ベンチャーズ 国内盤ディスコグラフィ シングル編
初版 2023/04/18 05:27
改訂 2023/08/29 15:35
始めに
ポップス系の音楽にとって、片面一曲のシングル盤は原点とも言うべきもので、フォーマットとしても座りのいいものだったと思う。聴き手にとって買い易いということもあったし、演奏者側にしても、「この一曲を世に問いたい」というメッセージを凝縮して発信できる媒体だった。ベンチャーズに限らず、最初からシングルとして発表する楽曲は、オーバー・ダビングを施すなど、ていねいな音創りが行われていることも多い。一方、当初のオリジナル・アルバムは、総てのトラックが最良の出来というわけには行かず、コアなファンが買うものといった感も強かった。アルバムという単位でのコンセプトが強く意識され出したのは1960年代後半から1970年代の話である。
そもそもLPレコード(Long Playing Record = 長時間レコード)なるフォーマットが必要とされていたのはクラシック音楽の分野だった。クラシックの場合、レコードというメディアの発明以前に作曲されているので、演奏時間が1枚に収まるかといったことなど、全く考慮されていない。従って、レコードに於いても生のコンサートと同様に「切れ目なく」鑑賞したい、ということは長時間レコード開発への強い動機となる。一方、ポップス系の音楽は、メディアの変遷と共に歩んで来ており、SP時代から一曲が片面に収まるように製作する、ということが当たり前のこととして行われていた。そこには長時間レコードへの強い動機は見い出せない。1枚のアルバムに12曲程度収録する、といった形態も、ニーズがそうだったからではなく、メディアに最適化した結果と言うべきである。従って、多くのポップス系のLPが寄せ集め状態だったとしても、それは仕方のないことだったとも言える。
コンセプト・アルバムの認知を高めたのはビートルズだろう。だが、そのビートルズにしても、決してアルバム・アーティストに特価していたわけではなく、チャートを意識したシングル盤とアルバムとが二本建てになっていた。また、アナログ時代のマーケットも、シングル/LPがそれぞれ一定の領域を確保していた。これは、音楽文化ということを考えると、重要だったと思う。例えば、「この一曲」が本当に一曲のみで完結してしまったアーティスト(いわゆる一発屋)も少なからずいるわけで、それを聴くために全曲集を買うというのも非効率な話だ。そこでは「この一曲」も12分の1の扱いに過ぎず、残りの12分の11は添え物で埋められている。それに対してシングル盤の場合は、スケールは小さくとも1分の1の輝きを示してくれる。これこそ、何物にも代え難いシングル・レコードの魅力だろう。
シングル・レコードの整理方法について
国内での発売順をベースとしているが、新装再発盤はひとつのグループとし、そのグループ単位に一連番号(JSingleナンバー)を設定した。本ディスコグラフィは、その JSingle ナンバー順に取り上げている。ただし、シングルの場合両面で2曲なので、結果的に同じカップリングとなっていると思われる場合もあり、カップリング変えの再発もかなりある。そこでシングルの新装再発盤は、カップリングが全く同一&ジャケット・デザインも同じ、そこに規格番号や定価などの必要最低限の変更が加えられただけのもののみとした。従って、そういう意味での再発盤は、東芝からの初期の4枚だけということになる。
1.ロコモーション(LIB-28 / LR-1387)
2.テルスター(LIB-37 / LR-1388)
3.果てしなき慕情(LIB-51 / LR-1389)
4.行け!行け!ドンドン(LIB-54 / LR-1390)
対象レコードの選定方法について
日本国内で正規発売されたもののみを扱っており、プロモ盤,未発売盤,通販等の特殊ルートのみで販売されたものは含めていない。また、ジャケットやレーベルに演奏者として「ベンチャーズ」との表記があるもののみを対象とし JSingle ナンバーを採番した。また、この基準では対象外となるが、ベンチャーズ関連として取り扱われることの多いレコード(リーシャ名義の一部のレコードなど)は、参考として通しNo.なしで掲載した。