【手彫証券印紙】第5次発行1銭黒の印面紋様特徴:研究報告が「フィラテリストマガジン」第39号に掲載されました

初版 2023/08/30 20:50

改訂 2023/10/01 10:11

ここ数年集中的に取り組んでいる第5次発行1銭黒色印紙。

この印紙に固有の印面紋様の特徴を分析した研究報告がスタンペディア社発行の「フィラテリストマガジン」第39号に掲載されました。

本日付発行の冊子版に先立ってWeb版はすでに公開されていますので、スタンペディア会員の方はすでにご覧になられたかもしれません。少しばかりですが、代表的なページをご紹介いたします。

この報告では、第五次発行1銭黒印紙の印面紋様のうち、四隅にある飾りの先端部の「毛」の本数の規則性と、八個ある雲型飾りの微妙な非対称性について考察したもので、ほんとに重箱の隅をつつくような内容ではありますが、わざわざ誌面を9頁も割いて掲載いただきました。ありがたいことです。

この紋様の特徴ですが、手元の研究ノートを見返したところ2012年の10月頃に気づいたもので、その後、このLab ログでもご紹介したように第五次発行1銭黒のプレートリコンストラクションが完成し、2つの版で100個あるポジション全てが確定したことを受け、ポジション毎の特徴の精査と統計的な分析が可能となり、およそ11年の年月をかけて仮説を証明できてようやく論文(?)として取りまとめることができた、という次第です。

四隅の隅飾りの「毛」の本数を分析したこの二枚のグラフを完成させるのに11年かかった、ということですね。ちなみにこのグラフからは、紋様の最大の特徴である「SW位置(左下)の隅飾りの毛は(一例を除いて)8本」ということに加えて、PlateIとPlateIIとの傾向が一致していることから、「Plate IとPlate IIは同じ彫師の手によるものである」ということを客観的に示していると考えています。

少しかたぐるしい話ではありますが、この二つの版では、紋様、特に漢字の形状の特徴に殆ど差異が無いのですが、彫りの特徴の一致度というやや主観的な尺度に加えて、飾り毛の本数の分布の一致度という、ある程度の定量性を持った尺度を合わせるというアプローチで、より説得力のある理由付けができたのではないかと考えています。

当時の研究ノートの画像ですが、今のように第4次発行(通常版)と第5次発行(電胎版)とが分けられておらず、ノートでも"4th Issue"としてメモされていますね。これは手元にあった洋紙目打1銭黒色単片を五十枚程度スキャンして、その画像から"hair"の数を数えてメモしたものです。この時点で、「ん、4番目(=SW位置)は8本でほとんどブレがない???」と閃いた記憶があります。

2012年10月6日のノートには、雲型飾りの小ループの欠損が後期印刷、ポーラス紙に見られることから、クラッチ版=第XV版と第XVI版(=第5次発行の第I版と第II版)との関係、そして、隅飾りの「毛」の本数との相関についてのアイディアが書かれていました。

この分析結果については、このLabログでも稿を改めて詳しくご紹介させていただくことといたします。

まだまだ分からないことの多い手彫証券印紙。収集と研究の対象としては抜群の面白さと奥深さが秘められています!

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unechan

子供の頃から細々と続けてきた切手収集。長年のブランクを経て10年ほど前から再開し、日本切手クラシカル、ドイツインフラなどを収集。併せて手彫証券印紙の収集を始め、現在はこちらがコレクションのメインになっています。郵趣に加えて音楽(ジャズ)、釣り、鉱石収集、昆虫採集(蛾類)など趣味多数にて家族には迷惑をかけております…

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