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「吉村昭 調査・探訪関係のエッセイ ×4冊」(文春文庫、中公文庫/吉村昭著)
これらのエッセイはここに載せるのはやめようかと思ったのですが、旅の随筆等と違ってこれらのエッセイは、吉村先生のドキュメンタリー小説や歴史小説の調査と執筆の過程を記した記録であり、作品には出ていないエピソードや裏話なども出ていたりして、歴史の情報・記録として貴重な部分があるなと思い、4冊まとめて掲載しておくことにしました。 ① 歴史の影絵 ② 戦史の証言者たち ③ 史実を追う旅 ④ 旅行鞄のなか 深海の使者、海の祭礼、ふぉん・しいほるとの娘、天狗騒乱、海軍乙事件、戦艦武蔵、赤い人、破獄、闇を割く道、陸奥爆沈、羆嵐、間宮林蔵、桜田門外の変などなど…、吉村作品がどうやって生まれたのか、どのようにして調査して記録を掘り起こし、作品にまとめたのか、これらを読むと吉村先生の呼吸を感じるといいますか、ついつい引き込まれて読み入ってしまう短編の数々。 画像の右下の「旅行鞄のなか」は、すこし旅の随筆のような趣もあります。 吉村作品の数々を読んだら、次にこれらを読むと、さらに吉村ワールドの奥深い世界に触れることができます。 おすすめです。
歴史 文春文庫、中公文庫T. S
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「維新回天史」(野村春畝著)
四境の役、すなわち幕末の長州征伐から120周年の昭和61年(1986年)に「長州藩の維新殉難者慰霊のため」に刊行された書籍。 ちょっと国粋的な臭いがするものの…、本書後半の「殉難者名簿」は、幕末から戊辰戦争にかけて亡くなった長州藩関係者等の名簿であり、なかなか興味深い記録である。 そのほか、長州人が関わった幕末の各事件、事変、騒乱など、それぞれの解説。当然ながら長州寄りの解釈ですべて語られていますので、逆に長州目線での解釈はこうなのかと、そういう目で見れば意味のある歴史資料だと思います。 祖父が長州人だったので、当時、その関係でとある方面より入手したものだと聞いてます。少年時代に祖父宅でこの本を見つけて、誰も読んでる気配が無かったのですが(笑)私にはけっこう面白くて読みました。そして、そのまま引き継いで私の蔵書になりました。
歴史 1986年頃のはずT. S
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「明石工作 謀略の日露戦争」(丸善ライブラリー/稲葉千晴著)
私は日露戦争の歴史には関心が高いので、それに関わる書籍はいろいろ読むのですが、日露戦争の歴史を語るうえで、明石元二郎大佐(当時)による欧州での対ロシア諜報・謀略活動、いわゆる「明石工作」は見落としてはいけない歴史の一ページだと思っています。 ロシア帝国を裏から切り崩すために欧州各地の革命派に肩入れし、後のロシア革命にもつながる裏工作を行いました。明石大佐は日露戦争勝利の陰の立役者です。 本書は小さい新書サイズの書籍ながら、明石工作について克明に記録した良い歴史書です。
歴史 丸善ライブラリー 学生のころだったかな…?T. S
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「閉山 三井三池 124年」(毎日新聞社編)
江戸時代から「燃える石」を産出し、明治6年に官営鉱山として近代的な採掘が始まった三池炭鉱。 福岡県南端の大牟田市一帯に広がるこの三池炭鉱は炭坑節が生まれた鉱山としても知られていますが、明治、大正、昭和と日本のエネルギーを支え、戦前は東洋一の炭鉱として三井財閥の財源でもあり、戦後も地域社会を支えた産業でしたが、日本政府のエネルギー政策の転換により昭和後半からは衰退の一途を辿り、そして開山から124年後の平成9年、惜しまれつつ閉山しました。 地域一帯には多くの鉱山遺構が残され、多くは撤去されましたが、いくつかの遺構は産業遺産として保存されています。 この三井三池炭鉱の歴史を辿る記録写真集であり、また、炭鉱事故で多くの犠牲を出し、残された家族のその後の塗炭の労苦や、昭和の労働争議での労働者間のいがみ合いが残した地元の遺恨など、地域の方々への取材などを通じて地域の生の声も記録として残す、貴重な本だと思います。
歴史 毎日新聞社 大牟田市の本屋 1997年頃T. S
