Ancistroceras undulatum

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Species :Ancistroceras undulatum
Age   :オルドビス紀/氷河成層(推測:トレマギアン~フロイアン)
location:ドイツ/Königsfeld

小型の巻殻(幼年殻)のあとに極大成長で極太に肥えた竿(成年殻)を形成する異形のゼンマイ。
いや。もはやゼンマイと直喩しても伝わらない形態のリツイテス目の仲間。

この標本は巻殻の保存が十分ではなく半分ほど欠損して、竿は短く背面には複数の亀裂が入っており保存状態はよろしくないのだが、それを加味しても入手した充足感のほうが勝るほど希少な標本。
日本国内に住んでいる状況下で現物を拝める日が来るとは思いもしなかったし、リツイテス目特有の腹側で波を打つ細肋が保存され異様に高い成長率も観察できる十分良質な標本といえる。

産出について、ラベルに『Geschiebe』という氷河堆積物を意味するドイツ語が記載されており詳細な地質年代は不明。
しかしアンシストロセラス属は前期オルドビス紀トレマギアン~フロイアンのみの産出となる。

氷河堆積物とは、氷河が地表を浸食しながら移動運搬してきた礫や泥などの集積物。
氷河成層ともよばれており、集積物が雑然と入り混じった地層で細かな層理を示すことが出来ないらしい。

つまり、このアンシストロセラス属の標本は化石化した後に遠方から氷河で運ばれたものと推察される。

ドイツのオルドビス紀産出の頭足類化石はこうした標本ばかりの様な気がする。
ドイツには氷河成層が広く広がっているのだろうか。
素人考えだが地理や地層分布から、エーランド島やエストニアなどオルドビス紀地層が広がるバルト海周辺の地層が運ばれ来たものと推察できる。

リツイテス目内での進化系統の位置づけとしては、幼年殻が巻かずに僅かな曲を描いて高い成長倍率で極大成長するリンコルソセラス属から、幼年殻から真っ直ぐ伸びる太めかつ太肋を持たない成年殻を形成するホルミセラス属が生まれ、ホルミセラス属から更に分化して極大成長するアンシストロセラス属が生み出されたものと考えられている。

また、ホルミセラス属は成長倍率を落としつつ太リブやラペットなどの装飾を発達させたリツイテス属の近縁グループも生み出している。

系統樹については6枚目の画像を参照のこと。
※画像6枚目:引用"Phylogeny of Middle-Late Ordovician lituitid cephalopods based on cladistic analysis"

むしろこのグループから巻き殻を消失させたリンコルソセラス属が分化したとの逆説も存在しているらしいが、学会での最新の主流派はどちらなのかド素人の私には知る由もない。
※リンコルソセラス属の標本:https://muuseo.com/Nautil_Works/items/53?theme_id=45497

Rhynchorthoceras sp.
Species :Rhynchorthoceras sp. Age   :中期オルドビス紀 location:ドイツ/Kassow,Mecklenburg-Vorpommern リンコルソセラス属という名前が紛らわしい(※1)が、オルソセラス目の仲間ではなくリツイテス目の仲間。 ※1=学名を分解して読むとRhynch・orthoceras=リンチ・オルソセラスと読めるため紛らわしい属名 リツイテス目といっても、本属は幼年殻が巻かないタイプ。 直角貝タイプの中でも成長率(※2)が割と高く先端(幼年殻)が僅かに曲を描いているのが特徴。 ※2=成長に伴い殻径が肥大する比率 本属の曲型を描いた幼年殻が巻いてゼンマイ型リツイテスに進化した説がある。 リツイテス目のゼンマイ型は大別して、2つのグループに分かれている(※3)が、世界中のオルドビス紀地層で多産しているリツイテス属と、稀産のホルミセラス属に分化する。 ホルミセラス属をざっくり説明すると少し巻いた後、曲を描かず真っ直ぐに太い竿を形成する属で、細肋はあるがリツイテスの様な太肋は有していない。 更にアンシストロセラス属という極大成長して極太コーン状の竿を有する属を生み出す。 この標本に話しを戻そう。 母岩を地面側に置いた状態で側面から観察すると、殻の細いほう(幼年殻方面)3分の1~4分の1程度あたりから丸みを帯びている様に見えるので、微妙にカーブを描いている様に見えなくも無くも無くもないが、カーブの先端側が母岩にめり込んでおり判定が難しい。 しっかりと観察したいなら母岩を取り除くしかない。 つぎに産地について。 そしてセラーいわく、この標本は砂利工事?にて産出したとのこと。 ドイツ語話者と日本語話者がつたない英語力と発展途上のAI翻訳を活用してコミュニケーションを取っているため、砂利工事?が何を意味するのかは不明。 →後日調査:恐らく地層の事を指しており、ドイツに砂利を含むオルドビス紀地層があるらしく、細かな年代の特定が難しい様子。 最後に標本の評価について。 まず本属の市場流通は滅多にない。 知識に乏しい採掘者やセラーの手に渡り、恐らくオルソセラス類として処理されている可能性もある。 それは直角貝タイプ全般の宿命ともいえる。 そしてこの標本個体においては、住房は欠損しているものの住房側の断面には連室細管が観察できる。 更に表面にカサガイの様な貝類が不着しており、大変おもしろい標本となっている。 この貝類。 まさかッ!? 頭足類の先祖、単板類の仲間だったりして……。 ※画像4=参照"Phylogeny of Middle-Late Ordovician lituitid cephalopods based on cladistic analysis”
https://muuseo.com/Nautil_Works/items/53

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