小学館 フラワーコミックス ささやななえ傑作集① 獄門島

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昭和53年9月20日初版第1刷発行
発行/(株)小学館

小学館より刊行された、ささやななえ(現:ささやななえこ)版の『獄門島』。
昭和51年秋に公開された角川映画第一弾、『犬神家の一族』の大ヒットにより、一般層にも拡大した横溝正史ブームは翌52年に入っても衰えをみせず、映画、そしてテレビシリーズと、原作作品の映像化は次から次へと続きました。
そんな空前のブームの中、ほぼ同時に映画・テレビ・漫画という三つのメディアによる競作となったのが横溝正史の代表作の一つ、『獄門島』です。毎日放送「横溝正史シリーズ」でのテレビドラマ版(昭和52年7月30日~8月20日 全4回)、市川崑監督の映画版(昭和52年8月27日公開 東宝)、そしてささやななえがコミカライズした漫画版(別冊少女コミック昭和52年7月号~10月号連載)です。(こうしてみると、昭和52年の夏は、まさに『獄門島』の夏、といった感じですね。笑)

古い因習が残る瀬戸内海の孤島を舞台に起こる奇怪な連続殺人を描いた『獄門島』は、『犬神家の一族』や『八つ墓村』同様、映像化にうってつけの作品であり、事実、連続ものの特性を生かした丁寧な作りのテレビドラマ版、市川崑&石坂浩二のゴールデンコンビによる映画版、ともに現在でも評価の高い作品です。
しかし、それらに劣らずの出来、いや、ある面ではそれ以上の出来、ともいえるのがこのささや版『獄門島』。
横溝正史と少女漫画、一見不釣り合いな感じですが、ホラー漫画にも秀作の多いささや氏の独特なタッチは、横溝正史の世界観と非常にマッチしていて違和感はありません。それに加えて、女流漫画家ならではの繊細な心理描写が巧みなのです。何といっても金田一耕助と犯人の対決シーンが良い。詳しくはネタバレになるので控えますが、犯人が、とある事情によって犯行の無意味さを悟った時の描写、これがもう本当にゾクゾクする場面で、原作のイメージをこれ以上ないって形でビジュアル化しています。
横溝コミカライズの名作の一つなのですが、再販されないのが残念です。

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