【手彫証券印紙】第1次発行1銭:色調(シェード)について
初版 2022/11/05 10:57
改訂 2022/11/05 11:33
第1次発行印紙(和紙、ルーレット)の刷色は、(手彫証券)印紙の発行が公布された明治6年2月17日付け太政官布告第五十六号では「淡黒色」となっています(出典:国立国会図書館デジタルコレクション 法令全書.明治6年)。
この印紙の刷色はカタログでは「灰色」となっていて、第1次発行印紙の他の印紙と同様に淡色と濃色の2種類があるので、濃色のものは「黒色」となっています。
淡色の灰色は最も初期のもので、全体的にまさに淡いという印象を受けます。発行に先立って明治5年から印刷されたものと言われていています。
一方で、ごく濃い黒灰色のものは後期に印刷されたもので、はっきりくっきりと力強く、初期のものとは全く別もののような印象を受けます。
この2種類がカタログなどでの基本分類ですが、数多く発行されたためにさまざまな色調(シェード)が存在します。特に、中期印刷ともいうべき濃いめの灰色もよく見られます。
いろいろな色調のものを並べてみるとはっきりとした線引きはなかなか難しいものです。三段目の左から1、2枚目のように、用紙の色合いや経年変化のせいか若干茶色がかった濃いめの灰色のものもあって、一筋縄では行きません。
なので、私は明らかに薄い灰色=「初期印刷」、濃い黒灰色=「後期印刷」と特出しでラベルを付けて、その中間の色調のものには特段のラベルはつけない、もしくは使用時期が明治8年から10年あたりのものは必要に応じて「中期印刷」と呼ぶという整理をしています。
切手もそうですが、刷色は印紙の保存状態や、印刷用の版の磨耗度合いやインクの乗りの違いによる印刷の鮮明さなどに大きく左右されるので、本来ならば未使用でコンディションの良いもので比較するべきでしょうが、それだと使用時期がわからないし、そもそも未使用を入手するというだけでも至難の技なので、なかなか難しいところです。
このログの締めくくりとして、手元に面白い使用例があるのでご紹介いたします。初期印刷の淡色と、後期印刷の濃色が貼られた、明治9年の証書です。二枚の印紙の色のコントラストが面白くて入手した証書ですが、よく見ると、下側に貼られている後期印刷の印紙には朱色の消印の跡があって、どうやら使用済みのものを貼って上から消印を押してあるようです。使用済み印紙の不正使用でしょうか...