【手彫証券印紙】第五次発行5銭褐色:印紙の紹介、版の見分けかたと基本目打 [改訂1]
初版 2022/12/16 22:39
改訂 2023/09/30 21:08
このLabログでは第五次発行5銭褐色印紙をご紹介いたします。
[2023/9/30: 目打12を追加しました]
第五次発行5銭褐色印紙について:特徴、版の見分け方
この印紙は、いわゆる電胎法を用いて原版から印刷用の実用版を複数作成して印刷されたもので、手彫証券印紙の中では最も後期に発行、使用されたものです。
電胎法を用いて製造された印紙の特徴の一つとして、印紙同士の間隔(ガッター)が通常版よりも広いことが挙げられますが、なぜかこの5銭印紙にはこれが通用せず、通常版(第四次発行)・電胎版(第五次発行)共に幅が約2mmの狭幅になっています。このせいで、5銭印紙に限っては電胎版でもウエルセンターのものが少なく、目打が印面にまで食い込んでしまっているものをよく見かけます。
第五次発行5銭褐色印紙には版は1つだけですが、ガッター幅で第四次発行との区別がつかないため、印面の特徴で第五次発行であることを確認する必要があります。幸いなことに第五次発行5銭にはわかりやすい特徴があって、
1) 全体的に文字の印象が弱々しい(→明確なセリフや強い跳ね、止めなどがない)、
2) 「贋」の脚2本が短く、点に近い、
3) 青海波文様の、太い外波と細い内波との間隔が広くてはっきりしている、
4) 「處」のタレが短い、
の4つのポイントを確認することで、少し慣れると容易に区別することができます。ちなみに私はまず条件2)の「贋」の脚に注目して、点に近いような短さであれば残りの条件と照らし合わせて確認する、という流れで判別しています。
第五次発行5銭褐色印紙:基本目打
[2023/9/30改定:Perf.12を追記し、関連記述を改定しました]
この印紙ではPerf. 8 1/2, 10, 11, 12 (new!) の4種類を確認しており、後述するPerf.13には残念ながらまだ出会えていません。
Perf.8 1/2はいずれの文献にも記載されておりませんが、第五次発行1銭黒と10銭青の後期に出現しているので、5銭褐色で存在しているのも不思議ではないと思っています。
Perf.10はこの印紙でも多いようで、第五次発行の印紙では主力として使われていたことが伺えます。
Perf.11については、展示したものを含めて手持ちのものは第五次発行1銭黒や10銭青でも見られる、目打穴の大きい"11L"に近いと考えて整理しています。第五次発行1銭黒や10銭青では(通常の)Perf.11はごく限られた用紙や刷色のものに限られていることから、この5銭印紙でもPerf.11は難しいのでしょうか。
Perf.12については、長谷川純氏の大著「手彫証券印紙」(長谷川,2022)で「10, 11, 12でコンパウンドは未発見」とあったことをうけて、1年あまり探していたところ、雑多な証書のロットに紛れていた3枚貼証書で巡り合うことができました!第五次発行5銭のマルチプルをほとんど所有していないので買い求めたのですが、届いて詳しく眺めてビックリ、目打12でした。こういうものは必死で探しているうちは出会えずに、ふとしたきっかけで舞い降りてくるものなのですね。切手(印紙)の神様の悪戯でしょうか(笑)。
ちなみに同時期に発行された第五次発行1銭黒にはPerf.12はない(perf. 12x11のコンパウンドとしてのみ確認されています)ことを考えると、この印紙にのみPerf.12が存在するのが興味深いところです。ガッター幅(狭幅)もそうですが、何か5銭だけ違った経緯があるように思えてなりません。第二次発行、第三次発行印紙との関連も含めていろいろ調べるべき事柄が多くて楽しめそうです。
なお、長谷川純氏のカタログ(長谷川,2016)に掲載されているPerf. 13(ポーラス紙)にはまだ出会えていません。前述したとおり、長谷川(2022)ではPerf.13が落とされていることから、もしかしたら第4次発行のPerf. 13を見間違えたのかも知れません。でも、他の額面を考えると5銭だけ無いとは不自然なので、印紙の神様がいたずらしてくれるまでしばらく気にかけずにいようと思います。