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- 31F 建築展示室_モダニズム・復興建築の部屋
- 商店建築図案@大正後期の商店建築デザインコンペ優秀作品選集
商店建築図案@大正後期の商店建築デザインコンペ優秀作品選集
前回のショウウィンドウ図案
https://muuseo.com/lab-4-retroimage.jp/items/154
に引き続き、震災復興期の建築資料展覧会に出品された公募商店建築デザイン画の受賞作を今回は取り上げる。
1・2枚目の「洋品化粧品ト美容店」、3枚目の「喫茶店」、4枚目の「金物商(普通一般家庭ニ用フル諸金物)又ハ硝子商(シートグラ(<「シートグラス」の誤りとおもわれる。要するに板ガラス)及びガラス製器具)」の3つが金賞、5枚目の「寫眞機諸材料店」、6枚目の「化粧品店と附設理容館」、7枚目の「寫眞機業商店」、8枚目の「小さな百貨店」が銀賞を勝ち取った作品。各階平面図もそれぞれにあるのだが、画像の枚数制限があるのでほぼ割愛。どれも正面の造作はかなり凝っている。屋上庭園を設けたり、水洗便器や汚水浄化装置・温水暖房設備を導入したり、とかなり先進的な仕様で、最初に掲載されている建物などは、1階が洋品雑貨売り場と事務室、2階が化粧品・薬品売り場と休憩室、3階が男女ヘアサロンと貸し展示会場と事務室、4階が店主一家の住処と女中、店員の居室というプランが想定されていて、荷物上げ下ろし用のエレベータまである。二つ目の喫茶店は貨客用エレベータつきだ。内部は壁面にレリーフをあしらい、調光スイッチつきのブラケット灯がそれを照らし、またガス灯も併用すると書いてある。三つ目の商店は金物やガラス製品以外の小売商でもよく、また上階は貸店舗や賃貸居室を設定可能なことも想定している。
実はこの図案集、国会図書館デジタルコレクションに帝國圖書館旧蔵の初版が公開されている
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/966918
のだが、序文の後の図版ページが頭から4丁分失われている。だから最初の「洋品化粧品ト美容店」は平面図も含めまるまるなく、次の「喫茶店」も正面図・立面図が欠けているのだ。帝國圖書館の蔵書は、デジタルコレクションでインターネット公開されているものだけでも一部のページ抜けや破れ欠損・書き込みなど、利用者のモラルを疑わせる痕跡が相当数みられる。この本の欠落ページも最優秀作品のところが消えているわけで、おそらくはさもしい性根の手合いがこっそり破り取って持ち去ってしまったものとおもわれる。いつの世にもほかの人々の迷惑を顧みない困り者は少なからずいた、ということを端的に示しているのだろう。
なおこれらの図版は拡大してみても網点がなく、写真をコロタイプで縮刷したものとおもわれる。だから細かいところまでかなりよく見えるのだけれども、それでも手書きの解説文や註釈などの文字が小さくてなかなか読み取りづらいページもある。余白をかなり大きくとってあってかっこいいレイアウトではあるが、それにしてももうちょい読みやすくできなかったのかな、というのが正直なところww
それにしても、こんなスタイリッシュで趣味のよい建物群が整然と建ち並ぶ通りを散歩したら、どんなにか心たのしいことだろう。今のピカピカした、面白味も統一感もないガラス張りのハコをごちゃごちゃと並べたてた都市風景は、機能的にははるかに進歩しているのだろうけれどもどうも好きになれない。