『LAST EXIT』

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セカンドアルバム「Traffic」発表後にデイヴ・メイソンが脱退、メンバー3人(スティーヴ・ウインウッド、ジム・キャパルディ、クリス・ウッド)は数曲のレコーディングを試みたがアルバム完成までには至らず、1968年の暮れにはトラフィックは活動停止状態に。アイランド・レコードは、メンバーの制作意思を伴わずにサードアルバムを企画。収録曲のストックに乏しかったので、アルバムのAサイドがシングルと未発表曲によるスタジオ録音、Bサイドがフィルモア・ウェストでのライヴ録音という変則的な構成で、69年5月に本作をリリース。そのため前2作のような完成度は望めないが、スタジオ録音曲は各メンバーの多種多様な音楽性が示されたクオリティの高い内容で、ライヴの2曲はこの時期のトラフィックの貴重なステージの記録となっている。※旧邦題「フェアウェル・トラフィック」 (Billboard 200 最高位19位)
スタジオサイド1曲目「Just For You」はクリスのフルートが入ったポップ・フォーク調の曲。1968年2月にデイヴの初ソロシングルとしてリリースされ、カップリングの「Little Woman」と共にファミリーのメンバーが録音に携わっていると思われる。
「Something's Got a Hold of My Toe」は、スティーヴ、デイヴ、プロデューサーのジミー・ミラー共作という珍しい組み合わせのインストナンバーで、ギターはデイヴが弾いていると思われる。このアルバムにしか収録されてなく、録音時期等の詳細は不明。これ以外の3曲はデイヴが脱退していた時期に録音されたもの。「Withering Tree」は元々映画「The Touchables」のサントラ用に書かれた曲で、68年9月リリースの5枚目のデイヴ作シングル「Feelin' Alright?」のB面に収められ、フルートとピアノが荒涼とした寂しげな雰囲気を演出した佳曲。ファンキーでノリのよい「Medicated Goo」はスティーヴとミラーの共作曲。録音はセカンドアルバム発表後の68年11月にオリンピック・スタジオで行われ、12月にシングルリリースされた。そのB面曲「Shanghai Noodle Factory」は東洋風の雰囲気を持つ風変わりな曲で、ジムの独創的な詩の世界が展開されている。作曲クレジットに名前のあるラリー・ファロンは、アイランド・レコードなどでプロデュースやアレンジをしていた人物。68年11月に珍しくモーガン・スタジオにて録音されている。
ライヴ音源の2曲はファーストアルバム「Mr.Fantasy」発表後に収録されたもの。トラフィックのアメリカにおけるデビューギグはフィルモア・ウェストだったので、時期的にこの音源は、68年3月のフィルモア・ライヴを記録したものと思われる。デイヴの最初の脱退時期なのでトリオによる演奏だ。「Feelin' Good」 は英国の名ソングライティング・コンビとして知られるブリカッス=ニューリーの作品で、64年発表のミュージカル「ドーランの叫び/群衆の匂い」の挿入歌として書かれた曲。「Blind Man」はボビー・ブランドの持ち歌で、トラフィックは68年2月にこの曲をBBCスタジオで録音しているが未発表。この2曲のライヴでは即興性を活かした長い演奏を展開しており、非常に聴き応えがある。スティーヴによるリードオルガンは曲の長さを感じさせないほどにスリリングで、クリスのブルージーでジャズっぽいサックスも、ライヴにおけるトラフィックのスタイルを特徴づけている。トリオによるライヴ・パフォーマンスは公式録音としてはこの2曲しか発表されていない。

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