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Wat Nu “Skandal / Stereo Von Rondo”
これも、殆どのジャケ買いですね。偶々、独逸語表記だったので購入したのだと思います。それで、ちょっと調べてみましたんですが、彼等の経歴については全く不明でした。ただ、分かったのはメンバー編成だけで、Jürgen Walter (Vo), Mickey Jung (G), Kurt Kieven (B), Jürgen Schwan (Drs)が正式メンバーで、ゲストにAndreas Brüning (Sax)も参加しているようです(すまん!)。後、数年前のある店舗の紹介ポップでは、「German New Waveらしい、やる気のない屈折感とわざとらしい展開の曲想」と評されていましたが、「Rondoでは超難関」の入手し難くさとも。まぁ、そうかどうかは分かりませんが、各曲を紹介していきましょう。 ★A “Skandal” (4:20)は、音も分厚く、タンクのようなリズム隊とザクザク刻むGにVoと言う構成ですが、途中から、Gのファンクなカッティングに導かれて、アップテンポのファンクのようになりますが、また元に戻ります。バックの男性聖歌隊らしきコーラスの挿入も良ろし。 ★B “Stereo Von Rondo” (3:37)は、軽めのGのカッティングのイントロに続いて、スカのような軽快なリズムから成る曲で、Saxも良ろし。ただサビではポストパンク調に変わります。エレピの挿入されたり、サビがもっと変化したり、後半はまたスカ風に戻ります。 中々、録音にも機材やお金を掛けたように思えます。それ位、音は良いです。また、単にパンクとかスカとか言う前に、流れているのは独逸人特有の斜め上を行くユーモア(おちょくり)だとも思えます。総じて、中々良いシングルだと思いました。ただ「やる気の無さとかわざとらしい曲展開」は余り感じませんでした。なので、NDWファンの方は、見つけたら、即買いです!そして、貴方の感じ方をまた教えてください! A “Skandal” (4:20) https://youtu.be/cqVr3vkQ9rY?si=UGbA9TGMGaQuwUuz #WatNu #Skandal #StereoVonRondo #Rondo #1980年 #7-inchSingle #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Punk #NewWave #Sax #JürgenWalter #MickeyJung #KurtKieven #JürgenSchwan #AndreasBrüning
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Punk Rondo 不明。Dr K2
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Sam̄ler “Be Yourself / MG”
またまた、NDW系バンドSam̄lerを取り上げます。このバンドに関しても、私はすっかり忘れていました。それでちょっと調べてみました。 メンバーは、Matt Craven (Vo), GostoことAndreas Babka von Gostomski (G), Stefan Müller (B), Patrick Zinke (Drs)の4人組で、独のカッセル出身で、どちらかと言うとパンク寄りの音を出していたようです。Sam̄lerとしては、このシングルが唯一の作品で、その後、Mattが脱退し、Roy Steinbrecherが加入して、バンド名もDie Heldenと改名しています。ただDie Heldenも2枚のシングルを出して、解散しているようです(こちらは未聴)。短命なバンドでしたが、単なるパンクバンドとは言い難いので、未発表音源とかライブ音源とか(があれば)を集めて、セルフ・コンピとか出して欲しいです。この位のことしか分かりませんでした(すまん!)。それでは、各曲をご紹介したいと思います。 ★A “Be Yourself”は、ミディアムテンポのドラムとベースで始まり、Voも挿入されますが、間奏で入ってくるGにはディレイが掛けられ、かつフリーキーに演奏されており、少しNo Waveの要素も入っていますが、最後の一小節だけまともに弾いています。 ★B “M.G.”は、性急なビートに乗った典型的パンク・サウンドで、中々イカしていますが、あっという間に終わってしまいます。 正直、この時代のバンドで、ちょっと視点の広かったバンドは、A面のような不協和音から成るトーンのGを入れることが多かった(何ならBも崩す)ので、それ程の面白味は感じませんでしたが、敢えてそんな曲をA面に入れるところに、漢気を感じますね。出来れば、ライブ盤とかも作って欲しいです! A “Be Yourself” https://youtu.be/CQCodbJUGPc?si=WSFb8U8F4Em4WlzX B “M.G.” https://youtu.be/QBfJr7tIAUk?si=aZErvpUyM3KqLZXd #Samler #BeYourself #M.G. #IronCurtainRecords #1981年 #7-inchSingle #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Punk #NoWave #MattCraven #Gosto #AndreasBabkaVonGostomski #StefanMüller #PatrickZinke
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Punk Iron Curtain Records 不明。Dr K2
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Blässe “Lieben Sie Saxofon”
お次は、やはりNDWのど真ん中で、独自のフェイク・ジャズをやっていたBlässe (プレッセ)のファースト・シングル”Lieben Sie Saxofon”をご紹介しします。このバンドは、NDWのMalcom McLarenことXao Seffcheque (クサオ・ゼフチェック; Drs, Synth)を中心に後に初期Die Kruppsに参加するEva-Maria Gößling (エファ-マリア・ゲスリンク; Sax)とBrigitte Bühler (ブリギッテ・ビューラー; G, B)がコアメンバーですが、本当の創設者はオリジナル・メンバーとしては、当時13歳だったAlexander Von Borsig (B, Synth)とMichael Richard Hirsch (Synth)で、1979年にベルリンで結成され、1979年9月30日にベルリン工科大学で開催された反ファシスト・フェスでデビューしています。そのロゴ頃の目的は音とリズムと言語についての実験をすることでした。その後、1979年12月からは、ベルリンのクラブBlue Moonで、元Mania D.のEva-Maria Gößlingが加入し、1980年1月には、ベルリンのクラブSO36では、米国NYCのArleen Schlossとも共演しています。この頃から、Gößlingは、NYCでのライブの後から、当時18歳のSUMOことJean-Michel Basquiatの「催眠音楽」のアイデアをベルリンに持ち込みました。1980年4月に独とオーストリアを100%シンセティク・ツアーを敢行しましたが、評価は二極化しています。同年にVon BorsigがEinstürzenden Neubautenに加入した為、Gößlingは、Düsseldorfに戻り、SeffchequeとBühlerと一緒になって、コアメンバーとなり、Blässeを続けていきます。それで、1980年12月に、本作でもあるシングルを出します。Düsseldorfのカセット・レーベルKlar!80/81は、1981年4月に、彼等のライブ・カセット”Blässe Live (Buhuu 8)”を出しています。その後、No Düsseldorfのサンプラー3枚組LP”MASSA”(以前紹介済み)では、Bernward Malaka (B)も加わっています。また、彼等はライブ中に、Super 8のフィルム “S バーン ベルリン 1980”を上映しながら、ライブで演奏しました。また、Die Kruppsのアルバム”Stahlwerksinfonie”のエンジニアであったRené Tinnerは、Joachim Wittのサントラ”Inflation in Paradise”に、サックス奏者Gößlingを推薦し、1982年に彼女がロンドンに移った為、Blässeは解散し、Brigitte Bühlerはビデオ”Money Money”の制作に携わっています。 以上がBlässeの略歴となりますが、本作品は、言わば第二期Blässeのシングルと考えて良いでしょう。それでは各曲をご紹介ししていきます。 ◼️Sonnenseite (明部) A “Lieben Sie Saxofon”は、マーチング・ドラムから始まり、そこに線の細いGから、如何にもNo Waveっぽい反復するBライン、そしてフリーなSaxが入って多層化していき、ドラムはシンバル中心になる曲で、おおよそノリと言うものが存在しません。 ◼️Schattenseite (暗部) B “Venus In Der Oper”では、ハウリング音が暫く続き、無音に。そしてDrsの一体の反復が続く中、GとBも一定の反復を繰り返し、その途中に短い声がコラージュのように貼り付けられていきます。後半になると、段々とテンポアップしていき、そのまま終わります。 GößlingがNYCから持ち帰った「催眠音楽」が見事に演奏されています。A面ではBラインだけですが、B面は全ての楽器が執拗に反復をしています。そう言う意味で、「催眠音楽」なんでしような。私は、初めに3枚組コンピLP”MASSA”の方を先に聴いたので、随分印象が違うなあと思いました。しかし、本作品の音楽が第二期Blässeで演りたかった音楽だと思います。これでは、Klar!80/81のカセットも聴きたくなりますね! https://youtu.be/5hiYZg-n9xk?si=siaMJXT8ZIoK5-dc #Blässe #LiebenSieSaxofon #EMIL #1981年 #FirstSingle #7-inchSingle #FakeJazz #NoWave #Sonnenseite #Schattenseite #VenusInDerOper #XaoSeffcheque #Eva-MariaGößling #BrigitteBühler #Düsseldorf-Era #AlexanderVonBorsig #MichaelRichardHirsch #BernwardMalaka #ArleenSchloss #Berlin-Era
Fake Jazz / Neue Deutsche Welle / German New Wave EMIL 不明。Dr K2
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Andy Giorbino “Kredit”
またまた始まりますよ、7インチ・シリーズ。今回の7インチ・シリーズでは、NDWだけに限りませんので、悪しからず。それで、先ず、初めは、NDWの真っ只中にいたAndy GiorbinoのファーストEP”Kredit”です。Giorbinoのバイオグラフィーについては、既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。本作品は、7インチですが、4曲収録されており、演奏もヴォーカルも全てGiorbinoが1人でやっています。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Der Hans Der Hat's” (2:30)は、ドンカマチックなドラムマシンに、伸長したGとリズミックなBと半分ふざけたようなVoから成る曲で、吃ったようなVoと調子っぱずれの笛が特徴的です。 ★A2 “Made In Japan” (2:06)は、弱々しいリズムマシンをバックに、プリぺアードGを弾きまくっています。勿論Bもそ入っていますし、シンセも聴取できます。 ★B1“Monkey, Monkey” (3:00)は、性急なドラムマシンに、緊張感溢れるシンセと歪んだGから成る曲ですが、途中からディレイをきかしたVoやBラインが突然出てきますが、最後はぐちゃぐちゃですね。 ★B2 “Auf Wiedersehen” (1:06)は、何か変拍子に聴こえる不思議な小曲で、それに合わせて、シンセやVoが乗っています。 やっぱりAndy Giorbinoの奇想天外な音楽がこの作品からも伺い知れます。真面目なのか?ふざけているのか?の境目を行ったり来たりするような曲調/アレンジで、只者ではない感がプンプンします。本作品とファースト・アルバム”Lied An Die Freude”を聴き比べてみても、同じ路線ですね。しかしながら、ATA TAKとはまた異なるようにも思えますが、皆さんは聴いてみてどうですか? A1 “Der Hans Der Hat's” (2:30) https://youtu.be/x4-v9B_9M38?si=DLR7f6ON7aPrwAjv #AndyGiorbino #Kredit #ZickZack #1980年 #7-inchEP #FirstSingle #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #AllInstruments #Vocal #DerHansDerHats #MadeInJapan #MonkeyMonkey #AufWiedersehen
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Zick Zack 不明。Dr K2
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He Said “Take Care”
He Saidと言うバンド(?)/ユニット(?)を知っている方はどの位いるだろうか?実は、私も、頭の隅に、そのことを置いていて、売りに出されているのを見て、何とか急いで購入したと思います。He Saidと言うのは、英国WireのベーシストGraham Lewisのソロの時に使う名義なのです。1980年代と言えば、Wireが解散して、Graham LewisとBruce C. GirbertがDomeを結成して、その前衛性に皆が驚かされていた時期でもあります。その一方で、Lewisはソロで、He Saidとして、ファースト・シングル”Only One I”を1985年10月にMute Recordsよりリリースしましたが、そのデビュー・アルバム”Hail”は、それから12ヶ月後にやっとリリースされます。”Hail”のサウンドは、Wireよりもずっとエレクトロニックで、その時期のポストパンクや実験音楽系ロックの流れに沿っていました。その後、1986年4月にシングル”Pump”を、同年9月にシングル”Pale Feet”を出しています。そうして1989年2月に、本作品でもあるセカンド・アルバム”Take Care”をリリースし、1988年7月に”Could You?”がシングルカットされていますが、このシングルが、今のところ、He Saidの最後の作品となっています。 以上が、He Saidの略歴となります。本作品では、シンセを多用したちょっと実験的なポップ・ミュージックが収録されています。本作品には、Graham Lewis (Vo, Noises)の他に、John Fryer (Drs, Noise [A1, A3-B3, B5], Noises [B4]), Keith Le Blanc (Drs, Kbd [A2]), Ruby James (Back-Vo [B2]), Lorenza Johnson (Back-Vo [B2]), Shirley Lewis (Back-Vo [B2])が、ゲストで参加しています。特に、John Fryerは、Lewisと共にプロデュースまで行っています。それで、内容としては、A面3曲/B面5曲となっています。と言う訳で、本作品の各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Watch-Take-Care” (8:30)は、太いSynth-BとシンプルなDrsに合わせて、Lewisの叙情的なVoが乗る曲で、Domeで使っているようなSE音や独自のGノイズ音が切り込んできます。 ★A2 “A.B.C. Dicks Love” (5:25)も、比較的明るい曲調で、部分的にはラップも混ざっている曲です。リズムマシンやヴァイオリン風シンセ?やシンセPercも使っているようです。 ★A3 “Could You?” (5:45)は、ドラマチックに始まり、Lewisのピアノと弾き語りへと続き、やがてDrsとBと分厚いストリング・シンセも乗ってくる曲で、ピアノが良い味を出しています。最後の反復は良いですねー。 ★B1 “Tongue Ties” (6:09)は、水音とキックを同期させたリズムで始まり、Synth-Bと簡素な上物シンセに合わせて、Lewis独特の語るようなVoからサビでの歌い上げるVoも聴取出来る曲で、間奏のシンセは甘い香りがします。 ★B2 “Not A Soul” (5:20)では、突撃するようなDrsから始まり、四つ打ちキックで、語り口Voと女性コーラスのとアンサンブルに変わるのもバッチリです。間奏のシンセやコーラスワークも効果的ですが、ちょっと英国ポップス調な気も。 ★B3 “Halfway House” (5:25)は、ぎごちない硬いリズムに、柔らかで太いSynth-Bと独特のカッティングするGと優雅なシンセから成るインスト曲で、想像力を掻き立てます。 ★B4 “Get Out Of That Rain” (3:13)では、空間を活かしたイントロで始まり、やがてシンセによる交響楽のような分厚い音も出てきますが、また元に戻ります。そして、大円団へ。ドラムレスの曲です。 ★B5 “Hole In The Sky” (2:28)は、激しいリズム隊に、特異なカッティングのGとLewisらしからぬ叫び声のようなVoを披露している曲で、最後のノイズ的要素も弾けています。 しかしながら、Graham Lewisの曲って、シンプルでツボを押さえているのですが、どうしようもなく「Wire節」と言う感じの細かい部分が仄かに残っているんですよね。勿論、Vo以外で。アレンジとか音色の癖みたいなものなんですが、それが琴線に触れる方もいるでしょうし、気に入らない方もいるとは思いますが、ここでは、特にB面で、インスト曲2曲とB5での叫び声なんかは、Lewisの新境地で、一聴に値すると思われますので、一回は聴いてみて下さい! https://youtu.be/Mp7Cn9_9Ts4?si=iJ5itEr6cubtTx8d #HeSaid #TakeCare #MuteRecords #GrahamLewis #Wire #SoloProject #SecondSoloAlbum #UK-Underground #1980年代 #Experimental #Synth-Pop #Electro #Vocal&Noise #Guests #JohnFryer #KeithLeBlanc #RubyJames #LorenzaJohnson #ShirleyLewis
Experimental / Synth Pop Mute Records 不明。Dr K2
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John Duncan + Stefano Pilia “Try Again”
このブツも当時、John Duncanの名前を見かけて購入したアイテムだと思いますが、すっかりどんな音楽だったのか?を忘れてしまったので、今回、再度、聴き直しました。John Duncanについては、既に何回かご紹介したいますので、彼の最近の活動と、今回の相方である伊ミュージシャンStefano Piliaについて、ご紹介したいと思います。Duncanは元々は米国カンサス州Wichita生まれの米国人ですが、1970年代から、LAでLAFMSと関わったり、西海岸で、パフォーマンスやコンセプチュアル・アート・シーンで活動を開始しています。しばしば、彼のパフォーマンスは、権力や権威或いは支配に対するものが多く、例えば、有名なのは「死姦パフォーマンス」で物議を醸し出しています。その後、日本に活動の拠点を移し、海賊ラジオやAQMレーベルを運営、その頃は、短波ラジオの音とビデオとを組み合わせたパフォーマンスをやっています。次に、彼は蘭Amsterdamへ、更に伊Udine、現在は伊Bolognaに居を構えて活動しています。近年では、歌詞を作り、歌を歌うと言った、これまでのコンセプチュアルな活動/作品の真反対の作風になっています。一方、今回のコラボ相手Stefano Piliaですが、彼は、1978年生まれの生粋の伊人で、1995年からBolognaに住んでおり、最初は、パンクやロック・シーンで、ギターやウッドベースを担当していました。即興と電子音響作曲との融合したような音楽をやっていた3/4HadBeenEliminatedを結成し、ソロでも活動していましたが、2008年からはMassimo Volumeと、2010年からはZaireと、その他にもDavid GrubbsとAndrea Belfiから成るBGPトリオやMike WattとA. Belfiとから成るil Sogno del Marinaioともコラボで実験ロック的な活動をやってきており、2012年からは、Rokia Traorèでもギターを弾いています。近年では、ギターやループ、フィールド録音或いは他のアコースティックな音源を使った緻密なドローン作品を作るようになっており、サントラの作製や、演劇や映画、朗読、ダンス或いはヴィデオ・アートのアーティスト達ともコラボをやっており、CDなども沢山出しています。また、David TibetやZ’ev, Rhys Chatamなどなど多くのミュージシャンともコラボをしています。直近ではサウンド・インスタレーションを演っているようですが、Wire誌などでは好評を得ています。 今回は、そんな2人のコラボ・アルバム”Try Again”をご紹介したいと思います。先ず、クレジットを見ると、John Duncan (Lyric, Vo, Mix)とStefano Pilia (Synth, Processed Recording, Mix)となっていることから、やはり、「歌物」と言うことが容易に想像できますね。それでは、各曲を紹介していきます。 A1 “Try Again”から始まる本作品は、多分、バックの茫漠たる霞みのような音像はPiliaによるモノと思いますが、そこに乗っかるハスキーな声で呟くように歌うのはDuncanでしょう。またヴォーカルを重ねて録音したり、念仏のように”Try Again”をひたすら繰り返すのも、何らかの効果を狙っているのでしょう。しかしながら、バックの音には、明確なメロディな無いのですが、何とも言えない哀愁(?)を感じますね。そして、唐突に簡素な打撃音のみで終わります。 A2 “The Reprisal”では、不明瞭なPC音やキックやパルス音と逆回転ヴォイス、更にはオルガンなどが絡み合って、活き活きした曲となっています。また、Duncanのヴォーカルも重ねて多重録音されており、これが摩訶不思議な効果を醸し出しています。 B1 “The Sellout”は、テープの低速回転と逆回転とから始まり、どんどん空間が捻れていきます。そして、ハスキーなヴォーカルが今度はメロディアスに歌い上げています。 B2 “Obsolete + Comeback”は、シンセ音の多重録音で始まり、その途中途中にエフェクト処理されたヴォーカルが挿入されてきますが、段々とスペーシーになったと思ったら、またもや朗読のようなヴォーカルとバックの煙のような音塊がくんず外れず絡み合っていきます。 B3 “Fare Forward”も、A1のようにまたまた茫漠たるバックの音とそれに寄り添うようなコーラス、そうして、語りのように一つ一つの単語をハッキリと発音するヴォーカルが入ってきます。もうここまで来ると泣けてきますね。本当に悲しい曲です。最後はコーラスでしんみりと終わります。 ここに来て、何故、John Duncanが歌物を始めたのかは、寡聞にして知りませんが、何か考えがあるのでしょう。元々、コンセプトをしっかりと立てて、パフォーマンスをするタイプのアーティストなので。しかも、歌詞はゆっくりで、発音もハッキリしています。これにも何か意図があるように思います。そんな謎解きを含めた面白い作品だと思いますので、近年のJohn Duncanのことを知りたいのであれば、是非聴いて、謎を解いて下さい‼️ *アルバム各曲のYouTubeのURLを貼っておきます。 A1 “Try Again” https://youtu.be/q7KIgkPGy9A?si=kaV0q_UkJG3DvwTW A2 “The Reprisal” https://youtu.be/0v2fCSb8Vlg?si=FSXgD6ujgt4d23CU B1 “The Sellout” https://youtu.be/l3IV-mcIIL8?si=PBvFBHBcMM8Z27MJ B2 “Obsolete+Comeback” https://youtu.be/5miJNdl4g5w?si=5yOBXQ_CWTPBkO3p B3 “Fare Forward” https://youtu.be/MSAS48YufOE?si=-SeZyCzt29TM-piE [BandcampのURLを貼っておきます] https://mapledeathrecords.bandcamp.com/album/try-again #JohnDuncan #StefanoPilia #TryAgain #MapleDeathRecords #US&Italy #Bologna #CollaborationAlbum #Noise #歌物 #Experimental #ConceptualArtist #Vocal #Lyrics #RockScene #SoundInstallation #Synthesizers #SoundProcessing #DarkAtmosphere
Experimental / Vocal / Noise Maple Death Records 不明。Dr K2
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Deutsch Amerikanische Freundschaft “D.A.F.”
独逸のDeutsch Amerikanische Freundschaft (以下、DAFと表記)が自らのバンド名の略称を冠したセルフ・コンピがこのアルバム“D.A.F.”です。まあ所謂、ベスト盤的なものと考えて貰えれば良いでしょう。DAFの作品については、これまで何度も書いていますので、バイオグラフィーはそちらを参考にして下さい。まあこれを購入したのは、名曲”Der Mussolini”と ”Kebabträume”が共に収められていたからだと思います。特にGabriel "Gabi" Delgado-López (Vo)とRobert Görl (Drs, Perc, Electronics)になったばかりの彼等の人力テクノ(?)な演奏は勢いがあって、凄いですね。マシン・ビートに生ドラムと、セクシーと言うよりエロいVo、この組み合わせはコペルニクス的転換です。或いはピンチがチャンス的変化は凄いです。このシーケンスの組み方に彼等独特のフレージングがあり、多分それが2人にとって最もやり易かったのでは?と想像します。どの曲もDAFが好きな方なら一度は聴いたことがある名曲ばかりですので、ベスト盤と考えて良いでしょう。なので、初心者のリスナーさんにもお勧めです。 A1 “Verschwende Deine Jugend” (3:47) A2 “Der Mussolini (Remix: Conny Plank)” (3:57) A3 “Mein Herz Macht Bum /My Heart Goes Boom” (4:25) A4 “El Que” (3:28) A5 “Ich Und Die Wirklichkeit /Me And Reality” (3:02) A6 “Die Götter Sind Weiss” (2:56) Hi o A7 “Der Räuber Und Der Prinz /The Robber And The Prince” (3:25) B1 “Liebe Auf Den Erste Blick ('88 Remix: Josef Watt)” (6:01) B2 “Im Dschungel Der Liebe” (4:08) B3 “Prinzessin” (4:17) B4 “Greif Nach Den Sternen” (3:41) B5 “Kebabträume” (4:03) B6 “Die Lippe” (3:14) B7 “Als Wär's Das Letzte Mal /As If It Were The Last” (3:26) A3 “Mein Herz Macht Bum /My Heart Goes Boom” (4:25) https://youtu.be/s40hbsO2otM?si=2aCf2ht1VLNwCTkE [Best of DAF: 内容は異なります] https://youtube.com/playlist?list=PL9E50A5D34339530A&si=I9aoDXD30wn2eh7_ #DeutschAmerikanischeFreundschaft #D.A.F. #VirginRecords #ベスト盤 #SelfCompilation #GabrielGabiDelgado-López #RoberGörl #Sequencer #Drums #Vocal
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Electro-Dance Music Virgin Records 不明。Dr K2
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V.A. “Conspiracion”
久し振りにスペイン物を。と言う訳で、スペインのJuan Teruel Garcíaが運営していたDiscos Proceso Uvegrafから、第一弾としてリリースされたスパニッシュ・アンダーグラウンドのコンピです。知っているのはEspentor Geometrico (EG)位ですね。因みにこのレーベルとその前にGarciaがやっていたCassettes Proceso Uvegrafと合わせても1985年ー1986年の間の活動で、その他に2017年に1枚、2019年に1年に1枚LPを出しているだけの短命レーベルです。それでは収録グループと曲を紹介していこうと思います。 A1 Uvegraf “Refractiva Ocular. Expo N.° 1” レーベルオーナーのソロユニット。バックの音は初期EG直系のインダストリアルにTGのPeter Christopherson紛いのテープの挿入あり。 A2 EG “Comisario De La Luz V.”知らずと知れたスペインの機械偏執狂Esplendor Geometrico。はっきりしない不明瞭なリズムを刻むリズムボックスから成る簡素でミニマルなインダストリアル。流石、元祖EG節❗️ A3 Recursos Ajenos “Como Quieras” Merzのアーティストのソロ名義。リズムボックスと緩やかなシンセの音色が堪らん❗️ A4 Interaccion “Claroscuro” Jose Luis Iruretagoyena (Synth, Drum-machine)とCarmen L. Fernandez de Velasco (Vo, Synth, G)のデュオで、1980年代中盤までMadridでアクティブであったとのこと。BossのDr-55にメロディアスなシンセが絡む。 A5 Juan Teruel García “Claustral (C.S.A.T.)” レーベルオーナーの本名名義。こちらはシンセによるアンビエントで、ビートレス。こう言うこともできるのね。 B面に行きます。 B1 Ejumboeke “Heliophore” Hector Hernandezのゾロユニット。今ならEmeraldsにも匹敵するようなデジタル・シンセによる即興アンビエント。時にテープ音や展開が入るアブストラクトな音楽。 B2 Luis Mesa “Hot Wheels” Merzのアーティスト(?)。これまたシンセによる、余り展開の無いアブストラクトな音響音楽。クラウトロックっぽいが、それ程冷徹では無い。 B3 La Otra Cara De Un Jardín “El Canto De Las Silfides” Francisco Felipeのソロユニット。シンセを使った即興演奏のようなウニョウニョした曲を披露。 B4 Depósito Dental “Noche Cansada” Pedro Garhel (Vo,Kbd)とRosa Galindo (Vo)のデュオ。スペインのSuicide!? ミニマルな電子音に呻くようなヴォーカルが乗っている。 B5 II Epoca Del Hombre “Estado Natural De Comportamiento” Christina Barrera, Jesús Chacón, Miguel Box, Roberto Loyaの4人組。Christinaの冷たく狂ったようなスポークン・ワードと男性の怒号に導かれて、生ドラムと思われるリズムが入ってくる。バックには他に爪弾かれるギターや極少数な電子音も! まあ、このように一時的にユニット名や本名名義も多くで、まあ、サンプル盤としては興味深いのですが、何かEGの真似っこみたいな曲が多いなあと言う印象です。ドメスティックにやるのであれば、もっと地方からも音を集めて、色々なスタイルのバンドもコンピに入れて欲しかったので、少々残念なところですね。でもこの時期のスペイン(或いはマドリッド)の地下音楽を知るには良いと思われますので、そこら辺を知りたい方は是非入手してみて下さい。 Interaccion “Claroscuro” https://youtu.be/0v2EUa3kDxw #VariousArtists #Conspiracion #DiscosProcesoUvegraf #SpanishUndergrounds #Compilation #Uvegraf #EsplendorGeometorico #RecursosAjenos #Interaccion #JuanTeruelGarcía #Ejumboeke #LuisMesa #LaOtraCaraDeUnJardín #DepósitoDental #IIEpocaelHombre
Industrial/ dark wave / Experimental Discos Proceso Uvegraf 不明。Dr K2
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Ryoko Ono, Hiroki Ono & Yuko Oshima (学生実験室) “碧山 (Hekizan)”
これは、先日、ライブで知り合った小野浩輝さんとの交換で入手したレコードでありますが、この「学生実験室」と言う名称はちょっと前からSNS上で聞いていたので興味を持っていたのです。この「学生実験室」と言う名称で、Discogsでは違うものが出てきますので、類似品に注意です。それでメンバーは小埜涼子 (Sax), 小野浩輝 (Electronics), 大島祐子 (Drs)から成ります。詳細な情報は殆どありませんが、1998年結成の名古屋のパンドと言うこと、他にこのバンド名でのリリースは無いと言うことです。大島さんのサイトに少しだけでありました。結成当初は、3人でスタジオに入ったりして、ライブもやっていたとのことですが、2000年以降、大島さんが渡仏してからはライブは他のアーティストを誘って時々やっていたようです。そして、2006年に活動ストップ宣言をしています。しかしながら、2014年に、当初のメンバーで学生実験室として録音物を作製しようと言うことになって、2016年にアルバムを1枚出しています。それがこの「碧山」です。バンドは日本ツアーや欧州ツアーを2017-2018年に計画していたみたいですが、本当にやっているのかどうかは確認できませんでした。なお、メンバーの小埜さんは、ドラマーの吉田達也さんのデュオSaxRuinsやインキヤパ/非常階段のT.美川さんのとのデュオなどでも有名な日本屈指のサクソニストでもあります。 それで内容ですが、SaxとDrsだけなら、まあ、よくある即興演奏になるところを、小野さんのelectronicsが加わることで、単なる即興演奏以上のメタ・インプロの如く、異化作用を及ぼしています。また恐らくはミックスやマスタリングを担当したいる小埜さんのポスト・プロダクトしたと思われる部分もあることから、単に即興演奏の実録ではないなぁとも思います。今や、録音の編集も可能になってはいるので、今までの「即興」以上の領域にじわじわと広がって行っている証だと思います。ドレミの音階のあるのにフリーキーに吹かれるSaxとビートを刻まない自由なDrs、それに加えて、色々な音を生成していく電子音、どれもが違う方向を向いている方向は違うのに、出来た音楽に一体感のあるようになっているところは流石だと思います。ここら辺のアイデアは東西の間に位置する名古屋独特の文化と言うか折衷性と言うか、自由度の高い発想だと感じます。いま、名古屋が熱い❗️そう確信させる1枚だと思います。大変面白い音楽なので、是非是非、聴いてみて下さい。新しい「即興演奏」を発見できるでしよう!因みにジャケのアートワークは小埜さんによるものです。またCDもあるので、レコードプレーヤーがなくても、CD、プレーヤーでも聴くことができますよ。 “AAN” https://youtu.be/VAWnFUS-xkg #RyokoOno #HirokiOno #YukoOshima #GakuseiJikkenShitsu #学生実験室 #碧山 #Hekizan #BamBalamRecords #Sax #Drums #Electronics #Improvisation #PostProduction #Nagoya
Experimental music / Improvisation Bam Balam Records 不明。Dr K2
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V.A. “Tribute To MSBR”
2005年7月31日に彼は亡くなった。その年の4月に彼の運営するノイズ/実験音楽専門店「テンザツ・コム」に妻と一緒に会いに行ったのですが、後で、妻が「なんかひどく疲れてるみたい」と言ってきた。もうその時には大腸癌は進行していたのだなと後からそう思いました。その人物は、元々、四国の松山でエンジニア/会社員として勤めていた田野幸治さんでした。1997年に東京に居を移し、1990年初頭より続けてきた、自身のノイズユニットMSBR (Molten Salt Breeder Reactor)で活動するだけではなく、海外からのノイズ系ミュージシャンやグループの招聘や国内でのサポートやツアーを始め、ノイズ専門誌「電子雑音」を発刊し、国内のノイズシーンの拡大だけでなく、自身もMSBRとして海外ツアーもやっており、その為に、脱サラして先述の専門店まで開店した人物です。個人的にも歳が近かったこともあって、生前は仲良くしてもらいましたし、蒲田のスタジオ80(オッタンタ)でよく企画をして一緒にやったりもしていました。ただ私は2002年に仕事の関係で、市川から大阪→静岡と移っていた為、告別式に出席できなかったのは大変悔やまれるところです。また、彼は漫画(特に金融ものや893もの)も好きで、自身でも描いていました。それとプロレスも好きでしたね。そんな田野さんのやっていたMSBRへの追悼盤を作ると伊のUrashima(浦島)から連絡をもらい、確か、既にリリースされているMSBRの音源を使って、それぞれが新しく曲を作ると言う企画だったと思います。それで、参加者とその曲を紹介していきます。A1 Macronympha (米)はテープのループ音と共に分厚い歪んだ電子ノイズを放射。A2 The Haters (米)はチリチリしたノイズの上にテープ音源と思われる伸縮自在なノイズが被る、いつもとは違う純度の高い曲。A3 SRS (伊)は、純粋な電子音が明瞭な構造を持って提示したおり、歪みは殆ど無い電子音楽です。B1 Government Alpha (日)は、非常にダイナミック・レンジの広いシンセ音を上手く組合わせた上質のノイズ作品で、まるで電子音が生きているかのよう。B2 K2 (日)は、変調したMSBR音源やシンセやフィードバック音を無秩序にカット・アップ・ミックスしたストップ&ゴーな曲。B3 Richard Ramirez (米)も重々しく分厚い音像で、HNW的なアプローチ。上記のアーティスト/グルーブ以外にも田野さんにお世話になったり、関係が深い人達も沢山いた訳ですが、まあ浦島のレーベル・カラー上、この様な絞ったメンツにはなってしまったんだろうと思います。もし、上記のアーティストやグルーブに興味があったり、MSBRってどんなユニットだったのだろうと思ったりした方は、是非とも入手して下さい! 本作品は音源がなかったので、MSBRと参加者の中でコラボ作品があるものを2作品チョイスしました。 MSBR & Richard Ramirez “Sonic Aggression” https://youtu.be/RzI2EyRX8o0 MSBR/Spykes/Government Alpha “Tano Forever” https://youtu.be/EXnDE-J9MUU #VariousArtists #TributeToMSBR #Urashima #Compilation #HarshNoise #KojiTano #MSBR #Macronympha #TheHaters #SsheRetinaStimulants #GovernmentAlpha #K2 #RichardRamirez #追悼盤
Noise Urashima 不明。Dr K2
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Andreas Dorau und Holger Hiller “Guten Morgen Hose”
これは!ATA TAK、最強の2人、Andreas DorauとHolger Hillerのコラボ作!見つけた!! 地味なジャケだったので、気付かなかったよぉ。今、小柳カヲルさんの「クラウトロック大全」で調べたら、DorauはHillerにギターを習っていたとのこと。ビックリです。じゃあ、これは師弟対決(?: まあ、対決ではないですが)!! 読みにくい独逸語のライナーが裏ジャケにあるのですが、細か過ぎて読めません。どうも、両面とも一種のオペラとか歌劇となっています。配役はJohnnyがAndreas Dorau, Hosenchor(ズボン合唱団)がJochen Liedisch (& Moritz Reichelt, Hagar Groeterr), 人妻LucyがClaudia Kaloff or Erica Kochs, Die Hose (ズボン)がHolger Hiller, Der TeppichがSol Rubioとなっています。A面とB面でやや配役が代わっています。内容は、Johnnyとズボンが人妻Lucyを奪い合うとことで、そのLucy役の女性は近所の掃除のおばさんらしいです。取り敢えず、少々調子っ外れなメインVoはオペラチックに歌うと言うか抑揚を付けて喋ると言うかなんですが、バックの演奏がもう、Hiller丸出しの複雑怪奇或いは荒唐無稽なアレンジで、そこにスパイス的にDorauが味付けしていると言った感じでしょうか? で、出来上がったのが、この”German New Opera”とも言うべき破茶滅茶な歌劇ですね。 確かにストリング・シンセなんかの使い方はまだクラシックのような面もありますが、個々の音は、Hiller的に分断された音をサンプリングして切り貼りしているようです。企画ものかもしれませんが、ほんと面白い内容になっています。7インチシングルもあるみたいですし、ジャケ違いもあるようですが、この一枚、持っていても損はないです。そんな一枚ですね。後、このマキシ・シングルは、蘭で放送された際に、深い哲学的意図があるとして、MVが作製されており、それを観ながら聴くと何となく筋が分かります。 A “Guten Morgen Hose” B “Guten Morgen Hose” https://youtu.be/auH4A9ZHzVw?si=SLszJZ5dY8ilc401 #AndreasDorau #HolgerHiller #GutenMorgenHose #ATATAK #12inchSingle #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #ModernOpera #Avant-Opera #不条理劇
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Experimental ATA TAK 不明。Dr K2
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Mars “Mars Archives volume three: N.N. End”
いよいよMars祭りも終盤になってきました。アーカイブの最終章第3弾は”N.N. End”です。この作品は少し遅れてリリースされましたが、Marsのメンバーで、このシリーズのキュレーションをやっているMark Cunningham の言葉を借りると、1978年6月にBrian Enoがプロデュースした”No New York”がリリースされていますが、その時には既に方向性を変えていて、同年12月リリースのMars EPに向けて、よりディープで、より実験的で、より抽象的な方にシフトしていたそうです。本作品のA面は、Max’s Kansas Cityでの7月12日でのライブ録音です。No New Yorkの曲も演っていますが、よりダークな方にアレンジし直していますし、また新曲も演奏されていまます。同年8月中旬でのIrving Plaza (既に紹介済み)でのライブではまだ新曲は披露されてはいませんでした。そして、同年12月のEPリリースの直前に行ったMax’s Kansas Cityでのラスト・ライブでは披露していましたが、録音されたテープは歪みまくって酷いものであったので、それをこのアーカイブには加えることが出来ず、その7月12日のライブ録音を使ったと言うことみたいです。その際.に”Fractions”や”Outside Africa”と言った新曲もまたその頃になると、NYCの地下音楽シーンにはダンス・ミュージックやクラブ・ミュージックが浸透してきたのも要因だったとのこと。A面もB面もラジカセで録音されてますし、それ程、違和感はないので、両方ともこのアーカイブに入れたとのことです。それでも、特にB面は聴きどころですね。 A1 “Puerto Rican Ghost”はやや粘着質な各楽器の絡みでショート・ヴァージョンになっています。A2 “RTMT”は呪術のようなVoが、縦方向に律動する楽曲の中を通り抜けるようなアレンジになっています。A3 “Cairo”は割とタイトな演奏ですが、やはり短目のアレンジ。A4 “Fractions”は新曲で、録音の為かもしれませんが、機関車の様なミニマルな曲です。やはり短目。A5 “Tunnel”はこれまでの録音の中で最も殺気立っているように聴こえます。特にSummerのVo❗️A6 “Hairwaves”はいつもよりも重た目の演奏で、不穏な曲調になっていますが、曲は短くなっています。“Outside Africa”も新曲で、意外とバックの演奏はミニマルですが、雰囲気としては、もう混沌の海の中、或いは幻覚を催すような熱帯夜で、Chinaが叫んでいるかのよう。 では、B面にいきましょう。B1 “N.N.End”は壊れた掃除機のようなギターのノイズの中で、Sumnerの引き攣るようなヴォーカリゼーションが悲鳴をあげている様です。とするとMarkがトランペットかな? B2 “Scorn”は、Nancyのドコドコしたトライバルなドラムに象などの野生動物の鳴き声のようなトランペットらしき音が主役になつています。B3 “Monopoly”淡々としたドラムにツインVoが呪文の様にも聴こえてきます。それにしてもNancyのドラムは味があるなぁ。B4 ”Immediate Stages of the Erotic”では、アンプに繋いであるシールドを指で触った時のノイズ音でリフを作り出している実験的(?)な曲。もうGもBもVoも成立させない「アンサンブル」の如しで、Drsだけで辛うじて「楽曲」になっているようです。 A面の今までもレパートリーはどれも短めにアレンジしてしてありますが、B面のリハーサル・テープではもはやバンドと言う概念を覆すかどうかの瀬戸際でせめぎ合っているかのような危ういバランスで演奏されています。バンドが解散することになるのも然もありなんと言うところでしようか? いやーこんなにMarsばっかり聴いてると、頭、おかしくなりそうです。でも、この作品は後期Marsの貴重な記録なので、Marsファン(っているのかな?)は必聴ですよ❗️ Recorded Live On Cassette At Max's Kansas City - July 12, 1978 A1 “Puerto Rican Ghost” (1:26) A2 “RTMT” (1:57) A3 “Cairo” (2:40) A4 “Fractions” (2:17) A5 “Tunnel” (3:18) A6 “Hairwaves” (3:21) A7 “Outside Africa” (2:14) Rehearsal Cassette - December 1978 B1 “N.N. End” (2:55) B2 “Scorn” (3:04) B3 “Monopoly” (3:32) B4 “Immediate Stages of the Erotic” (5:15) https://youtu.be/9dZRKya5xdY?si=Dqf12Wm0hdNTA58_ [full album + bonus tracks https://youtube.com/playlist?list=PL8dshfU__G3W-bZ1vFHb5hBnsN8TGxlAk&si=QY-BU1720jPPloMK [BandcampのURLです] https://marsnowave.bandcamp.com/album/mars-archives-volume-three-n-n-end #Mars #MarsArchivesVolumeThree:N.N.End #N.N.End #NoWave #NoNewYork #SumnerCrane #ChinaBurg #MarkCunningham #NancyArlen #Fractions #OutsideAfrica #Scorn #Monopoly #ImmediateStagesOfTheErotic
No wave Feeding Tube Records / Negative Glam 不明。Dr K2
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Mars “Mars Archives volume two : 11000 Volts To Tunnel”
またまた、大好き!Marsのアーカイブシリーズ第2弾 “11000 Volts To Tunnel”です❗️この中期辺りが最も油がのっていた頃ではないでしょうか?既に何度も紹介してきていますので、もう野暮なバイオグラフィーは省略しますよ。一応、メンバーだけ書いておきます。Sumner Crane (G, .Vo), China Burg (G, Vo), Mark Cunningham (B, Vo), Nancy Arlen (Drs)の鉄壁の4人です。それで本作品は、1978年の2月5日(A1-A3)及び3月29日(B1-B5)のCBGBと1978年の4月25日のMax’s Kansas City (A4-A7)でのライブをカセット録音されたものをコンパイルしたライブ・アルバムです。キュレーションは、生き残りの1人Mark Cunninghamが行っており、マスタリングもされて、カセット録音ながら、音質も随分とマシになっています。この中で、”Cairo”とら”RTMT”の2曲はスタジオ録音された方がなかったらしいですが、このアーカイブアルバムには、先述の2曲の他に、彼等のファースト・シングル(“3E”と”11000 Volts”)とコンピ・アルバム”No New York”に収録された曲で構成されています。A1 “3E” Velvet Underground (VU)の影響が感じられるノリの良い曲。ここではややダウンテンポしているかな?A2 “Helen Fordsdale”はスライド奏法の痙攣ギターとギチギチと刻む金属質なギターのコンピネーション及びSumnerのVoが凄い。A3 “Cairo”は、珍しくベースとドラムがしっかりとした曲ですが、呪文のようなSumnerのVoとの対比が興味深いです。A4 “11000 Volts”も混乱したようなVUの影が聴取できる曲。A5 “Hairwave”はカオスな演奏なのに、アルバム・ヴァージョンと大差がないのが、逆に凄いです。Chinaの虚なVoもグー。そのままA6 “RTMT”に突入します。この曲では弾けるようなリズムにも関わらず、SumnerとChinaのツインヴォーカルがズレまくってて、逆にカッコいいです。A7 Puerto Rican Ghost”はコンピ・アルバムの中でも全パートがズレまくっていた曲を再現しています。最後に観客の拍手がありますが、恐らく10-15人程度ではないか?と思われます。B面5曲は先述のようにCBGBでのライブ録音です。B1は“11000 Volts”ですが、こちらのテイクの方がベースが聴いていて、カッコいいかな? B2 “3E”ですが、混沌としてはいますが、やっぱりカッコいいです。B3 “Cairo”はこちらの方が、曲の輪郭がハッキリしてますね。客のノリが凄い❗️B4 “Tunnel”はアルバムよりも(Summary のVoを除くと)整然としている感じですが、これぞNo Waveな一曲ですね。B5 “Hairwaves”は虚なChinaのVoに切り裂くようなギターやドラムなどが絡んできます。しかしながら、これでちゃんと終われるのも凄いです。また観客の盛り上がりも凄いです❗️初期から中期のMarsを知るには本作品は最適ですので、是非とも聴いてみて下さい! Side A / 1-3 CBCB's February 5th, 4-7 Max's K.C. April 25th A1 “3E” A2 “Helen Forsdale” A3 “Cairo” A4 “11000 Volts” A5 “Hairwaves” A6 “RTMT” A7 “Puerto Rican Ghos Side B / CBGB's March 29th B1 “11000 Volts” B2 “3E” B3 “Cairo” B4 “Tunnel” B5 “Hairwaves” [BandcampのURL] https://marsnowave.bandcamp.com/album/mars-archives-volume-two-11000-volts-to-tunnel #Mars #MarsArchives:VolumeTwo #11000VoltsToTunnel #FeedingTubeRecords #LiveAlbum #NoWave #3E #HelenFordsdale #Cairo #11000Volts #Hairwaves #RTMT #PuertoRicanGhost #Tunnel
No wave Feeding Tube Records (Negative Glam) 不明。Dr K2
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Mars “Live At Artists Space”
私の大好きなNo Wave Band、それがMarsです。これは、No Waveの教科書的コンピ”No New York”を聴いた時に、訳が分からず、本当に頭で理解することが最も困難であったバンドだからです。確かにJames Chance & The Contortionsはカッコいいんですが、Marsは最後まで理解出来なかったけれども、どこか頭の中にこびりついていたサウンドを奏でるバンドだからです。メンバーはSummer Crane (Vo, G), China Burg (G, Vo), Mark Cunningham (B, Vo), Nancy Arlen (Dr)と言う当たり前のような4ピースのバンドにも関わらず、出してる音楽は殆ど「音楽」とは言えないものであった訳で、後々になって、彼等はVelvet Undergroundに近い立ち位置にいたのだなと思えるようになりましたが、Marsはそれを無意識的に演っていたんだと思います。まあ、ここら辺のことは、語り出すと止まらなくなるので、ここら辺にしておきますが、本作品は1978年5月6日に、NYCのArtist’s Spaceで行われたライブを、2種類のカセットレコーダーで録音したものをそれぞれSet OneとSet Twoとして収められているアルバムです。Set OneはNakamichi 550で、Set Twoはバイノーラル録音機の模造品で録音されています(それ程変わらないようにも思えますが、Set Twoの方が生々しいかな?)。曲は名曲”3E”のような初期の曲から”Tunnel”や”Puerto Rican Ghost”のNo New York期までの持ち歌が収められています。珍しくノリの良い”3E”で始まり、激しいぶつかり合いの”Cats”〜ややダウナーな11000 Volts”へ。更には緊張感マックスの有名曲”Helen Fordsdale”へ。未発表曲(?)で彼等の独特のアンサンブルが聴ける”Cairo”から、これまたギターとは思えない”Tunnel”。そして鬱々たる雰囲気の強い”Hairwaves”からのツインヴォーカルが特徴的で皆んなバラバラなアンサンブル”Puerto Rican Ghostで締めています。やっぱり、最高のAnti-ensembleですね。よだれが出てきます。曲目は良いのですが、Set oneとSet twoが録音違いだけなので、少し、マニア向けかもしれませんね!それでも聴きたい方は是非! Set One A1 “3e (Fragment)” A2 “Cats” A3 “11000 Volts” A4 “Helen Fordsdale” A5 “Cairo” A6 “Tunnel” A7 “Hairwaves” A8 “Puerto Rican Ghost” Set Two B1 “3e” B2 “Cats” B3 “11000 Volts” B4 “Helen Fordsdale” B5 “Cairo” B6 “Tunnel” B7 “Hairwaves” B8 “Puerto Rican Ghos https://youtu.be/AupQ2LHbmWs?si=EHWzPEY06Z6M1e1k #Mars #LiveAtArtistsSpace #FeedingTubeRecords #NegativeGram #LiveRecording #LiveAlbum #SumnerCrane #ChinaBark #MarkCunningham #NacyArlen
No wave Feeding Tube Records / Negative Glam 不明。Dr K2
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Asmus Tietchens “Geboren, Um Zu Dienen”
独逸の電子音楽/実験音楽の生き証人にして多作家Asmus Tietchensが、何と!あのスペインのDiscos Esplendor Geometricoがからリリースした作品”Geboren, Um Zu Dienen”が登場です。Asmusの場合、どこから出しても驚かないですが、これは盲点でた。彼のバイオグラフィーは前回、書いてありますので、そちらを参考にして下さい。今回は、スペインのインダストリアル・マスターEsplendor Geometricoのレーベルからと言うことなのか、全体的に無機質で所謂「インダストリアル」な音作りをしています。ホワイトノイズを用いたリズムや機械音を思わせるシンセ、ループし、律動するシーケンスなど、徹底していますね。またB4には童謡「蝶々」のカバー”Deutsches Kinderlied”が入っています。Asmusは活動歴が長過ぎて、かつ電子音楽なら何でも出来るスキルがあるので、時代時代や作品によって内容が異なることから、どうも正体が掴み辛いです。そう言う理由からか、日本では今ひとつ人気が無いようにも思えるのですが、どうなんでしょう?(因みに私が初めて聴いたのは、全編、カセットテープのスクラッチ音だけからなる作品でした) 今回のタイトルは「生まれよ!奉仕する為に!」と言う意味深なものですが、どうなんでしょう?ジャケ写の胎児のミイラに関係あるのでしょうか? そんなことを夢想しながら聴くのも面白いかも。独逸電子音楽界において、作品量やそのクオリティではAsmusとConrad Schitzlerはやはり別格ですね。あっそれから、Asmusの絶対信頼を受けているプロデューサーOkko Bekkerは本作でも関わっています。もし、インダストリアルと電子音楽とのミッシングリンクに興味がある方は、是非とも聴いて欲しい一枚です。どうですか? A1 “Mein Erstes Erlebnis” (0:29) A2 “Zu Viele Dicke Kinder” (7:30) A3 “Merle” (2:26) A4 “Medienlandschaft 6” (2:08) A5 “Langer Anlauf” (6:17) B1 “Gliim” (6:48) B2 “Heroischer Reflex” (3:04) B3 “Zweites Maschinentraining” (9:32) B4 “Deutsches Kinderlied” (1:17) https://youtu.be/sOAYjja7yIs?si=Itdn0n2XmHT5xZh4 #AsmusTietchens #Geboren,UmZuDienen #DiscosEspledorGeometrico #Industrial #ElectronicMusic #Rhythm #MissingLink #OttoBekker
Electronic / Experimental / Industrial Discos Esplendor Geometrico 不明。Dr K2
