『鋼鉄のメロス』横山信義《トクマノベルズ他》

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『鋼鉄のメロス』横山信義。徳間書店トクマノベルズ刊。1997年初刷。ISBN4-19-850365-6。カバーアート/高荷義之。
著者、横山信義氏は学生時代に、仮想シミュレーション戦記『鋼鉄のレヴァイアサン』を執筆されており、その後同一の歴史観に基づく、前日譚である本伝、仮想戦記『八八艦隊物語』全5巻を執筆されています。『鋼鉄のレヴァイアサン』同様、この作品も仮想シミュレーション戦記で『八八艦隊物語』外伝と位置づけられています。実史と似ているようで、相当違う様相を辿った、並行歴史の日本の戦争を描いています。
“昭和二十年八月、満州国境はソ連軍により突破され、各都市はソ連戦車により蹂躙されつつあった。もともと海軍重視である日本国において日陰者である陸軍、満足な対戦車火器を持たない関東軍にあって、唯一抗しえた部隊である栗林忠道中将指揮下の第七戦車師団は、居留民を無事に後方に逃すため玉砕の道を選択する。軍隊とは本来自国民を守るために存在する。時を同じくして海軍の一部隊も避難民を逃すために圧倒的に優勢なソ連海軍に突撃をかける――"
あらすじの通り、史実では硫黄島守備部隊であった栗林忠道中将が、本作では関東軍の戦車部隊指揮官として、ソ連軍の満州侵攻に抵抗するという流れになります。題名の「メロス」は、満州からの避難民を守るために、「バンザイ突撃」を試みる第七戦車師団を、友セリヌンティウスを救うために《殺されるために走る》太宰治作の『走れメロス』になぞらえて表現したものです。
#仮想戦記 #SF #横山信義 #徳間書店
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『鋼鉄のレヴァイアサン』横山信義《トクマノベルズ他》
『鋼鉄のレヴァイアサン』横山信義。徳間書店トクマノベルズ刊。1992年初刷。ISBN4-19-154912-X。カバーアート/青井邦夫。 この作品も仮想シミュレーション戦記です。実史とはまったく違う様相を辿った、並行歴史の日本の戦争を描いています。(レヴァイアサンとは、レヴィアタン、リバイアサンとも書き、旧約聖書などに伝えられる海の怪物の名前である) “めくるめく閃光が、霧の向こう側に巨艦のシルエットを浮かび上がらせた。「あいつを見るのは一〇年ぶりだが…」護衛艦「はるな」の艦長は呟いた。ロシア太平洋艦隊の戦艦「ヴァツーチン」の巨影だった。全長四〇〇メートル、最大幅五〇メートル、主砲は五八口径二五インチ砲九門。『鋼鉄のレヴァイアサン』――西側の軍事評論家は、畏怖と讃嘆をこめてこう呼称した。一九九X年一月一〇日何故、日本海竹島北東海域に出現したのか? これが日米露が威信をかけて激突する、これが超絶の地獄戦の口火だったとは!?" あらすじの通り、本作では実史では起こり得なかった巨大戦艦同士の砲撃戦等が描かれます。この並行歴史では真珠湾の航空奇襲等が起こらず、太平洋戦争自体の推移は実史と変わらないものの、大艦巨砲主義がそのまま生き残り、航空母艦が存在せず、航空攻撃による軍艦撃沈が起こっていない世界です。 朝鮮半島のクーデター争乱をきっかけとして起こった、極東の戦乱でロシアは巨艦「ヴァツーチン」を中心とする艦隊を出動、米軍も史実の「大和」以上の巨大戦艦「リンカーン」「ジェファーソン」を繰り出すが、マクダニエル提督の傲慢と油断により、敗北を喫する。(具体的には、ロシアには衛星を使った「魔女(ババ・ヤーガ)の眼」と呼ばれる三次元弾着確認システムがあったが、マクダニエル艦隊には無く、日本海自艦隊の支援をも拒否したこと) 主人公の航空自衛隊筑城基地(実在の築城基地に相当)司令・山口武蔵は旗下のF-1、F-4戦闘爆撃機部隊による「ヴァツーチン」攻撃を企図するが…。 この作品は、横山信義先生が大学SF研究会の会誌に発表したもので、商業出版としては処女作的な作品です。横山先生は専業作家に転身以降、この『鋼鉄のレヴァイアサン』の前史となる『八八艦隊物語』及び外伝を執筆されています。(画像2、3、カバーアート/高荷義之) #仮想戦記 #SF #横山信義 #徳間書店
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