逆輸入ガンダム MEAD GUNDAM

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講談社「ミードガンダム」は初版が完売し、熱いファンの要望と担当者さんの御尽力で復刊ドットコムへしつこくリクエストしたことで再販された。再度リクエストを募集中ではあるが、あともう一押し。

よく名付けれた良いタイトルで、放映から20年経った現在も根強いシドミード・デザインに対する評価にはタイムラグが大きく、やはり改めてシドミード展で最注目され、ガンプラの影響が大きかっただと思う。バンダイからリリースされたガンプラとして画面上でしか動いていたいなかった2Dセルアニメーションが触覚で確かめられる3Dになり、誰もがそれらをパーツで一つずつ組み上げて、塗装し、あらゆる角度から眺めていじってポージング出来たことで更にシドミード が「動くデザイン」として想像したことを再認識できた。初めてモデラー達が発信元になり、それらが実は如何に優れたデザインで、他のどのモビルスーツにも似ていない唯一無二であることを評価できた。ただし日本のデザイナーに発注しても根底を覆す程の新しさが出てこない状況の中で、シドミード に発注をかけたという背景を、我々日本人は恥じねばならない。ハリウッド映画のノウハウが玩具に入り、また兵器として戦場でシビアに運用されることを念頭に、「外人が考えた逆輸入ガンダム」であり、単なるロボットでなくキャラクターとしてデザインされた。(あくまでSUMO以降は!)そんな相反する無茶な要求に応えられる特許に近い離れ業を為し得たデザイナーがかつていたのか? しかも全登場には至らなかったものの8体あったミードガンダムの真意とデザインレベルを日本人が認識するのに20年を要したことを我々日本人は認めなくてはならない。デザインを理解する、或いは評価するにはリテラシー(修辞学)や最低限の知識が必要なのだ。そんな高尚な能力は残念ながらガノタにはない。海外からの評価があって初めて凄いともなかなか感じれない不勉強さを反省すべきなのである。

またミードガンダムは彼の日本のクリエイター達へのアンチテーゼでもあった。この考え方でないのなら越えてごらん、という。それを最も集約して説明しきったのがシドミード展の最後の部屋、ターンエーのコーナーで上映されたサンライズとシドミードとの遣り取りをまとめたメイキング映像だった。無理難題を依頼し、結局袋小路に陥って自己矛盾に陥り、「ガンダムとは?」という原点にサンライズ側が立ち戻った時、実はシドミードの初期デザイン案に既に答えがあったというオチ。「沢山あっオーダーをカタチにしてみたが、色々あるリクエストを集約すると結局、コレになるよね?」という助け舟で発注元の日本人が救われたという微妙な結果。実際のデザイン作業で必ず発生してくる「仕上がりが悪い」のでなく、「デザイナーが悪い」のでもなく、あくまで「発注元のディレクションミス」。これは富野監督の迷いと模索も相まって本書「ミードガンダム」には描かれていない。シドミードが何を目指しクリエイティビティにおいて如何に知的遊戯しながらサンライズを導いたか、20年経った今も実はガンダムファンの半分以上は知らない。好き嫌いは別としてアンチテーゼでもあった。「違うなら越えて見せてご覧」という挑戦状に未だ返答出来ていない。その証拠がビルドだったりする。ガンダムのデザイナーさんは危機感があるならあんなのは世に出さない。20年経っても世界に誇れるなら良いが。100年単位で物づくりを考えるヨーロッパのプロダクトで鍛えられ、あらゆる企業のデザインコンサルを歴任し、発注すること自体がハリウッドの監督達のステイタスとされ、大統領諮問機関にまでなった実力のほんの一部に我々はお付き合いしてもらえたらだけなのだ。6年間にも及んだ「ヤマト2520」も含めて。

キツイ私見はさておき、随分前、シドミードの現アーカイブに唯一個人として(3日間)入ることが許された私はスケッチの整理と梱包をシドミードと2人で行った。シドミード展の図録集にも寄稿した際少し書かせて頂いたが、とにかく「オリジナル(原画)以外は捨てよ」との指示。ゴミ袋がいっぱいになるほど資料やコピーの山が出た。あまりに多く、2度と見れないと瞬時に察知した自分はご本人とマネージャーの了承を得た上で全てのもとあった容器を2度チェックしながら全てサルベージ出来た。その結果、シドミード展での目玉でもあったヤマト2520のテーブルの原画(手書き図面)以外は実はその時にサルベージしてきたものだ。
年末の「秘密基地」では、当時サンライズにファックスした原盤となった親コピー、シドミード自身が不要だと言われた制作途中のトレースやメモ書きの一部をプレゼン予定。中身はミードガンダムの最終形、後半にデザインされたBANDITと、画集(SYD MEAD's SENTURY)にも好んで用いたお気に入りのTURN-Xである。
合わせてご本人も飾っていたモノと同じドール、ファンがアレンジして差し上げた同型の展示も加えておこう。

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