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富士見書房 ワイルド・コミックス 横溝正史シリーズ3 悪魔の手毬唄
昭和51年12月20日初版発行
発行/(株)富士見書房
角川書店傘下の富士見書房より刊行された、つのだじろう版の『悪魔の手毬唄』。
前作『犬神家の一族』でも“犬神族” “犬神信仰”などのオリジナル設定を加え、原作のイメージを大きく離れた展開を見せてくれましたが、本作では更に暴走とも思える大きなアレンジ(良く言えば換骨奪胎?)を施しています。
原作の『悪魔の手毬唄』は、岡山県にある静かな山村・鬼首村で、古くから村に伝わる手毬唄の歌詞の通りに村の若い娘たちが次々に殺されていく・・・というものでしたが、本作ではその基本シチュエーションはそのままながらも、“鬼首村手毬唄”を流行歌“悪魔の手毬唄”に、殺人鬼に狙われる3人の娘たちを“悪魔の手毬唄”を歌う女性コーラスグループのメンバーに置き換え、彼女たちが出身地である鬼首村へ凱旋帰郷した時に惨劇が始まる・・・という具合に改変されています。(しかも、この“悪魔の手毬唄”を歌う女性コーラスグループ・リリスは、何とトップレスでステージをこなす!)
しかし、一方で本作はつのだの得意とするオカルト描写と、基本的には論理的な探偵小説たらんとする横溝文学との方向性の違いから生じる“ズレ”を改めて浮き彫りにしたようにも思います。
それは物語の終盤、金田一耕助が霊媒師を使って犯人の霊を呼び出す、という場面に表れているのですが、結局、この霊媒師は金田一が用意したニセモノ、犯人の霊も真犯人を暴く為に金田一自ら変装したものであり、最大の見せ場が心霊漫画家たる自身の否定にも繋がりかねない“諸刃の剣”となってしまっています。
そのせいかどうかは判りませんが、つのだじろうによる横溝文学のコミカライズ「横溝正史シリーズ」は本作を以って終了となります。当初は本作の後に『獄門島』 『悪魔が来たりて笛を吹く』 『本陣殺人事件』 『病院坂の首縊りの家』と続く、全七作品刊行予定のシリーズだったにもかかわらずです。
最初の『八つ墓村』こそ、つのだ氏の“やり難さ”みたいなものが感じられますが、その後の『犬神家の一族』 『悪魔の手毬唄』では開き直りとも取れる独自アレンジで、徐々に面白さを発揮してきたところだったのでちょっと残念です。
ちなみに富士見書房ワイルド・コミックスのつのだ版『八つ墓村』 『犬神家の一族』 『悪魔の手毬唄』の表紙カバーの人形は、つのだ氏と親交の深い辻村ジュサブロー作によるものです。
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