【手彫証券印紙】JAPEX2023作品:「手彫証券印紙 第五次発行 一銭黒色」全リーフ公開(完成版)

初版 2023/11/14 20:02

改訂 2023/11/23 19:03

2023/11/3-11/5に東京で開催された第58回全国切手展(JAPEX2023)に「11.その他」部門へ3フレーム作品として出品した、「手彫証券印紙 第五次発行 1線黒色」の全リーフをご紹介いたします。

[2023/11/23 全リーフの説明が完了しました!」

切手展の「作品」について

JAPEXのような競争切手展とは、コレクター達が自分のコレクションを「作品」としてまとめ上げたものを、その切手展の規定に沿った形で応募し、国際的な審査基準にのっとって100点満点で採点が行われ、その点数に応じた賞が授与されるというものです。

スポーツで言えば採点競技のようなものですが、スポーツとの大きな違いは、得点順に1位、2位、3位という順が付けられるのではなく、事前審査ではねられた「選外」以外の全ての入選作について、その得点に応じた賞が与えられるというところです。その点では学生吹奏楽コンクールの銅賞、銀賞、金賞と同じようなイメージです。

さて、「コレクションを『作品』としてまとめ上げる」と書きましたが、実はここが一番難しいところで、私(unechan)も今回が競争展初出品であったために、どのようにして作品を作り上げるべきなのかを理解するのに随分と苦労いたしました。

このため、まずはいろいろな過去の入賞作品を文献(作品集)やネットで見て、全体の流れやメリハリのつけかた、プレゼンテーション(見た目)などのイメージを掴むことから始めた次第です。

また、出品作品は決められた審査基準にのっとって審査/採点されますので、公開されている審査基準のPDFをダウンロードして、何が重要なのか、どのようなことが求められているのかを読み解くことにかなりの時間をかけました。

その結果、主題を決めて、決めた主題に沿ったストーリーを考えて、そのストーリーを語ってくれるキャスト=切手や封筒などを選んで、そのキャスト達にストーリーを物語ってもらう、ということが作品づくりなんだな、とわかりました。加えて、新しい研究成果が含まれていればなお良し、ということもわかってきました。

イメージとしては、映画や舞台を演出するのに近いのかも知れません。また、自分の研究成果を報告書や論文にまとめたり、会議でプレゼンすることにも近いような感じでしょうか。

これらのことを踏まえて、「手彫証券印紙 第五次発行 1線黒色」を主題として、次のようなストーリーを考えてみました。

1)まずはこの印紙が手彫証券印紙全体のなかでどのような位置付けにあるのかを説明する、

2)どのような特徴があるのかを説明する、

3)製造面の三要素である、目打、刷色、用紙について分類して説明する、

4)手彫印紙ならではの定常変種(エラー)を紹介する、

5)面白い使用例を紹介する。

そして、その中に、独自の研究成果として、フィラテリストマガジンに掲載いただいた定常変種(エラー)と、印面紋様の特徴を加えて、さらに、自称珍品として愛でている「表糊エラー」(印紙の表面に誤って裏糊が付けられたもの)貼り証書を入れてアピールする、というストーリー構成です。

これらのストーリーを、リーフと呼ばれる台紙に印紙や証書を貼り込んで説明文を書き加えたものを並べて、展示用フレーム3つ分(1フレームあたり16リーフなので、合計48リーフ)の作品として構成してみました。

全体の流れを俯瞰する上では、フレームごとに作品をみていただいた方がわかりやすいと思いますので、まず、3つのフレームをそれぞれ紹介した後に、各リーフを紹介することといたします。

展示フレームの説明

第1フレーム

この作品の概要を説明する「タイトルページ」から始めて、1銭印紙の変遷(第一次から第五次)、第五次発行印紙の紹介に引き続いて、2つある版のプレートリコンストラクションと未使用例を示し、この印紙の特徴として、ガッター幅、シート四隅にあるコーナーマーク、印面紋様の特徴を展示しています。いわば、この印紙の「自己紹介」のようなイメージです。

そして、製造面の三要素である、「目打」「用紙」「刷色」の各論に突入します。まずは目打のバリエーションを用紙別に並べて、それぞれの目打について、単片と証書貼りを使って紹介していきます。

第2フレーム

目打の紹介の続きののち、用紙と刷色を組み合わせて紹介しています。基本的には2種類の用紙(無地紙とポーラス紙)ごとに、異なる刷色とその特徴を説明していくというスタイルで、その中に、ポーラス紙の再構築シートを2枚入れたり、同じ4枚貼りでも時代が異なることによって印税が変わっているという例を盛り込んでメリハリをつけるように工夫しています。

そして、手彫ならではの強みである、定常変種(エラー)の紹介に入ります。まずは第1版の代表的なエラーの一覧を示して、ここのエラーについて、単片と証書貼りを紹介しています。

第3フレーム(最終フレーム)

第1版のエラー印紙の紹介に続いて、第2版の定常変種(エラー)です。さらに、このLab ジャーナルでもご紹介している、細かい定常変種(版欠陥)の代表例と、各版の特徴図を示して、オリジナルな研究(スタディ)をアピールしています。

次に使用例として、多数貼りなどなるべく面白いものをいくつか紹介しています。ここでの主役は(自称珍品の)表糊エラー貼り証書。古屋厚一氏が3通を発見してから数十年ぶりに報告される第四例目です。

最後に、手彫証券印紙蒐集と研究のパイオニアであった古屋厚一氏へのトリビュートとして、古屋コレクションから縁あって私のコレクションに継承された未使用縦5枚ストリップを、そのストリップが紹介されている古屋さんの研究論文のコピーと共に展示して、作品の締めくくりとしてみました。

各リーフのご紹介

以下、各リーフをご紹介いたします(リーフの詳しい説明はこれから時間をかけて追記いたします)。

第1リーフ

最初のリーフは「タイトルリーフ」と呼ばれ、ここで、目的、全体説明、展開のプラン、リーフ構成、注目して欲しいマテリアル、オリジナルの成果を説明します。このタイトルリーフどおりの構成や展開になっているかどうかということも、審査の上でのチェックポイントとなっています。作品の要です。

第2リーフ

第2リーフでは、プロローグとして、手彫証券印紙1銭黒色の変遷を、第一次発行、第三次発行、第四次発行、そして今回の主役の第五次発行と、それぞれ3枚ずつを並べてみました。ここで単に3枚ずつでは面白くないので、できるだけ未使用を入れて(第四次は持っていないので断念)、他はエラー印紙や複合目打(縦と横とで目打が異なっている変種)、面白い消印などを散りばめて、少し捻りを入れてみました。

第3リーフ

第3リーフでは、第五次発行の6種類の額面について、版ごとの代表な単片を展示してみました。こちらも普通の単片を貼るだけでは愛想が無いので、1銭黒色は同じ朱消印が同じ場所にある2枚を、10銭青は刷色が違う2枚を選んでみました。25銭黄色については、元・古屋コレクションであった秘蔵のポーラス紙をさりげなく貼ってみました(気づいてくれたかな)。また、1円桃色については、ミュージアムでも紹介しているエラー印紙(右飾り落ち)を貼っています。

そして、今回の主役である第五次発行1銭黒色がこれまでどのように分類されてきたのかということを、代表的な文献(カタログや研究報告など)での取り扱われ方を一覧にまとめてみました。

ここまでで第五次発行1銭黒色の自己紹介が済んだことになります。

第4リーフ

第4リーフでは、一つ前の第四次発行1銭黒色と、第五次発行1銭黒色が仲良く並んで貼られた証書を「同時使用例」と題して紹介しています。1銭印紙が二枚貼られただけの何の変哲もない証書ですが、なかなかいい仕事をしてくれたと感謝しています(^^)。

また、この証書はどのような規則に従っていくらの印紙税が必要であったのかということを説明しています。これは、国際基準である国際郵趣協会(FIP)の印紙部門の規則と審査基準に則ったもので、郵便切手でいえば、そのカバー(切手が貼られた封筒)にその切手がなぜ貼られているのかを郵便料金一覧を使って説明する(「どこそこ宛の書留便だから10銭」という感じ)のと同じイメージです。

先日、事務局から審査評が戻ってきたのですが、その中で、「また、当時の税法に基づいて印紙貼り証書等の印税の根拠を示されたことも、従来の印紙の作品と一線を画していました。」とあり、この取り組みを高く評価いただいたことがわかりました!

第5+6リーフ、第7+8リーフ

ここからはA3サイズの横長のダブルリーフ(通常のリーフの倍の大きさ)を2つ使って(リーフ番号5+6と7+8)、このLabジャーナルやミュージアムでもご紹介したプレートリコンストラクションの成果をご披露です。

無闇矢鱈にテキトーな印紙を50枚貼ってるんじゃありませんよ、ということを証明するために、プレートリコンストラクションに使ったパーツ(ペアやストリップ)がどのように連結しているのかという構造図をあわせて示しています。

このリコンストラクション、審査員の方々をはじめ会場でご覧いただいた皆さんに大好評で、2年ちょっとかけて作り上げた甲斐があったと嬉しかったです。

第9リーフ

続く第9リーフは未使用の紹介です。無地紙とポーラス紙の単片と、ポーラス紙の縦ペアと横ペアを並べてみました。本当は2x2のブロックなどがあったら素敵なのですが、これがいまのところの限界です。

第10リーフ

第10リーフでは、第四次発行と第五次発行の一番の違いであるガッター幅について、2x2のブロック2つと、第四次発行1銭黒色と第五次発行1銭黒色がうまいこと貼られた証書を使って説明しています。こちらは作品提出直前まで縦ペア2つでリーフを作っていたのですが、ラッキーなことに2x2ブロックを2つ入手することができて、リーフがかっこよくなりました。

証書の方はガッター幅の説明のために存在するといってもいいようなもので、こちらもいい役者さんがいい仕事をしてくれたと感謝しています。

第11リーフ

第11リーフでは、シートの四隅の余白に印刷されているコーナーマークについて説明展示を行っています。第五次発行では、シートの四隅の耳紙(余白)部分に十文字型の印が印刷されていて、シートの裁断の目安となる、いわゆる「トンボ」の役目を果たしていたものと考えられています。このコーナーマークは、少なくとも第三次発行印紙では点トンボが用いられていて、印刷技術が変わったことを示す証拠であるとみなされています。面白いことに手彫切手でも同じように点トンボ→十字トンボという変化があって、切手と印紙との関連を考察する上での一つの手がかりとなると考えられています。

ちなみにこの証書は残念ながら使用年月日がわからないのですが、金高37円の土地売買証書に対して印税3銭なので、印紙税が改定される明治17年7月よりも前のものであるとわかることを補註で説明しています。

第12リーフ

第12リーフでは、第五次発行1銭黒色に特有の文様の特徴について説明しています。スタンペディア社から発行されているフィラテリストマガジンNo.39に8ページの研究報告が掲載された、オリジナルスタディの成果で、印面内側(青海波文様の枠の内側)の、左下隅にある隅飾り文様の先端にある「毛」("hair")の数が一例を除いて全て8本であることと、隅飾り文様の右側にある雲型文様の小ループが必ず欠落していることを説明しています。この特徴は、偶然にそうなったものというにはあまりに規則的で、何等かの意図を持って印刻されたものと考えているところです。これについては手彫切手の専門家にいろいろと教えてもらわないといけないと考えています。

第13リーフ

第13リーフから製造面の各論で、まずは目打の一覧を単片で説明しています。

用紙毎にどのような目打が使われているかを整理していますが、こうやって並べてみると、無地紙の灰茶色(grayish brown)のみにしか見られない目打があり、特異な性質を持っていることが改めてよくわかりました。

基本目打に加えて、コレクションにある複合目打も全て展示していますが、残念ならが古屋コレクションや長谷川コレクションに含まれている目打10x13や、3辺が目打10で一辺のみが目打13という珍品は入っていません。こればかりはロットに混じっているのを掘り出すしかないと思っており、出会いを気長に待つことといたします。

第14リーフ

第14リーフは、もっとも普通に見られる目打10を取り上げています。目打が見やすいように、少し拘って縦2枚ペアを使ってみましたが、黒のバックとも相まってわかりやすく展示できていると自画自賛しています。

ポーラス紙の目打10は、実測ピッチで9から10の範囲のものがあって、古屋厚一氏の初期の文献では9,91/2、10という区別がなされているのですが、小判切手の収集においては、これらを区別することなく、目打10の変動範囲であるという整理がされているので、それに従った旨を補注で説明しています。目打孔が明らかに大きいものも展示しています。

第15リーフ

第15リーフでは、無地紙・灰茶色にしか見られない目打11について、横ペアと4枚貼り証書を使って説明しています。私の観察ではこの刷色の印紙は明治13年、14年に集中して使われているのですが、独特のインクの色合いと目打(11、12x11)がなぜその時期に集中して使われているのかということについての明確な理由付けはまだわかっていません。こちらも切手、特に小判切手の製造の歴史と関連させた調査研究が必要であると思っています。

第16リーフ

第16リーフでは、ポーラス紙に固有な目打11L(大穴)を展示しています。この目打は小判切手でも見られるもので、派手なイメージがあって小判切手でも人気者です。私も大好きな目打なのですが、証書貼りのまともな使用例がこの単片貼りだけですので、ぜひとも多数枚貼りで置き換えたく思っているリーフです。

第17リーフ

ここから第2フレームです。

第17リーフでは、目打13の複数枚貼り使用例を2つ示しています。明治14年付の無地紙、やや濃い目の灰茶色の3枚貼りと、明治17年付けのポーラス紙、濃黒色の4枚貼りを使って、用紙と刷色のヴァラエティを表現しました。

この「目打13」ですが、小判切手でいうところの「目打12 1/2」と称するのが正解であるように思っていて、補註として、実測ピッチの範囲を示しています。第三次発行と第四次発行の「目打13」との関係や、小判切手の専門家の意見を踏まえて、できる限り定量的に分析する必要があると考えていますが、この作品では、従前の分類に従って目打13としています。

第18リーフ

第18リーフは目打8 1/2で、目打がわかりやすいように、縦ペアと、使用例として3枚貼り証書を示しています。また、補註として、この目打が最後期に出現することと、小判切手での使用時期との関係に関する考察を述べています。

以上で目打各論を終えて、次から用紙と刷色のヴァラエティの紹介に移ります。

第19リーフ

第19リーフでは、用紙毎に、代表的な刷色のヴァリエーションを示しています。

この印紙では、無地紙は大きく分けて灰茶色と黒色、ポーラス紙は黒色で、それぞれの刷色で淡い濃いがあるので、単片を使って、左→右の順で刷色が淡い例から濃い例を並べてみました。刷色はハッキリとした分け目が難しくて、系統的な仕分けができていません。時代とともに変化していればいいのですが、まだデータ不足です。

また、ポーラス紙の濃黒色には、ポーラス紙の材質(?)の違いによって、印刷が比較的明瞭なもの(「インプレッション明瞭」)と、全体的にボヤけたような、滲み気味のもの(「インプレッション不明瞭」)の2種類を並べています。この2種類、同じポーラス紙でも用紙の構造や特性が異なっていて、今後の研究対象として注目しているのですが、この作品ではそこまで踏み込んだ議論はできませんでした。

第20リーフ

第20リーフでは、基本的な用紙の区別として、無地紙とポーラス紙を並べてみました。構造を含めた見た目の違いを知るには、裏面を見るのが一番なので、縦ペア2つを裏返して展示しています。また、ポーラス紙については拡大図を使って網目構造の説明を行なっています。

無地紙とポーラス紙では表面のインプレッションも違うので、これを2組の縦ペアで展示しています。ここでは少し拘って、同一ポジションの縦ペア同士を並べてみました。せっかくなので少し遊びごごろを加えた次第です。

第21リーフ

第21リーフでは、無地紙とポーラス紙が混貼された明治16年づけの証書を展示しています。この証書、用紙の違いが見た目でハッキリとしていて面白いなぁと思って買い求めたものなので、証書そのものとしてはごくありふれた3枚貼りの借用書で、このリーフ1枚だけでは面白さに欠けるものの、今回の作品の中ではなかなかいい役割を果たしてくれたと思っています。作品作りの面白いところです。

第22リーフ

第22リーフは私の大好きな無地紙/灰茶色で、いろいろと迷ったあげく、3枚貼られた明治13年付の証書1枚のみとしてみました。この証書、流れるような達筆で書かれているのと、明治13年6月という比較的初期のもので、かつ、印紙と消印の状態も上々という、お気に入りの一枚です。3枚貼り証書はいくらでもあるのですが、こちらも作品全体の中でいい役割を果たしてくれたと思っています。

第23リーフ

第23リーフでは、無地紙/黒色の刷色のヴァラエティとして、やや薄めの刷色の7枚貼り証書と、濃い黒色の10枚貼り証書を並べています。少し欲張りすぎて窮屈な感じになっているかも知れないので、今後、もっとすっきりとした使用例が手に入れば入れ替えたくおもっています。

第24リーフ

第24リーフでは「茶色無地紙」をとりあげて、単片と一枚貼り領収書(金銭受取書)を示しています。

この紙は未だにその正体がよく理解できていません。別Lab ログでも紹介しているように、裏糊の変色や台紙の変色によってこんな色合いになるとは考えにくいのと、紙そのものの特性が普通の無地紙とは異なっているように思えるのです。このあたりの疑問点などを含めて、補註でこの紙の説明を行なっています。

第25リーフ

第25リーフからポーラス紙の展示です。なんといってもたくさんあることと、ポーラス紙独特の雰囲気を知ってもらうために、再構築シートを2枚並べることとしました。第25リーフはPlate I(第1版)で、刷色の薄い濃いを取り混ぜて、少しこだわって朱色の消印で揃えてみたシートです。

第26リーフ

第26リーフもポーラス紙の再構築シートで、こちらはPlate II(第2版)です。

印紙とはいえ、手彫は手彫。再構築シートを2つ並べたのは好評でした。

第27リーフ

第27リーフはポーラス紙の刷色(色調)の違いを4枚貼り証書で表現してみました。

どの証書を使うかいろいろ悩んだあげく、同じ4枚貼りで淡黒と濃黒で、しかも、同じ印税4銭でも明治17年7月の印税改正前と後で金高が違っているというおあつらえ向きの2通を登場させた次第です。コレクションではそれぞれを別々のリーフに貼っていたのですが、こうやって作品を作ってみて、いろんな遊び方があることに気づくことができたのは大きな収穫であったと思っています。

第28リーフ

第28リーフでは、これぞポーラス紙・濃黒色と言わんばかりのお気に入りの多数貼り証書を展示しています。貼られている印紙の数と貼られている場所の関係で90度回転させて横向きになってしまってますが、迫力あるリーフになったと思っています。

用紙と刷色のヴァラエティはこのリーフまでで、次から定常変種になります

第29リーフ

第29リーフはPlate I(第1版)で見られる定常変種の代表例を単片で展示しています。これらの定常変種について、さらに代表的なものについては以降のリーフで単片と証書貼りを紹介するという構成を取っています。

第30リーフ

第30リーフはPlate I / Pos. 7「菊花紋第11番重花弁落」で、無地紙とポーラス紙の単片と、無地紙1枚貼りの証書を展示しています。

ちなみにこのエラーは(次に示すPos.20と共に)これまで「小花弁落」としていたのですが、手彫切手の同様のエラーの呼び方にあわせて「重花弁落」としています。

第31リーフ

第31リーフはPlate I / Pos. 20「菊花紋第8番重花弁落」で、単片3枚と、ポーラス紙貼りの証書を展示しています。本当はエラー印紙一枚貼り証書がいいのですが、コンディションの良い例がなくて、エラー印紙を含む2枚貼りを使っています。要改善リーフの一枚ですね。

第32リーフ

続いて第32リーフでもPlate I / Pos. 20「菊花紋第8番重花弁落」エラー印紙貼り証書を紹介しています。こちらはPos.10//50の縦5枚ストリップと単片が貼られたものでs、エラー印紙が5枚ストリップの上から2枚目にあることを強調しています。

以上で第2フレームが終わりで、次の第33リーフから最終フレームである第3フレームに入ります。

第33リーフ

第33リーフはPlate I / Pos.42の小ループ落ちエラーで、結構微妙な軽微なエラーなので、多数貼り証書で迫力を持たせるようにしています。この証書、当時の税法に当てはめても1銭多く貼られていると思われる面白い例です。

第34リーフ

第34リーフはPlate I/Pos.47の定常変種で、6枚ブロックと1枚貼り証書です。これまでの数リーフの構成が同じようなものだったので、ここでは6枚貼りで若干ですがメリハリをつけてみました。

第35リーフ

第35リーフからPlate II(第2版)の定常変種です。まずはこのリーフで代表的な定常変種を単片で示しています。

第36リーフ

第36リーフは有名なPlate II / Pos. 8「左額面"銭”タスキ落」で、単片2枚とエラー印紙を含む縦三枚ストリップが貼られた証書を示しています。単片で刷色のヴァラエティまで表現できたらいいのですが、残念ながら力及ばずでした。これからじっくりと充実させないといけないリーフです。

第37リーフ

第37リーフはPlate II / Pos. 14の定常変種で、無地紙とポーラス紙で同一ポジション(Pos. 4/14)の縦ペアが揃いました。証書も単片が貼られたものです。実はこのポジションはこの証書が最初に手に入って、単片がなかなか手に入らなかったという、思い出のあるポジションなのです。確率的には1/100で出会えるはずなのに、縁があったりなかったりと面白いです。

第38リーフ

第38リーフはPlate II / Pos.24の定常変種です。このポジションには定常変種(版欠陥)ありとなしの2種類があって、実用版の数や更新頻度を探る上で貴重な情報をもたらしてくれるものと期待しています。幸にして単片で版欠陥ありとなしが揃ったのと、証書貼りにも出会えたので個人的には充実したリーフと思っています。

第39リーフ

第39リーフもPlate II / Pos.24の続きです。このポジションの上下(Pos.14とPos. 34)には目立つ定常変種があるので、同じポジションの縦四枚ストリップで、Pos.24だけ版欠陥ありとなしとを並べてみました。この印紙ならではの遊び方として、こちらも気に入っているリーフです。

第40リーフ

第40リーフはPlate II / Pos.42の定常変種です。この定常変種は、私がこの第五次発行1銭黒色のプレートリコンストラクションに着手したごく初期に見つけたもので、こういう小さな定常変種の情報がプレーティングに大いに役立つのだなということを気づかせてくれた、思い出のあるポジションです。面白いことにこのポジションの印紙には縁があって、特に証書貼りでは定常変種の中でも一番たくさん持っているかも知れません。これも縁ですね。

第41リーフ

第41リーフでは、Plate Iの定常変種のごくごく細かいもの(いわゆるFly Speck)の代表的なものを並べて、定常変種に基づく特徴図(シートのポジション毎に定常変種を図示したもの)を付けています。

第42リーフ

第42リーフは前と同じくPlate IIの定常変種のごくごく細かいもの(いわゆるFly Speck)の代表的なものと、定常変種に基づく特徴図です。

このリーフで定常変種を終えて、使用例に入ります。

第43リーフ

第43リーフは13枚貼りの証書で、Plate Iの2つの定常変種を含む派手な使用例です。

この証書、金高と貼付されている印紙との関係が少しややこしくて、土地売り渡し代金の115円何某と、追加の25円何某とを別の金高とみなして、前者向けに11枚、後者向けに2枚、合計13枚を貼っているという面白い例です。おかげで印税の説明をたくさん書くことができました。

第44リーフ

第44リーフはPlate II / Pos. 8を含む16枚貼りの証書で、なかなか派手でゲテモノっぽい、お気に入りの証書です。この証書もプレートリコンストラクションに取り組む上で貴重な情報源として役に立ってくれました。展示作品として日の目を見せてあげることができて恩返しができた感じです。

第45+46リーフ

このリーフは2枚分をつかったダブルリーフで、受取帳簿に1銭黒印紙が四ヶ月ごとの返済時に1枚ずつ貼られた使用例です。同じ場所で、明治12年から明治17年までの間、どのような1銭黒印紙が使われていたかということを知らせてくれる、印紙ならではの使用例で、気に入っているマテリアルです。面白いことに、第三次発行1銭黒がしばらく使われていたあとは、第四次発行を飛ばして第五次発行に移行しています。

第47リーフ

第47リーフは表糊エラー印紙が2枚と、通常の印紙が1枚貼られた明治13年の証書です。

この作品の中でももっとも希少度の高いマテリアルで、これまで記録されているものは古屋厚一さんが発見して愛蔵されておられた3例のみ。この3例は現在はトップコレクターの長谷川純さんのコレクションに収まっているので、私のこの証書は第4例目になります。

第48リーフ(最終リーフ)

最終リーフとなる第48リーフは、今回の作品のエピローグとして、「古屋厚一氏へのトリビュート」と題し、古屋厚一コレクションにあった未使用縦5枚ストリップを展示しました。このマテリアルは、古屋さんが2004年にガッター幅の違いを説明した論文にて図示されたもので、縁あって随分と前に私の手元にやってきてくれました。実はこのマテリアルが論文で図示されていたのを知ったのはごく最近で、あらためてその重要性に気づいた次第です。手彫証券印紙の収集と研究の先駆者であり、さまざまな知見を集大成してくださった古屋厚一さんに、このような作品を作ることができた御礼という気持ちを込めたリーフで締めくくらせていただきました。

終わりに

以上、JAPEX2023出展作品全リーフをご紹介いたしました。説明中にも書いたようにこれから時間をかけて充実させないといけないリーフもたくさんありますが、コレクションの整理と理解を深める上で、この作品をまとめたことは貴重な経験となったと思っています。

この3フレーム作品をもとにして、来年は4フレーム作品で再び競争展にチャレンジしようと考えていますので、どうぞお楽しみに!

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unechan

子供の頃から細々と続けてきた切手収集。長年のブランクを経て10年ほど前から再開し、日本切手クラシカル、ドイツインフラなどを収集。併せて手彫証券印紙の収集を始め、現在はこちらがコレクションのメインになっています。郵趣に加えて音楽(ジャズ)、釣り、鉱石収集、昆虫採集(蛾類)など趣味多数にて家族には迷惑をかけております…

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