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- 10F 天文地文学展示室_星図星座の部屋
- 星座早見星図@昭和初期の一般向け科学雑誌附録
星座早見星図@昭和初期の一般向け科学雑誌附録
梅雨もたけなわ、雨が上がってもちっともすっきりしないので、せめて図版の星空でも眺めよう。もっとも、今日日の都区内の空なんて、夜半に屋根の上に出てみたって「……サソリはどこ?」ってくらい薄ら明るくてねぼけているのだけれども、まぁそれはさておいて。
昭和初期あたりの『科學畫報』や『子供の科學』のような人気科学雑誌は、毎年夏になると必ずといってもいいほど天文特集を組んでいたようだ。そして附録としても天文モノが企画されることが少なくなかったようだが、古書市場でときどき見かけるものと滅多に見ないものとの落差がけっこう激しい気がする。今回取り上げる小さな星図帳は、収蔵するまで一度も目にしたことのなかったもののひとつ。判型はたて21cm×よこ18.5cmほどで36ページ。巻号が書かれているだけで刊記はないが、本誌と同じ発行日なのは間違いないだろう。
天の北極と南極それぞれから赤緯45°までがひとつづつ、季節によって大幅に見え方の異なるそのほかの部分(南北の赤緯45°の間)は1年間を8つに分けて、そのなかの1日の夜半南中時の星々のならびを心射図法(ノーモン投影法)
https://docs.bentley.com/LiveContent/web/ContextCapture%20Editor-v5/ja/GUID-CB5477DF-FFF6-DB0B-F3D2-AC57CA38DD39.html
で描いてある、というもの。欄外に目盛りがふられているので、観測する日にちや時刻のずれはすぐに割り出せるようになっている。ここに掲げたそのうちの2点は6月21日(4、5枚目)と8月6日(6、7枚目)の真夜中の南空、ということになる。見開きの左側は夜空の見た目と比較できるようになっていて、右側の星座図と見較べることで注目している星の並びが何座なのかわかる、という仕組み。よくある回転式の星座早見盤とどちらが使いやすいのかはわからないが、なかなか面白い発想の小冊子だとおもう。我が国で昭和初期までに刊行された星図は、白地に刷り色で点を打った陰画のものが多いようにおもえるが、だとすればこの図版は実際の見え方に即して陽画で描いてあるという点でも割と珍しいのかも。
ただ、やや厚手の塗工紙ながら、褐変して角が崩れているところからして質がそれほどよくはなさそうで、これを頻繁に出し入れして眺めていたらたちまちぼろぼろになってしまうだろうとおもわれる。だから現存するものが僅かで、それゆえに見かけないのかもしれない。この図を組み合わせて箱に仕立てて中に入ったら、マウリッツ C. エッシャーの有名な版画作品のひとつ「もうひとつの世界」
https://www.wikiart.org/en/m-c-escher/other-world
みたいでたのしそうだ。
追記:そういえば誠文堂が新光社を吸収合併して誠文堂新光社になったのは昭和10年(1935年)だった、と思い出して直すついでにこの附録の本誌の方を念のためあたってみたところ、編集後記「錦町より」に「附録「最新圖解星座」の解說並に圖表の作製は小森正氏が、星座圖の製圖は水路部の眞崎初太郎市が何れも御多忙の最中迅速に完成されたものである。」と書いてあったので、ラベルのデータをあわせて書き換えておいた。
この記事の投稿時には国会図書館デジタルコレクションの書誌データ
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10984581
を元に書いたのだが、実のところ雑誌などは途中で版元名などが変わった場合でも最終的な名称で全号統一されてしまっているため、実際の奥附と違っている場合があるのだが、大概はインターネット公開されておらず画面上でどのように書かれているのか確認できないので、うっかりするとこういうヘマをやらかすのだった。