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No.16 フィアット 500e
イタリア発の最新EVフィアット『500e』は、歴代『500』のデザインランゲージを巧みに継承している。そのため、2006年トリノ冬季五輪の翌年に発表され、今日までロングセラーを続けている『500』の単なるEV(電気自動車)版?と思う方もいるだろう。しかし、答えはNO。『500』と共通のパーツは僅か4%に過ぎない、完全なる新設計である。
今回は『500e』開発チームの話を紹介しながら、魅力的なデザインの下に隠された最先端テクノロジーに迫ってみよう。登場するのは、車両チーフエンジニアであるラウラ・ファリーナさんと、駆動システム担当チーフエンジニアのマウリツィオ・サルヴィアさんである。
まずマウリツィオさんが、バッテリーについて語り始めた。
「42kWh容量のバッテリーパックは、世界の数あるサプライヤーが製造するなかでも、最もフラットかつコンパクトなものを採用しました」。それでも、重量は290kgもある。
「収容には苦労がありました」とラウラさんは回想する。そのため、ゼロから設計した新プラットフォームは従来の『500』よりサイズを拡大し、十分な補強も施した。しかし、製品コンセプト上、駐車を含むシティユースに適切なボディサイズに収めなければならないという制約とのせめぎ合いでもあった。
「加えて、通常のエンジンルームの位置にパワー・エレクトリック・ベイ(PEB)と駆動装置であるエレクトリック・ドライブ・モジュール(EDM)を収めるためのクレードルの設計にも苦心しました」と振り返る。
次にマウリツィオさんは、バッテリーおよびその冷却について説明する。
リチウムイオンバッテリーはDC急速充電にも対応。「冷却には水冷方式を採用し、3ウェイバルブで水流を適切に制御し、あらゆる環境で最大の効率を発揮できるよう設計しました」。
例として、バッテリーの温度管理が不要なときは、バルブが作動して水流はモーターやパワーデバイスの冷却に回る。低温時もバルブは閉じられ、代わりにバッテリーは電気ヒーターを使用して温められる。「寒冷地テストは、パーツサプライヤーとともにスウェーデンの施設で綿密なテストを繰り返しました」。