります。
時計を斜めに傾けたアングルで見ると、フェイスの丸みと厚み、そしてギザギザ部分が大好きなSF映画の円盤型宇宙船を彷彿とさせます。
この時計に限らず、好きなモノの原点を辿ると、僕はフォルムフェチといいますか、昆虫採集をしていた幼少期からモノのかたちに強く惹かれるところがありまして。彼らが生きるうえで成るべくしてなった姿に美しさを感じるように、モノにも機能を追求したと感じさせるフォルムにぐっとくるんです。でもそれは、単にシンプルで洗練されていればいいというのとは違う。自然界で生き残るための無骨さや野性味も感じさせるものであって欲しい。
さらに欲をいえば、機能を追求しながら洗練されすぎない”隙”も兼ね備えて欲しいんです。そう、ちょっと矛盾してる(笑)。でもいるでしょ、カモフラ柄で木肌にうまく隠れているのに、なんでこんな異常に長くてアンバランスな触角持ってるのか?っていう昆虫。難しいんですが相対するものを同時に兼ね備える、そのバランス配分に僕はうるさいんですよね。
ちょっと長くなってしまいましたが(笑)、このチュードル レンジャー2も造りとデザイン、相対する堅牢さとチープさを兼ね備えた絶妙な1本なんです。下手するとダサくなってしまう一歩手前、ギリギリのラインを攻めるところが僕のモノ好きのツボを的確についてますね。
この時計と最初に出合ったのは、銀座の松屋でやっていたアンティークウォッチの催事場でした。展示ケースにゴールドモデルが並んでいるのを見つけて、興奮しましたね。
昔雑誌で見てずっと欲しかったモデル、しかもほぼ新品の状態でそこにあったので。ただ、当時はシルバーボディのものを探していた。「シルバーは?」と、ちょっと怪しげなネパール人バイヤーに聞いたところ、無いと。逆に「ネパール人は金が好きだから、こっちの方がいいよ」って強く勧められて、「いやそういう問題じゃないでしょ(笑)」とか突っ込みましたけど。次いつ出合えるかどうか……と悩んだ結果、ゴールドを購入しました。
シルバーはその数年後。ヴィンテージ腕時計を取り扱うウェブサイトで見つけたときは「遂に!」と思いましたね。もちろん即決。そういった経緯で、結局、金銀色違いで揃えてしまいました。でも、好きだからしょうがない(笑)。
あと、もうひとつ、フォルムとデザインに加えて、機械式の時計というところがチュードルレンジャー2のポイントですね。常に着けたりネジを巻いたりしないと時間もズレるし、勝手に止まる。3年に一度、メンテナンスに出さなきゃ具合も悪くなる。何でしょうね、人間と同じなんですよ。気にかけてあげなきゃいけなくて、でもその分、自分と連れ添っている感覚がもてる。”手間のかかる個性的なパートナー”それが僕にとってのチュードルレンジャー2です。
終わりに
編集長からチュードル レンジャー2への愛をとつとつと語られまして
最初は「高級時計のひとつでしょ〜」なんて思っていた私ですが
「言われてみれば円盤に見えるかも!」、「数字のカタチに愛嬌があるような」
話を聞くうちにだんだんとレンジャー2が可愛く見えてきました(笑)。
時計全く興味なかったのに……不思議だなぁ。