トスカニーニのベートーベン交響曲第7番

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トスカニーニの雄渾なる気魄、快刀乱麻を断つが如き名演!ピアニシモの隅々までも音の冴えた録音の驚異的成功!楽曲に盛られた鬱勃たるベートーヴェンの巨大さを描き出して剰す処がない。愛好家熱望の巨篇だ!

 トスカニーニの音楽は、明快そのものであり、一点の曖昧さも許さない。これは、古典派から後期ロマン派或いは近代の音楽を通して、共通して言えることであるが、なかでも古典派の作品となると、造型を整理し、鮮やかな仕上げをする。そこには勝手な修正はないし、原曲に忠実な姿勢がある。そして、ニューヨーク・フィルの場合、そうしたものに固さがないのである。
 常識的に言えば、有能な指揮者ならば、どのオーケストラを指揮しても、自分の意図した音楽を、あらゆる方面からつくり上げることが出来る筈である。しかし、さらに一段上の指揮者となると、その時のオーケストラの特徴を生かし、それに自分の意志を加えようとする。そこにこの指揮者に対する興味というものがあるのであって、トスカニーニ:ニューヨーク・フィルの場合も、まさにその例外ではないだけに、このレコードは、価値が有るのだ。というのも、トスカニーニ:ニューヨーク・フィルのレコードは、以外に少ししか残っていないからである。(カーネギー・ホール録音)

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