錫石 (cassiterite) 見立鉱山 #0578

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石英質の母岩中に細かな錫石の結晶が濃集している部分があります。(1~5枚目は背景をソフトウエア処理しています。)

見立鉱山は宮崎県北西部の日之影町(ひのかげちょう)にあった錫鉱山です。1631年(寛永8年)に発見され、本格的に採掘されるようになった元禄元年 (1688) 当時は鉱山夫をはじめ家族や行商人など多くの人々で賑わたといわれ、女郎屋鋪(じょろうやしき)などの地名も残っています。宝暦年間(1751年~1763年)には錫2,000斤(約1.2t) を生産したとの記録があります。1921年(大正10年)に鉱山は旧延岡藩主内藤家からイギリス系資本家(E.ハンター)の手に渡り、設備が近代化され錫のほか鉛、亜鉛、タングステンなどの鉱物を産出しました。全盛期を迎えた1931年(昭和6年)には錫精鉱556tを生産し、鉱山従業員世帯340戸、従業員465人、人口1,232名に達し、山峡には鉱山住宅と選鉱住宅、鉱山事務所、集会所、物品販売所、診療所、外国人技師と鉱山主であったハンターのための宿舎兼クラブハウスなども建設されました。しかし、国際情勢の悪化により英国資本による維持が難しくなり、1940年(昭和15年)以降ラサ工業傘下の東洋鉱山により採掘が続けられましたが、1945年(昭和20年)終戦とともに休山しました。戦後1949年(昭和24年)に旧鉱滓(選鉱スライム)からの錫回収に着目し1951年(昭和26年)から選鉱所の復旧に着手、1954年(昭和29年)から本格的な操業が再開されましたが、鉱床の品質低下と旧鉱滓の減少により、1969年(昭和44)に閉山しました。

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