全日空商事 【1/200】【YS21149】全日空 YS−11A "モヒカン" JA8722

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全日空 YS−11A
"モヒカン"
レジJA8722

    〜ANAパイロットの心のふるさと〜
YS-11Aの”A”は、YS-11の改良型の量産機であることを示す。
YS-11に大きな改良をいくつも施したものであり、この改良型の出現でYSは旅客機として成熟したものとなってゆく。この成功の裏には、メーカーの日本航空機製造株式会社の努力は勿論のこと、最大のユーザーであったANAの技術陣(パイロット、整備陣ら)の提言・協力等の積極的なバックアップがあったことを忘れることが出来ない。このYS-11Aが就航した頃(1967年)になると航空の大衆化が一気に進み始めていて、YSはローカル線の主力機としての地位を急速に確立していくことになる。
YS-11Aが離陸してゆく・・・・。離陸出力にセットされたエンジンにウオーター・メタノールが噴射され「ズーン」とパワーアップされたロールスロイス・ダート10エンジン、どこか金属的な逞しいエンジン音にコックピットが満たされる。陽炎の立つ真夏の滑走路上を猛然と疾走するYS-11A。
そして着陸.....。高度500ft、フラップが35度に下ろされる。
急激に揚力が増えることによるピッチアップのモーメントを、コントロール・ウィールでぐっと押さえ込む。その後の安定した進入。スレッショルド(滑走路末端)を高度50fで越える。
接地点はすぐそこ。スロットルレバーをアイドルに絞る、フレア!操縦輪を引く、更に引いて機首をうんと起こしてゆく。機首を一杯に上げたままやさしく撫でるようにメインギアのタイヤが滑走路を捉える、「キュッ・キュッ」タイヤと地面が奏でる心地よい音。
機長の「グランドファイン・レバー、グランド」のオーダーに従って操作されるレバー、急速にプロペラピッチが0度に向かうことによって起こる「ザァー」という空気が切り裂かれる音。進行方向に垂直に立ったプロペラが確かな減速を生み出してゆく。こうしてYS-11Aは、1200m(長さ)✕30m()の滑走路しか持たない当時の多くのローカル空港において、その優れた離着陸性能を存分に発揮し、パイロット達の信頼を裏切ることは無かった。
一方、沢山のつらかった思い出・・・・・。冬は存分に寒く、夏は十二分に暑いコックピット、まるでサウナ。制服のズボンに白く塩が吹き出してくる。開襟タイプの夏用制服シャツを、ネクタイタイプに変更するという計画に猛然と反対したYS-11(A)のパイロット達、その気持ちも“むべなるかな”であった。
さらには、夏になるとガクンと落ちる上昇性能。パイロットは昇降計(上昇率を示す)と高度計をにらみながら、我慢・我慢・また我慢、じわりじわりと上昇してゆく。
加えて、舵面を人力で動かす最後の大型機とも言われ、ケーブルを介してのコントロール・ウィールの重さは今考えると尋常ではなかった。いろいろな意味で気力と体力の必要な飛行機であった。
しかしながらその素直な操縦性能と頑丈な機体は、訓練用の機材として、副操縦士への昇格機材として、また副操縦士から機長への昇格機材として、約20年もの永い間、パイロットを育てるという面でもANAに対し大きな貢献をしていくのである。
         〈元ANA YS-11機長久保田幸郎〉

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