053 鱗の線

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「記憶の紋様」という名前がつく前、紋様が描かれたパネルのたちの名称はただの「紋様パネル」だった。
味気がない…がそもそもこの作品ははじめ大して深く思考されて作られた訳じゃないからだ。
学生の頃、ペンで細密紋様を活かしイラストレーションを描いていたがA4の紙を埋めて完成させるのにも3週間程かかっていた。骨が折れる…もー大変。
もちろん完成したときの充足感は非常に大きな物だったが…。
そこで考えたのが「紋様」を描きそれをスキャンしデータとして取り込み、イラストの決められた領域に落とし込めば楽じゃないか!という邪ま?な考えがあった。つまりパターンブック、データとしての役割を期待して作り始めたものだった。
結果から言うと…私の内なる作り手の声がそれを許さなかったのでこの計画は成功しなかった。

「一つの世界を描く時。そのペンを握る腕、手、指を動かし、一本一本の線を描くことが作品に魂を吹き込むのだ」

-----内なる作り手の声-----

なんてね。そもそもマッチ箱程度の描画領域の紋様サイズでは複製して並べてもすぐにつなぎ目が見えてしまってみっともないからダメ!というのが理由。ずぼらしてはうまくいかないという事だ。

そしてこの文章を書いていて、当時描いていたイラストはデータとして残っているのかと探したところ…ありました。キャプションは「と或る森の行進」だった。

さぁ…新たな森を作るために、いざゆかん。

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