月報 キング 1950年代

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1950年代初頭のキングのレーベルは、邦楽の KING と洋楽の CAPITOL のみでした。その後、CAPITOL は東芝に移るのですが(56年12月)、これは米CAPITOL がEMI傘下に入ったことによります。ここだけ切り取ると EMI の成長戦略のように見えますが、実際はそうではありません。その背景として、米コロムビアとEMI(英コロムビア)の契約解消がありました。これは、LPのパイオニアである米コロムビアが、LPに対して極めて消極的で腰の重い EMI に見切りを付けたというのが実態。EMIはやむなくEMI(US)LTD.を設立し、ANGEL レーベルで英コロムビア原盤を発売することになります。更にその後、米RCA が EMI(HMV)との契約を破棄します。EMI のCAPITOL買収はこの対抗措置だったのです。
キングにとって CAPITOL に替わる切札が LONDON(英DECCA)でした。英DECCA は EMI とは対照的に LP に積極的で、録音の良さと相まって急成長していましたので、キングの判断は実に的確だったわけです。1956年はモーツァルトの生誕200年に当たり、56年4月新譜には、モーツァルトの三大オペラの全曲盤がまとめて掲載されています。計画的に準備されていなければできない芸当で、この時点でも度肝を抜かれた方が多かったと思いますが、後にステレオ録音だったことが判って(1955年)もう一度びっくり!
邦楽では、1954年1月新譜として、三橋美智也さんのデビュー曲が掲載されています。(酒の苦さよ) 邦楽のEP盤(45回転の4曲入り)は、江利チエミ,ペギー葉山、高英男さんらの看板スターですが、新たに吹込直したようです。
1957年には MERCURY レーベルの販売を開始し(これはキングにとって喜ばしいことでしたが、移行元メーカーにとっては大打撃でした。その話は何れまた…)、1958年には ABCパラマウントが加わり、第1回新譜として「ダイアナ」(ポール・アンカ)が発売されます。画像はポール・アンカが来日し、日本でのレコーディングを伝える1958年12月号です。

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