【手彫証券印紙】第5次発行1銭黒:色調(シェード)について
初版 2022/11/01 20:54
改訂 2022/11/01 23:36
第5次発行1銭黒印紙は、比較的単調な印紙のように思われがちですが、数を見ていくと、様々な色調(シェード)があることがわかります。色調の判断は主観的な要素が多々含まれるため、絶対的なものはないと考えていますが、それでも明らかに異なる色調のものが確認できるのです。
最も多く見られるのは、濃い黒色で、ボッサリとしたポーラス紙に印刷されたものは細かい文様の輪郭もボケたような不鮮明な仕上がりになっています。対照的に、無地紙に印刷されたものは文様の細かい部分までが細い鮮明な線で印刷されており、不鮮明なポーラス紙のものとは全く違った印象を受けます。さらに、長谷川(2022)で紹介されたbrown wove paper(茶色無地紙)と呼ばれるものでは、無地紙と同様に黒色でくっきりとした鮮明な印刷が施されています。
濃い黒色の対極にあるものとして、少し濃い灰色や、若干茶色を帯びた灰色のものもしばしば見受けられます。こちらは無地紙に見られるものですが、茶色を帯びない灰色と、茶色味を帯びた灰色とは違った色調であると考えて、出現時期や目打との関連での分類を試みるべく、証書貼りのものを見つけたら可能な限り入手するように心がけています。
さらに、黒色でもさほど濃さは感じられなくで、黒味が強い灰色というべきものも無地紙とポーラス紙の両方で見受けられますが、こちらは黒色の変化範囲内かも知れませんし、ポーラス紙については紙質が若干異なるものがあり、インクの乗りが異なっているために色調に違いが出ているのかも知れません。
「駄物」と呼ばれている第5次1銭黒印紙。色調一つとって見てもまだまだ確認すべきことは多く、奥深い魅力を感じています。