【手彫証券印紙】第三次発行印紙(和紙、目打)について
初版 2023/06/24 17:35
改訂 2023/06/24 17:35
手彫証券印紙は第一次から第五次までの五つの区分(「第何次発行」と呼ばれます)に分類されていますが、使われている用紙の点からは、大きく分けて初期から中期の和紙と、後期の洋紙との2つのグループに分けることができます。また、目打の点からも、大きく分けて初期のルーレット目打と、中期から後期の(普通)目打に分けることができます。
さて、発行次ごとの用紙と目打との組み合わせをみると、
第一次:和紙 + ルーレット、
第二次:和紙 + ルーレット、
第三次:和紙 + 目打、
第四次:洋紙 + 目打、
第五次:洋紙 + 目打、
となっており、「和紙+ルーレット」→「洋紙+目打」の間に、特異な組み合わせとして第三次発行の「和紙+目打」が挟まっているという、面白い状態になっています。
この用紙と目打の過渡的・遷移的な組み合わせが、第三次発行手彫証券印紙の面白さであり、難しさであると思っています。
和紙時代の原版は、印紙印面の間のマージン(ガッター)が約2㎜と狭く、実質的な幅がほとんどないルーレット目打ですらオフセンターのものが多く見受けられるほどです。第三次発行印紙では、和紙時代の原版をも流用していて、狭いガッターに(無理やり)穿孔目打を施したものですから、ウェルセンターのものはごく少なく、また、和紙の性質上、切り離しにくいこともあって、きれいな状態の単片にはなかなか出会えません。これが一つ目の難しさです。
この時代は、切手と同様に印紙の印刷技術も日々進歩していたようで、手彫切手でみられる和紙→洋紙の転換、機械式目打器の導入等が急速に行われていたと考えられます。このため、第三次発行印紙が実際に製造され使用されていた期間はごく短いものと考えられており、恐らく明治9年から明治12年位までの間の、ごく限られた期間であった可能性が示唆されています。このため、他の発行次の印紙に比べると使用例が少なく、これが二つ目の難しさであると考えています。
私のコレクションでも第三次発行印紙のマテリアルは種別、数、質ともに貧弱であったところ、縁があって専門コレクションを譲り受けることができ、飛躍的にコレクションが充実した次第です。ミュージアムでも随時ご紹介しているように、カタログに収録されている個体そのものを含む古屋コレクション旧蔵品の数々をも継承できたので、このコレクションを土台として、マテリアルを追加すると共に製造面(版別)のスタディを深めていき、いずれは競争展への出展にチャレンジしてみたく思っています。
第三次発行印紙についてはミュージアムでアイテムを随時ご紹介するとともに、このLabノートにおいても額面毎の印紙の紹介を(ゆっくりとですが)進めることといたします。ぜひ気長にお待ちいただければ幸いです。
第三次発行10銭青 第10版 Perf.13 単片貼証書(明治14年)
(古屋厚一著「手彫証券印紙」, たんぶるぽすと増刊No.23(2003)p.96に収録されている古屋氏旧蔵品)