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北海道寿都郡寿都町渡島町 寿都鉱山 照りのある水晶クラスター
明治時代に広尾(廣尾)鉱山として開発され、後に寿都鉱山と名称変更した鉱山。街中で開発されたという面白い鉱山で、当時の遺構が現在でも残っているそう。 金、銀、亜鉛を中心に採掘されていたため、石英脈があれば当然水晶も出てきます。 この水晶は柱面に乏しい、一見するとβクォーツの集合にも見えるクラスター。北海道の水晶には珍しく、照りツヤがはっきり分かります。有名コレクターからお譲りいただいた古い標本で、ややくすんでいながらもこのツヤ。お気に入りです。 恐らく鉱山のズリで水晶を拾うことはできるのでしょうけど、市中に出回ることはまずなさそうです。
水晶好きな松ちゃん
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北海道余市郡余市町豊岡町 稲倉石鉱山 菱マンガン鉱上の水晶
稲倉石鉱山はマンガン鉱を採取していた鉱山で、良質な桜マンガン、つまり菱マンガン鉱=ロードクロサイト、インカローズが採られることで知られていました。 積丹ルビーという別名が付けられるほどに美しい菱マンガン鉱。酸化することで黒いマンガンになってしまうのですが、黒化していない部分で上手く割ると、ピンク色の部分が出てきたりもします。 こちらはピンク色がはっきり分かり、かつ菱マンガン鉱の菱形も確認でき、さらに微細な高透明度の水晶が見られるもの。遠目で見ると、そのコントラストで水晶が銀色に見えます。 水晶好きとしては、他の鉱物と共生している水晶というのが大好物。単なる菱マンガン鉱であれば、値段はそこそこながらも見かけることはあります。でも、意外に水晶との共生標本は少ないのでは?
水晶好きな松ちゃん
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島根県益田市美都町山本 都茂鉱山 緑簾石付き水晶
都茂鉱山と言えば、日本発の鉱物、都茂鉱(ビスマスとテルルの鉱物)の産地。石英閃緑岩マグマが石灰岩と反応して形成されたスカルン鉱床で、明治時代以降は銅メインの鉱山として開発されていました。 当然水晶も採れるのですが、島根の水晶は出回ることが何しろ少ない。ありふれていそうで、見ることがまず無いという印象。 そんな中たまたまヤフオクにて入手できたこちら。水晶の周りに緑の鉱物と、繊維状の白いもの。初めは水洗いしたあとのティッシュ繊維かと思いましたが、どうも石綿なようです。緑の鉱物は緑簾石の結晶。水晶の多くの綿を覆う形で発生しています。 一部、水晶にも緑簾石が内包(めり込んでいる?)している、一風変わった水晶になります。 一緒に購入したセットには、同産地の単結晶もありました。割とクリアな単結晶になります。
水晶好きな松ちゃん
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青森県某所 透明水晶
産地詳細は伏せますが、初見ではブラジル産水晶にしか見えませんでした。それほどまで端正で、透明で、美しい。条線の存在も相まって、海外産水晶の中に紛れても違和感は全くありません。 やや黄色みがかった感があり、極めて薄い煙水晶か黄水晶にも見えます。 この水晶、実際に青森県内で採取されたもので、複数同様の標本を入手できたことから、確実に国産水晶と言えるものです。まだまだ知られていない産地があるにせよ、ここまで美しいものがひっそりと眠っていたとは驚きです。
水晶好きな松ちゃん
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愛媛県某所 煙水晶
「ミネラ」81号掲載 白雲母がファントム状に内包された煙水晶。ミネラでは◯◯美人と名付けられそう、だなんて書いています。全く出回っていないため、実際のところ、何も名前はありません。 愛媛県の九州寄りのリアス海岸付近では、ペグマタイトが点在しているようで、その一つがこちらになります。 愛南町出身の方と話をした際、「雨が降ったあとや体育の時間の前は、小学校の校庭で大量の煙水晶が落ちていた」「転んで怪我すると大変なので、全校児童で拾って捨てていた」と話を聞きました。真偽を確かめるべく町役場に問い合わせたところ、学校関係ではない別の課の職員がその経験があったらしいです。真砂土を校庭に撒いていたかについては不明でしたが、地元の砂を使っていた可能性が高いそうです。 …と、別の場所のエピソードにはなりますが、意外に身近な煙水晶なのかもしれません。
水晶好きな松ちゃん
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鳥取県鳥取市百谷 百谷鉱山 紫水晶
「ミネラ」80号掲載 分厚い石英脈の所々が紫石英で、一部が僅かに紫水晶の錐面となっている標本。頭部分はほぼ目立ちませんが、全体を見れば紫水晶だな、と分かります。通常の白水晶が覆い被さっている部分もあります。 緑色の部分は孔雀石になります。 鉱山は黄鉄鉱や黄銅鉱が採れた場所なので、その影響もあって色が変化し、紫水晶となったのでしょう。 ミネラ掲載文には、「平原に咲き誇るスミレ」なんて表現をしました。緑が草、紫が花、形状を丘と見てみると、そんな感じ。試しに背景を青にして、空の感じを出してみましたが、違和感が強いです…
水晶好きな松ちゃん
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大分県豊後大野市緒方町 尾平鉱山 晶洞坑 武石に生えた水晶
ミネラ79号掲載 世にも珍しい!ダークチョコレートから生えた水晶…というのは冗談で、黄鉄鉱が褐鉄鉱に変化したもの=武石に、晶洞坑の水晶(桜構造が見られると言われる水晶)が生えている面白い標本です。 武石自体も、2つの立方体が合体した形状。水晶と武石がくっつき、生え、貫通し…表現が難しいですが、フィラデルフィア実験の状態と言えばわかるでしょうか。 尾平鉱山の黄鉄鉱は、半分褐鉄鉱になっているものもありました。現在は坑道が水没しているらしく、採取は不可とのことです。
水晶好きな松ちゃん
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宮崎県児湯郡西米良村板谷 松茸水晶を伴う水晶クラスター
ミネラ79号掲載 ミネラにて、天使の羽、恐竜の首と表現したものです。何を言っているのかと分かりにくいかもしれませんが、 ・1枚目の松茸水晶部分が、ブラキオサウルス、首長竜に見える ・2枚目全体写真が、羽を広げた天使感(どこかのパチンコのCMに出ていた、デカい羽のキャラ感)がある という感じです。ジュラシックパーク1作目で、木の上からブラキオサウルスを見上げるシーン、森から出てくるブラキオサウルスの首、あれを連想したわけです。その点、3枚目が分かりやすいでしょう。 板谷の水晶といえば、高透明度、細い単結晶、異形な石英と微細な水晶のイメージで、松茸の印象はありません。松茸の横にある単結晶、これが普通の板谷の特徴。 石英部分についてもThe 板谷。表面が水晶の柱面、錐面で煌びやかになっている石英2つが、細かな水晶のおかげで接合しています。この過程で、細い単結晶の上に小粒の水晶が接合したのでしょうか? どのようにしてこの松茸が生まれたのか、不思議でならない標本です。
水晶好きな松ちゃん
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山口県美祢市於福町下 山上鉱山 緑水晶
「ミネラ」80号掲載 抹茶というか、やや黄緑色というか。国産水晶の色味では、バッタリ鉱山の緑色が有名ですが、その色味より濃い目な緑。撮影方法によってより良く見えるのはあるでしょうが、1枚目の画像が肉眼に近く、ベストな色合いを見せてくれています。 中国地方のコレクターはよくこの緑水晶を採取している印象があります。それでも、こちらは5cm程ですが、この大きさはそれほど見かけません。小さいものが多いです。かえって小さいと鮮やかな「黄緑色」になるものも。酸化の有無で色味が変わります。その点バッタリの水晶と同じですね。 発色理由が不明。銅由来な印象です。
水晶好きな松ちゃん
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北海道函館市弁才町 日産戸井鉱山 黄鉄鉱付き水晶
「ミネラ」77号掲載 前掲のものと同じ、日産戸井鉱山の水晶。水晶部分は少ないのですが、こちらは濁りがなくクリアな水晶。 方解石の蝕像による脆弱な石英の隙間に、黄鉄鉱が挟まっています。両方入っていた隙間で、方解石のみ溶け落ちたため、黄鉄鉱は隙間でカタカタ動きますし、小さいものは外れたり、落ちたりで扱いが難しいです。 2022年の春に撮影してから保管したままだったのですが、2025年1月、黄鉄鉱が遂に粉を吹いてしまいました。そもそも鉱山稼働時のものと考えれば、60年近く前のものですから、黄鉄鉱の酸化もやむなしでしょう。 乳白色の水晶をオークション落札したあと、おまけでこちらがついてきました。
水晶好きな松ちゃん
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北海道函館市弁才町 日産戸井鉱山 褐鉄鉱に覆われた水晶
「ミネラ」77号掲載 オレンジ色の褐鉄鉱に覆われた乳白色の水晶クラスター。単結晶は褐鉄鉱に埋まっている部分も合わせると2cmほど。北海道産水晶としては大きい方でしょうか。 単なる乳白色ではなく、よく見ると気泡による色味で、ファントム状になっています。褐鉄鉱の形状も見事な葡萄状(赤鉄鉱だと臓器状とでもいうのか)で、中には折られた水晶の断面を覆っている箇所も。 日産戸井鉱山は大正時代に硫化鉄を目的に開発された鉱山。現在でも多くの坑口跡がありますが、坑道に満たされた大量の酸性水により探索が不可能に。付近の沢にも流れているようです。 やや値が張りましたが、奮発してオークションにて入手。
水晶好きな松ちゃん
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秋田県大仙市協和荒川嗽沢 荒川鉱山 両錐三色水晶(バライト共生・シャモサイト内包・根元紫水晶)
「ミネラ」77号掲載 2018年の東京ミネラルショーにて入手したもの?と思われます。記憶が曖昧ですが、国産水晶収集初期の頃の物です。 両錐ではない白、緑、紫の三色水晶は、時折ミネラルショーで見かけます。2025年の今では見る回数も減ってきましたが、収集初期の頃は二色であればよく見かけたものです。三色は目玉商品としてやや高額ではありましたが、それでもまだ販売されている様子はありました。 両錐になった理由、恐らくは、根元が紫水晶、シャモサイト(緑泥石の一種)によるファントムの水晶クラスターがあり、それが根元から折れ、その後再び鉱液に満たされたことで両錐になったものと思われます。 両錐ではありますが、仮に1〜4枚目の置き方で上下としますと、上の頭には荒川鉱山特有のシャモサイトによるファントム、またクリーム色の薄片状のバライト(重晶石)が見られます。下の方は、中心部分の紫水晶(やや薄め)を覆うように再結晶しており、その錐面にもシャモサイトがファントム状で見られます。 両錐のファントムというわけで、現在の私のコレクションでもあまり見ないタイプです。 実は初めて入手した荒川鉱山のシャモサイト入り水晶だったりします。初めてにして素晴らしい水晶をよく手にできたな…
水晶好きな松ちゃん
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山口県美祢市於福町北分 大和鉱山 緑ファントム日本式双晶
3.2cmと大きな日本式双晶。大和鉱山の日本式双晶は、2023年あたりからミネラルショーにて大量放出され、話題になっていました。 こちらはそのずっと前、コレクターの採取品。割れていなければ両翼4cmの大きい日本式双晶でした。 普通の日本式双晶と異なり、大きい方の錐面にまで結晶があるため、刺さっているかの様な形状。この錐面というのは、日本式双晶の根元部分が成長し、両錐になっている部分。突き出た錐面を見ると日本式双晶には見えません。 山上鉱山の水晶の様な緑色のファントムも見られます。緑泥石由来でしょうか?
水晶好きな松ちゃん
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山口県岩国市美和町根岸 煙水晶
小さいペグマのクラスターなのですが、まとまりがあり良い形状をしている水晶になります。 山口県の広い範囲に見られる花崗岩の地質。無名産地もちらほらあり、こちらもその一つ。曹長石の凸凹感、二本の煙水晶、その形、小さいですがとても良い雰囲気。 煙水晶はライトカラー、側面にやや石英が被っています。錐面は急激に冷やされたのか、ひび割れの様な紋様が見られます。
水晶好きな松ちゃん
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山口県山口市秋穂二島 柘榴石付き煙水晶(並行連晶)
秋穂二島のペグマタイト鉱物はよくネット上で販売されており、私も煙水晶に関してはとある方からの購入品でほぼ占められています。 久々に、同じ方から鉱物を購入できまして、それがこちらの柘榴石付き煙水晶。20年以上採取されてきた出品者様も、これまであまり柘榴石が付いたものは見られなかったそう。過去に加工材としていただいたカリ長石に付いていたことはありましたが、それでもかなり貴重。 煙水晶は複数生えた並行連晶、雲母の蝕像痕なのか、穴のような部分が見られます。柘榴石は恐らく鉄礬柘榴石。このクラスターには3つ確認でき、その一つは6枚目のように煙水晶にめり込んでいます。
水晶好きな松ちゃん