犬斉橋 箱場印
初版 2022/11/24 22:01
犬斉橋(けんさいばし)の箱場印は「犬」一文字に丸枠付きの、通常サイズの黒印です。この箱場印もやや珍しい部類に入るようです。
大西二郎氏の「大阪の箱場印と三ヶ所の支局印について」(平成20年)によると、犬斉橋箱場は明治4年4月30日に開設された25箇所のうちの一つで箱場としては古いものであるそうで、なんと「...第一区の江戸堀(通)2丁目の播磨屋和助さん方で、北には江戸堀川がありました」と具体的な設置場所や管理者名まで判明しているそうです。
(国際日本文化研究センター所蔵地図データベース「大坂明細全図」1872より抜粋)
この古地図(北が上)でいうと、地図の真ん中あたりに掛かっている犬斉橋の南詰(=橋の南側のたもと)、江戸堀南通との辻の角に位置する四角い区域に、この播磨屋さんのお宅と郵便集箱があったものと思われます。
箱場については、安土町二丁目やこの犬斉橋のように設置場所や管理者名まで明らかになっているものがある一方で、箱場の名称はわかっている、もしくはコンセンサスが得られているものの、設置場所については不確かさが残るものもあって、まだまだ謎が多いようです。
同じ箱場印が押されているはがきや書状をひたすら集めて、差出人の住所を地図上にプロットして、それらの住所から共通して最も近い場所=その箱場の場所、というわけにも行かないのでしょう。限られた資料をもとに、これまでの先人の方々がご自身の経験や知見から今日わかっているような箱場印の正体を明らかにしてきたということ、これはかなりすごいことだと感服しております。