【手彫証券印紙】第三次発行印紙(和紙・目打)の目打孔について(縦目打11sと目打ピンの付け替え?)
初版 2023/12/02 11:46
第三次発行印紙では和紙+目打という面白い組み合わせが使われており、その前の第二次発行(和紙+ルーレット)と、その次の第四次発行(洋紙+目打)の間にある、過渡的な性質を持っています。
この印紙は、最初期使用例が明治八年であることから、明治七年に第二次発行印紙が公告されたすぐ後に作られ始めたと考えられています。この時期は郵便切手では手彫切手の最後期(洋紙の桜切手)に対応していて、製造技術も似通っているものと考えられています。
第三次発行印紙では、切手と同じく穿孔目打が使用されていて、目打として、ピッチ11とピッチ13の2種が組み合わされて、目打11, 13と13x11の三通りの目打が確認されています。
この目打のうち、目打13x11の「11」は縦方向の目打ですが、明らかに目打の孔が小さいものが散見され、分類として目打「11s」と呼称して区別すべきか否か、いまだに判断がついていません。
この目打「11s」は、手彫切手では明治七年後期から使われたものですので、第三次発行印紙で存在している可能性は十分にあると思っています。このことをハッキリさせるには、手彫切手で使われた目打との詳しい比較(例えばピッチと目打孔の実測データの比較)が必要と考えています。
このような状況なのですが、第三次発行五銭茶褐色印紙の手持ちマテリアルを整理している際に、縦目打11・小孔のもので、部分的に目打ピンが大きい孔のものに入れ替えられていると思しき例を見つけました。
マテリアルは、五銭印紙の使用済み2x5ブロック(10枚)で、左側に耳紙がついていて、縦方向の目打が綺麗に2行にわたって観察できるものです。
印紙一枚分のまわりを拡大すると、横目打13に比べて、縦目打11は明らかに目打孔の径が小さいことが見て取れます。
このような例をもとに、先述した「縦目打には11sが存在する」という考えに至っているのですが、このブロックでの目打の様子を詳しく見ると、ところどころで目打孔が大きくなっていて、特に、上から3段目の印紙の横では、連続して3つの目打孔がその上下に比べて大きいところ(下の画像で、赤く囲った部分)があります。
この目打穴、上下が同じ位置のものが横方向に連続しているので、目打の針の抜け具合がたまたま違ったのではなく、目打機器の目打針3本そのものが上下の目打針と異なっているとみなすことができると考えています。
ここから先は想像の世界ではありますが、元の11sの目打針が摩耗した、あるいは損傷してしまったので、他の目打機(通常孔の11や13)の予備針と入れ替えたために、このような目打孔径のヴァリエーションが生じたのではないかと考えています。
この仮説が正しければ、このブロックでは他にも部分的に目打孔が大きくなっているところが散見されるので、目打11sの針がかなりヘタってきた時期に製造されたものであると考えることができるのではないでしょうか。目打11sは手彫切手で明治7年から使われ始め、明治9年に旧小判切手に引き継がれて明治11年まで使用されていたので、このような目打孔の大小が混じっている目打11sがどの切手のどの時期に出現したのかということがわかれば、第三次発行手彫証券印紙の製造時期を推定する上で大きな手がかりになるかも知れません。
いろんなところにいろんなヒントが隠されていて、まさに謎解きの世界を楽しませてくれる手彫証券印紙に感謝です。