フロゴパイト/金雲母

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黒雲母系列の中でもMgに富み、黄~赤褐色を帯びた個体が『金雲母』であります。

名前に「金」が入ってますが残念ながら貴金属としての金(Au)を含有しているわけではありません。
英名のフロゴパイトは、ギリシャ語で "火のような" を意味するphlogoposから命名されました。

宮沢賢治の童話「やまなし」の一場面にも登場するように、川底の砂に混じってキラキラ瞬いている粒の正体が此等であったりします。

その煌びやかな様子から砂金と誤認されることもありますが、両者にはかなりの比重差があるため判別はそこまで難しくありません。
作中でも "金雲母の欠片も流れて来て止まりました" という描写がなされているように、比重の小さな雲母は容易に流浪してしまうのです。

さて、この六角形の結晶を目の当たりにした方の多くが「これは本当に雲母なのか」とお疑いになったことでしょう。

雲母は典型的な劈開鉱物でありますので、千枚はがしという別名のとおり薄く葉片状に剥離する特性が知られています。
この性質のため意外に思われるかもしれませんが、本来はこのように立体的で纏まりある結晶を成しているのです。

こちらの金雲母はミャンマーのモゴックで産出した結晶。

これも宝石の一大産地だからこそ為せる業なのか、5㎜ほどの厚みがありながら向こう側が目視できるほど透明度を有しています。
そのため舞台照明のカラーフィルターの真似をして光の中にかざしてみると、まるで幻燈機のように黄金色の影を伸ばすのでした。

暖かな白熱光で照らし上げれば内部の劈開面で反射が起こり、緑柱石の黄色種であるヘリオドールと見紛うばかりに輝きます。

一方で短波の紫外線を照射すると、淡く黄色い夜光を放つ様子を確認できます。(画像1枚目)

それは月明りに照らされたヤマナシのようにささやかで、仄かだけれども芳しく、そして美しい光なのでした。

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