【手彫証券印紙】第一次発行1銭:印面変種(ヴァラエティー、エラー)
初版 2022/11/26 16:33
改訂 2023/02/23 10:13
第一次発行1銭印紙は印面変種の宝庫です。長期間にわたって複数の版が作成されたこともあり、様々な変種が存在します。
カタログには漢字の一画が抜け落ちているものや、主要な飾りが落ちている派手なエラーが収録されていますが、ここではもっと細かいものも含めて、私が手持ちのマテリアルで確認できた様々な印面変種をご紹介いたします。
【2022/12/4 波落ちエラーを1種類追加しました】
【2022/12/11 上側雲形紋様二つ軽彫エラー印紙に「處」第1、2画軽彫エラーがあることに気づいて、説明を改訂しました】
【2022/12/29 文様落ちエラーを1種類追加しました】
【2023/1/13 文様落ちエラー(下左雲形紋様不完全)を1種類追加しました】
【2023/2/23 波落ちエラーを1種類追加しました】
漢字のエラー
右「銭」点落ち
漢字エラーの代表例である「銭」の点落ちで、右側の「銭」にエラーがあります。カタログにも収録されています。
左「銭」点落ち
こちらは左の「銭」のエラー。カタログにも収録されています。
同じエラーですが、印紙が異なります。
「處」第二画落ち
左警告文の二文字目、「處」の第二画の横棒が落ちているエラーです。目立つエラーですがカタログには未収録です。
左銭軽彫
一見すると左側の「銭」の点やたすきが何箇所も欠けているように思われますが、ごく薄く印刷されているので、いわゆる軽彫として整理しています。
上下額面文字エラー
上額面「N」斜め線落ち
"S E N"がまるで"S E I I"のようになっている派手なエラーです。こちらは長谷川(2016)カタログに収録されているもののうち、左側に示されている印紙と同一ポジションです。
こちらは同じエラーですが上のものとは違う印紙で、長谷川(2016)カタログに収録されているもののうち、右側に示されている印紙と同一ポジションです。証書に貼られているうちの1枚なので大事にしています。
飾り落ち、誤彫
左側下雲形文様一つ落ち+下額面右波落ち
印面内側の枠、上下左右にそれぞれ彫られている雲形文様のうち、左枠の下側のものが欠落している大きなエラーです。また、下額面の右側で青海波紋様の波が欠落しています。派手なエラーですが、カタログには未収録です。
上側雲形文様二つ軽彫&「處」第1、2画軽彫
印面内側の上枠にあるべき2つの雲形文様が消えています。よく見ると、ごくごく薄い線が認められるので、いわゆる軽彫として整理しています。
[2022/12/11追記]さらに、左警告文の「處」の第1、2画目が「”」のようになっています。その他の漢字や文様の印刷の状態から見ても印刷上の擦れとは考えにくく、軽彫もしくは忘彫と考えています。
顕著なエラーが一つの印紙上に現れている、大きな変種ですが、カタログには未記載です。
左上隅と右下隅小文様塗り忘れ
実に細かいエラーですが、左上隅と右下隅小文様に塗り忘れがあります。さすがに細かすぎてカタログには載っていません。
右下隅文様塗り忘れ
右下隅の文様のうち、コーナーから雲型文様に向かって伸びるループ文様の内部に塗り忘れがあります。こちらは上の小文様塗り忘れに比べると大きくて目立ちますが、やはり細かすぎるのかカタログには載っていません。ちなみに同じようなループ文様内側の塗り忘れは第四次発行1銭黒色印紙にもありますが、文様の場所が異なっています。[2022/12/29追加]
下左雲形紋様小ループ落ち
印面内側左下にある雲形紋様の左右にあるべき小ループが彫られておらず、不完全な状態になっています。これまた些細なエラーで、(当然ながら)カタログには未収録です。【2023/1/13追加】
波落ち
この印紙を含めて、手彫証券印紙の地模様には青海波紋様が多く使われているので、文様の中の小さい波模様の彫り忘れがしばしば見られます。ここでは派手なものからごくごく小さなものまでご紹介します。
左波落ち
これは1銭印紙のエラーの中で最も大きなもので、左側の青海波紋様が広い範囲で欠落しています。この印紙は、証書に3枚貼られていたもののうちの1枚なのですが、ご覧の通り上側に擦れた跡があったためかしばらくはこのエラーに気づかず、見つけてびっくりした思い出があります。
ここからは青海波紋様が1つないし2つ落ちている細かいエラーです。様々な場所でちょこちょこっと出現します。
右額面上中程波落ち
右額面左上波落ち
左額面右上波落ち
上額面左下脇波落ち
[2022/11/27追記]このエラーは長谷川(2016)カタログの定常変種番号1-33と同じ印紙ですが、カタログの説明文が「下額面脇の波落ち」と上下が逆に誤って記載されています。このことにはこれまで気づかなかったのですが、改めてカタログに収録されている変種と位置付けて、画像の中の説明を「未収録」unlistedからカタログ番号に変更しました。
右下桜文様右横波落ち
右下の桜文様と印面枠線との間の細長い青海波紋様が欠落しています。同じような桜文様と印面枠線の間の波落ちは、左下の桜文様の左横の波落ちが長谷川(2016)カタログに定常変種番号1-30「左下部の波落ち」として収録されていますが、この変種は未収録です。
左上桜文様右下波落ち
右上桜文様右上波落ち
【2022/12/4追加】
右下桜文様右側波落ち
【2023/2/23追加】証書に貼られた単片で、印面間のマージンにガイドラインが印刷されていることから、初期印刷と思われますが、刷色が(ごく初期に見られる)淡灰色ではなくて黒に近い灰色なので、初期に作られた版を後に使用したものかも知れません。同じエラーを持つ淡灰色の印紙を見つけたいですね。
枠線落ち、誤彫
枠線が忘れられていたり、突き出たりしているものです。こちらも細かいものはそれこそ無数にあるのでしょうね。
右額面右内枠縦線落ち
右側の額面、内枠の右縦枠が彫り忘れられている大きなエラーです。カタログには左額面の同様のエラーは収録されていますが、この右額面のものは未収録です。
右外枠上誤彫
右上角の外枠を完璧にミスっている、面白いエラーです。まるで二枚の印紙が重なっているように見えます。印面変種としては抜群の面白さと思いますが、カタログ未収録です。
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このように第一次発行1銭印紙には様々な印面変種があって、ここでご紹介したものの他にも細かい変種はまだまだ埋もれていることと思われます。このLabジャーナルでも見つかり次第追加してご紹介しますので、手彫ならではの面白さを是非お楽しみ下さい。