Sweet Child O' Mine のカバーを巡る旅。
こんにちは、あゆとみです。 https://muuseo.com/SiGNS_Naooo/collection_rooms/11#!page-2 前記事のFor No Oneの時にも触れたことだが、名曲というのは、様々なバージョンで何度聴いても楽しめるものだ。 カバーソングの醍醐味は、オリジナルに違う解釈を与えてくれるところだろう。あまりに原曲のままのアレンジだと、オリジナルを聴けばいいや、となってしまう。それぞれが自分の個性で調理した新しい味付けがあってこそカバーソングは面白くなる。 Sweet Child O' Mineといえば、ロックの殿堂入りを果たした伝説のロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズの大ヒット曲である。さて、今回この曲のカバーソングを調べたところ、気づいたことがある。 女性が圧倒的に多いのだ。 私のリサーチに引っかかった20数曲のカバーソングのうち、8割強が女性アーティストによるものだった。 この曲のなにかが女性アーティストの心の琴線にふれたのだろう。 その理由はなんとなく理解できる気がする。 切ない歌詞がこれまた切ないギターの音色に相まってグイグイ母性に訴えかけてくるからだ。 https://www.youtube.com/watch?v=P-AYAv0IoWI 歌詞(ざっくりとした意訳つき)を一部抜粋してみよう。 She's got a smile that it seems to me Reminds me of childhood memories Where everything was as fresh as the bright blue sky 彼女の微笑みは僕に 小さい頃の記憶を蘇らせてくれる 鮮やかな青い空みたいにすべてが生き生きしていたあの頃を (中略) Her hair reminds me of a warm safe place Where as a child I'd hid And pray for the thunder and the rain To quietly pass me by 彼女の髪はあの場所を思い出させてくれる 小さい僕が隠れて 雷や雨がどうか静かに通り過ぎますようにと お祈りをしていた 温かくてほっとできた居場所を 浮かんでくるのは、ガールフレンドの長い髪の毛に顔を埋めている大人の男性の映像だ。それから彼の幼少期に画面が切り替わり、雷に怯えて、隠れ家にじっとしている男の子の姿が浮かんでくる。これにはたいがいの女性が母性本能をくすぐられることだろう。 これに加えて、いわゆるギャップ萌えの効果もあったと思う。 https://muuseo.com/SiGNS_Naooo/items/516 当時、数々の問題発言や、トラブルを巻き起こして、「悪童」として有名だったアクセル・ローズだが、この歌詞からは悪ぶって見えても隠しきれない彼の純粋さ、繊細さが伝わってくる。 https://muuseo.com/SiGNS_Naooo/items/521#!page-2 それにスラッシュのギターリフがその歌詞の真髄をメロディーにしてこちらに伝えてくる。この人はアクセルよりさらに強面だが、やはり純粋で繊細な面がある人なのだろうと推察できる。 https://muuseo.com/SiGNS_Naooo/collection_rooms/5#!page-2 ピュアなラブソングだった前半だが、後半は急に曲調が変わる。 Where do we go? Where do we go now? 俺たちどこに向かってるんだろう これからどこに のあたりからは、甘い恋の終わりを思わせるようなダークさが漂ってくる。 青空のように澄みきった恋は現実という名前の暗雲に飲み込まれていく。 さて話は戻って、この曲の数あるカバーソングの中で一番有名なのは、シェリル・クロウのバージョンだろうか。 https://www.youtube.com/watch?v=CowwMR1hDPM 彼女のオリジナリティをしっかり出しながら、ストレートにカバーして成功した例だ。聞いてびっくり、「歌、うまっ!」と驚かされた。 彼女は有名だし、曲を聴いたこともあったが、自分のよく知っている曲を歌われると、その歌のうまさが等身大に伝わってくる。 アダム・サンドラー主演でヒットした映画ビッグ・ダディの劇中歌として使われたこの曲で、彼女はのちにグラミー賞も獲得した。 https://www.youtube.com/watch?v=yt_TiEpB6J0 映画の劇中歌としてはまた、Captain Fantastic (邦題:はじまりのうた)でのキーとなる火葬シーンでもこの曲が用いられている。 https://www.youtube.com/watch?v=0PyecG4Tt2k 一方、ジャスミン・トンプソンのバージョンは、少女の神秘性を感じさせる声で、現実世界によく似ているのになんだか色合いが違う、パラレルワールドに連れて行ってくれる。スラッシュのギターリフはピアノで表現されている。 https://www.youtube.com/watch?v=D1dkch8-MOQ 数少ない男性アーティストのカバーでは、Lucky Ukeのウクレレバージョンがハッチャケていて面白い。悲しみも悩みもとりあえず全部笑い飛ばしちゃえ!と思わせるようなひたすら明るいバージョンである。 https://www.youtube.com/watch?v=F2Iu0q8AL34 コロンビアのバンド、Mojito Liteは音担当は男性だが、紅一点の女性シンガーが歌っている。 原曲歌詞の「彼女」は「彼」に置き換えられていて、語り手が女性になっているのが面白い。ただそうなると、ガールフレンドに甘えて長い髪に顔を埋める男性の映像が見えなくなってしまうのがさみしくもある。「彼女の髪」ではなく、「彼の髪に温かくてほっとできる場所を思い出す」となると、映像を思い浮かべた時にちょっとシュールな世界だからである。 ただカリプソだし、歌声もコケティッシュで魅力的だから細かいことは考えないで楽しむことにしよう。 https://www.youtube.com/watch?v=5HyAdjqt3Fo 原曲の前半と後半が毛色が違うことは前に触れたが、そこの部分の仕上げ方にもまた、各アーティストの個性が現れている。 例えば、Taken By Trees、Orleya、Capolinea24のバージョンは、大胆にも後半をすっぱりカットしている。前半の甘い恋の部分だけにフォーカスしているのだ。 それでいて、歌い方でずいぶんと色合いが違って面白い。 Taken By Treesはオルタナ少女の素朴さのある歌声でとても可愛い仕上がりになっている。スラッシュのギターリフはピアノで表現されている。 https://www.youtube.com/watch?v=6dqVDQ-lF4Q Orleyaはつっぱり少女が一人になった時にふと見せる繊細な乙女心という声色。ギターリフはバイオリンに置き換えられてドラマチックな演出になっている。Capolinea24のはセクシーなお姉さんの恋心という印象。 どれも違う魅力がある。 https://www.youtube.com/watch?v=0IUhNT9XEvo https://www.youtube.com/watch?v=_UQDxWCoXEg ここまで様々なカバーソングを巡ってきたが、一番意外性があったカバーは、湯川潮音のバージョンだろう。 それまで彼女に私が抱いていたイメージといえば、近代社会文化とは疎遠な場所にある森の妖精だ。木々のせせらぎ、川の調べ、小鳥のさえずりとか、そういうものにヒントを得て曲作りをしている、俗世感ゼロのアーティストという印象。 そんな彼女がGuns N' Rosesを聴いていたこと自体がまず驚きだった。 だがそのカバーソングの仕上げ方にもまた驚かされた。 想像もつかないような仕上がりになっていたからだ。 https://www.youtube.com/watch?v=tWxhNLGa4SU イメージとしては、はるか遠いところにある、誰も知らない王国にすむ羊飼いの少女が羊を連れて家に帰る帰途にスキップしながら歌を口ずさむ。そんな感じだろうか。 そしてこの不思議な少女は、あのダークな後半部分もものともせずに牧歌調に料理してしまう。いやはや、すごい才能だ。 さて、それぞれのカバーソングの世界を旅して、楽しいひと時を過ごした後には、再びオリジナルが聴きたくなってくるものだ。 旅はおしまい、お家に帰ろう〜 https://www.youtube.com/watch?v=uoaMek9GBVg https://muuseo.com/SiGNS_Naooo/items/570 #Guns_N'_Roses #Sweet_Child_O'_Mine #Axl_Rose #スウィート・チャイルド・オブ・マイン #Sheryl_Crow #シェリルクロウ #Jasmine_Thompson #ジャスミントンプソン #Lucky_Uke #Mojito_Lite #Taken_By_Trees #Orleya #Capolinea_24 #湯川潮音 #Shione_Yukawa