幽霊の気分で/坂本慎太郎

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2011年9月頃の発売。ゆらゆら帝国解散後の坂本慎太郎ソロ一作目。1stアルバム「幻との付き合い方」からの先行シングル。自前のレーベルZELONE RECORDS初リリース作品でもある。

ゆらゆら帝国といえば初期こそファズ全開のガレージ色濃い音楽性だったものの、作品を出すごとにどんどん「空虚」に向かっていき、透明になっていくというか、どん詰まり感が強くなっていって、見事なまでに音も言葉も着実に一歩一歩「空洞です」へ真っ直ぐ進んでいったように、後から振り返ってみればそんな風に思えた。

そこから見れば明るくなったとも思えるし、あそこからちゃんと続いてる感じもするね、という不思議な温度感の一曲だった。
まさかソロで何事もなかったようにまたガレージロックをやり出すなんて誰も思ってなかったと思うけど、「幽霊の気分で」ですからね。震災の後だったのもあるし。

録音やミックスも何とも変で、ベースなんかはもう超デッド距離感ゼロみたいな異物感のある音なのに、パーカッションには逆に冥府からの便りみたいなド深いエコーがかかっていたり、絶妙に気持ち悪い(気持ち良い)バランスだった。

このシングル版はメロディのハモリを坂本さん自身で重ねており音も大きく、主旋律が奥に引っ込んでてそこも変だ。バッキングは前述のようにベースがやたら前に出てギターが入るまではコード感もつかみづらいので、音像がふらふらしてて聴いてると本当に幽霊みたいな気分になるのだった。

アルバムの方はおなじみFUKOちゃん(もう『さん』と呼ぶべきだろうか)がハモリを歌っていて、ミックスのバランスも整えられて少しポップな感触になっている。

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