- 909 Museum
- 4F 諏訪根自子さん展:媒体掲載
- Modern Japanese Prints:An Art Reborn 1956(昭和31)年
Modern Japanese Prints:An Art Reborn 1956(昭和31)年
Oliver Statler 著(1956)
諏訪根自子さんを題材としたアート作品としては最高の、そして唯一無二と言える恩地孝四郎さんの「あるヴァイオリニストの印象 (Impression of a violinist)」(1946)
"弓が力をこめて空へすり上る
この痩身のバイオリン奏者を照らし出す人工光
何といふ黄色い光であるのか
蒼白な顔面を、衣の白絹を
この肉體は戰乱の歐洲を通つて來た。
そしていま祖國の、占領軍下のステージに立つ
あゝ、骨身を削つてゆく弦と弦との擦音。
藝術は何と悲愴なものであるか
私の心臓は黄色くなり
泪もまた黄色くなり"
恩地孝四郎さんが1946(昭和21)年10月29日、帝劇でのA・E・C(トウキョウ・アーミィ・エデュケーショナル・センター)主催の演奏會を観られての、26歳の根自子さんそしてそのステージでのお姿を捉えた鮮烈な"印象"の木版画/詩であります。
版画作品のオリジナルは現在では博物館クラスの作品であり簡単にお目に掛かる事は出来ません、その葉書大(オリジナルは40.5cm x 30cm)のレプリカ木版画がこの書籍には付属しています。
レプリカとは言いましても、これは本の序文にもある通りThe Adachi Institute Of Woodcut Prints = アダチ版画研究所 安達豊久さんによる復刻作品です。
"アダチによる最高の技術を以っての描画、その魂まで忠実に表現された"
とある様に、只の復刻版画とは一線を画します。そのオリジナルにしましてもグレーの背景の部分ひとつとりましても年代/摺られた方によっても大きく表情を変えます。アダチ版画研究所さんは江戸時代の北斎や歌麿等を、現代に伝え、その技は同義で既にアイコン化したこの『あるヴァイオリニストの印象』=諏訪根自子像をサイズは小さいながら身近に味合わせて貰うには過ぎた逸品だと云えましょう。
著者のO.スタットラー氏は終戦後の進駐軍の管理官として来日し、日本の木版画に魅せられ恩地孝四郎さん含む多くの版画家とも交流を持ち作品を蒐集、この本を上梓しました。日本版画藝術を海外へその魅力を伝えた意義ある一冊です。
残念ながら恩地孝四郎さんはこの出版の前年の'55年に逝去しており、序文にも謝辞と哀悼の辞が述べられております。
(*1956年 初版。印刷は日本にて、販売は日本国内/海外にて。カバー折り返しには価格は$7.5と記載されており、僕の所有本は入手先のアメリカでの販売品故でしょうか?日本定価¥2,200と$6.0併記の逆角の所は何故か切り取られておりました。)
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