『逆説の日本史 シリーズ / 井沢元彦』《小学館》

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1992年より、作家・井沢元彦先生が、雑誌『週刊ポスト』に連載した日本史に関する記事『逆説の日本史』をまとめた作品です。各巻ハードカバーで現在まで19巻。小学館文庫からも再版されています。
各巻では、古代から年代順に正史として扱われている中の《歴史ミステリー》を、井沢先生が一定の証拠を基に解析しており、印象が強くて、面白い本でした。
日本史で定説として扱われている事柄に、根本的な疑問を投げかけ、著者独自の見解を展開していくという、論理展開ですが、第二巻・古代怨霊編、第一章の「聖徳太子編 「徳」の諡号(しごう)と怨霊信仰のメカニズム」では、日本古代史にはあまりにも有名な聖徳太子と、天皇位にも就かなかった太子がなぜ「聖徳」という諡号(死後に贈られた尊称)を受けているのかを探っていきます。要旨は、“天皇家には、「徳」の諡号を持つ天皇がおられたが、古代の伝説的な懿徳、仁徳などの天皇を除けば、ほとんどは不幸な身罷り方(逝去)をされている。「徳」の諡号は、不幸な人生を送られた天皇や皇族を慰め、その怨霊が生者や現世に悪影響をもたらさないための仕組みではないか?”というものです。
同様の論点で、哲学者・梅原猛氏が、『隠された十字架-法隆寺論-』を著していますが、個人的にすべてが正しい、と思ってるわけではありませんが、なかなか考えさせられる論でした。
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#歴史ミステリー #古代史 #奇説異説 #井沢元彦 #逆説の日本史

隠された帝 / 井沢元彦《祥伝社》
1990年に祥伝社より発行された『隠された帝(みかど) 天智天皇殺人事件』井沢元彦/著です。A5版ハードカバー・モノクロ326頁です。 井沢元彦氏による《歴史ミステリー》の一冊。この本は必読というほど、重要な本ではないのですが、印象が強くて、面白い本でした。 “ニュースキャスター五条広臣の付き人・市原純の不慮の死の謎を追う、私立探偵・加賀美史郎。右翼団体のテロによる市原純の殺害事件に巻き込まれ、大怪我を負った五条がベッドデテクティブとして、歴史の謎解きを繰り広げる一方で、加賀美は、五条家と市原家との戦前からの奇妙な因縁と恩讐を知ることになる。” 天智天皇と言えば、古代の有名人の一人で日本書記等でも、日本史の主役として活躍している人物です。歴史書『扶桑略記』に記された「天智天皇殺人事件」とはどういうことなのか。 古代日本史の半分が覆ってしまうほどの謎を秘めた、常識外れの話ですが、日本書記でも天智天皇と大海人皇子、すなわち後の天武天皇との関係性が非常に曖昧なのは知られた話です。もし二人が兄弟でなければ、日本書記という史書は何のために編纂されたのかと、『壬申の乱』とは何だったのか、常識とは大幅にかけ離れた“歴史”が見えてくるということになります。 他に、「秋の田の かりほの庵の 苫を荒み わが衣手は 露に濡れつつ」、小倉百人一首の一枚目を飾る天智天皇の御製歌ですが、古代史の有名人である天智帝の歌としては、“たった一人で小屋の中にいる”という意味の和歌は、不思議な歌だと思います。 著者・井沢元彦氏は、天智天皇を巡る歴史の謎を、『逆説の日本史』2巻古代怨霊編でも書いています。 #歴史ミステリー #古代史 #奇説異説
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隠された十字架 -法隆寺論-《新潮文庫》
新潮文庫で1986年に発行(単行本初版は1972年)された『隠された十字架-法隆寺論-』梅原猛/著、文庫版528頁です。 哲学者・梅原猛氏(1925-2019)による日本古代史論の一冊。この「梅原史観」はそれなりの影響を残しました。山岸涼子の『日出処天子』なども、影響を受けていると言われています。 日本古代史の重要人物である、聖徳太子信仰の中心となっている奈良・斑鳩の法隆寺。 この日本最古の寺院には、聖徳太子の遺徳を讃え、太子一族の悲劇を伝える文物が多数残されている。だが果たして、法隆寺は単純に太子を崇め奉るだけの寺院モニュメントであろうか。 造像された後、ほとんど誰の目にも触れさせず厳重に保管され、秘仏となっていた東院夢殿の本尊・救世観音の意味は、また西院金堂の仏像群の銘文の矛盾、伽藍につきまとう死のイメージはどんな意味をもつのか? これら法隆寺の数ある寺宝は単純に聖徳太子を讃えるためだけのモノだろうか、それは悲劇的な最期となった聖徳太子一族を鎮魂し、怨霊たちの怒りや祟りを鎮めるための供物では無かったか?という論を展開していくのが、この論の骨子です。 個人的には、なるほどと思わされる部分もありますが、色々な歴史的事実から、この論のすべてが正しいとは言えず、歴史を解釈する仮説のひとつとして考えるべきと思っています。(法隆寺は常に朝廷の庇護を受けていたわけではない。現存五重塔が長期にわたり中心の柱だけしか無かったなど困窮していた時期もある。梅原説には矛盾している) 何にしても、法隆寺の存在が示す謎は、正史に残されなかった古代王朝興亡史の謎を秘めた歴史ミステリーとして、興味深いものがあると思います。 #歴史ミステリー #古代史 #奇説異説 #梅原猛 #聖徳太子
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柿本人麻呂 いろは歌の謎 / 篠原央憲《三笠書房知的生き方文庫》
1990年に三笠書房より発行された『柿本人麻呂 いろは歌の謎』篠原央憲/著です。文庫版249頁、ISBN4-8379-0413-0です。 「いろはにほへと ちりぬるをわか よたれそつねな らむうゐのおく やまけふこえて あさきゆめみし ゑひもせす」 いろは歌は日本の清音すべてが重複せず使われているものであり、手習い歌として古くから親しまれてきたモノです。 ところが、知る人ぞ知る話ですが、いろは歌を七字ずつに並べて、末尾を読めば「とかなくてしす」、即ち「咎無くて死す」という穏やかならざる言葉が現われます。これは一体なぜでしょうか。 “手習い歌として日本人に広く親しまれてきた「いろは歌」には、迫害された歌人の、絶望の叫びが秘められていた。この謎に着目。「いろは歌」潜んでいた第二、第三の暗号を発見するとともに、それにまつわる暗い真実を明るみに出す。” 古事記、日本書記など正史に残ってない史実は数えきれない、と言われていますが、著者篠原氏は「いろは歌」は、歌人・柿本人麻呂によって書かれた人麻呂の最期を記した暗号であり、人麻呂が編んだ原型の「万葉集」を世に残す目的があったと主張します。 他の展示でも取り上げている作家・井沢元彦氏は、この「いろは歌」の謎を基に、『猿丸幻視行』という歴史ミステリーを著しています。 #歴史ミステリー #古代史 #奇説異説 #暗号
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    fanta

    2024/02/12 - 編集済み

    面白いシリーズでしたね😁
    私も読みました、読み応えがすごくありました。
    でも古代史なあたりまでしか読んでおらず…続きも気になるのと、読んだのに忘れた部分も多々w💦

    聖徳太子のナゾ、
    新たに発見された(当時)古墳に埋葬された人物のナゾなど…思い出します。

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    • Animals 16

      Jason1208

      2024/02/12

      コメント有難うございます。
      このシリーズだったかどうか覚えてませんが、「藤ノ木古墳は法隆寺の近辺にあって、聖徳太子(厩戸皇子)はおそらく誰が埋葬されたのか知っていたはずだ」という意味のことを井沢先生が書かれていて、驚いたことがありますね。
      聖徳太子がなぜ「聖徳」なのかというと、没後に一族が族滅されたので、その悲劇と太子の憤激を慰めるための諡号だとか。

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      fanta

      2024/02/13

      そうでした、藤ノ木古墳だったかと思います。
      (藤ノ木…が浮かばなかった😅)
      “徳”の名称については、
      崇徳天皇、安徳帝など…だったですね確か。

      あと、天智天皇系が祀られ、天武系は排除されてる泉涌寺・位牌のナゾとか、
      知ったのも井沢氏の逆説シリーズじゃなかったかな~と思います。また改めて読んでみたいです😊

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