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OBOO / Weiches Loch “Metalo Ritmo Frakaso”
今回は、関西のデュオOOBOと、私が個人的に大注目している大阪のバンドWeiches Lochとのスプリット12インチシングルをご紹介します。先ず、OBOOですが、このバンド(?デュオ)は、BonanzasのVo吉田ヤスシ氏と神田剛誌氏の2人からなります。神田氏は実験ダブバンドAudio Activeへの参加から、Tulululus、Soft、NXSと関西の実験的バンドを遍歴してきているキーパーソンです。また、吉田氏も、Goatの日野幸四郎らとの「裏Goat」的バンドBonanzasを始め、PBC、Spasmom、Suspiriaのみならず、Volume Leaders等に参加しており、Bonanzasでのハードコアなヴォーカリゼーションは記憶に新しいのではないでしようか? そんなバックボーンの2人が新しく組んだデュオがOBOOなんですが、私自身は関西地下音楽シーンに余り詳しくはないので、どの位の頻度でライブをやっているのか等はよく分かりません。ここら辺の緩い結合によるバンドの分裂・融合が関西特有の現象であり、それによって多種多様の音楽形態が産まれてきたのではないかと思っています。一方のWeiches Loch (ヴァイヘズ・ロッホ)は、天才メタル・パーカッショニスト多門伸と佐野アツシを中心に、田中健司と、この時期にはフィンランド人Jere Kilpinenもメンバーとして参加しています。知っての通り、彼らは4人が4人共メタル・パーカッションを担当していると言う特異な編成でもあります。2020年に結成され、翌年にAdvaita Recordsよりライブ・カセットでデビュー、2023年に、メンバーの多門伸が自身のレーベルLa Muro Mia Muroを運営開始し、その第一弾のリリースが本作品となります。また、2024年12月には、独のカセットレーベルFinalstattより最新作もリリースしており、海外デビューも果たしています。 そんなアクの強い2組がスプリット12インチと言う形態で分け合ったのが本作品であり、多門伸の「音」への拘りなのか、重量盤にして45回転となっています。それでは、各曲/各面をご紹介していきましょう。 ★LMMM1-1: OBOO “スチャケス”は、バックのノイジーだが自在な音を神田氏が担当、ハードコアなVoを吉田氏が担当しており、カテゴライズし難い音楽を刻み込んでいます。強いて言えば、ハードコア・実験音楽でしょうか?でも、テンポは変わるもののリズムはあると言う、非常にユニークな曲です。最後ののたうち回るノイズ的な音が印象的です。 ★LMMM1-2: Weiches Loch “2”は、曲名を番号で表しており、初期の曲と思われますが、単調だが、比較的高音のメタパーの音が段々と重層化していき、途中から重めのメタパーの連打に劇的に変わるのは、本当にカッコ良いです。正に「メタパー交響曲」です。実際に彼等の録音では同様のパターンの異なるメタパーで幾重にも重ねて録音しているらしく、その金属音の芳醇さがやはり際立ちます。 と言う訳で、かなり興味深いスプリット12インチとなっておりますので、関西の現行地下音楽シーンに興味のある方は是非とも聴いて欲しい1枚です!特に実験的ポップ(?)に興味のある方にはお勧めします! [trailer] https://youtu.be/msxxyBnh2l0?si=2SDlGkLpWQ11w9KR [オマケ: Weiches Loch live at Osaka Bears on Nov. 29, 2021] https://youtu.be/eI7jl_l5Ehk?si=kqEvF-rWpB7IPD52 #OBOO #WeichesLoch #MetaloRitmoFrakaso #LaMuroMiaMuro #SplitEP #12-inchEP #Experimental #Industrial #NoiseMusic #MetalJunks #MetalPercussions #Osaka #Bonanzas #PBC #Spasmom #Suspiria #VolumeDealers #AudioActive #Tulululus #Soft #NXS #TsuyoshiKanda #YasushiYoshida #ShinTamon #AtsushiSano #KenjiTanaka #JereKilpinen
Experimental / Industrial / Metal Junks La Muro Mia Muro ?Dr K2
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Richard Pinhas & Tatsuya Yoshida “Ascension”
仏プログレ・バンドHeldonを率いていたギタリスト/シンセ奏者/作曲家Richard Pinhas氏と日本屈指の最強プログレ・ドラマー/即興音楽家/作曲家の吉田達也氏のガチンコ・コラボ・アルバムを今回は取り上げます。 Richard Pinhas氏については、これまでも紹介してきているので、そちらをご参考にして下さい。なので、吉田達也氏のバイオグラフィーについて、簡単に紹介していきます(彼の活動は多岐に渡り過ぎて網羅出来ないかも?)。吉田氏は、高校時代に吹奏楽部でDrsを始め、主にプログレ・バンドに影響を受けて、1980年代初期から、都内のライブハウスを中心に、本格的な音楽活動を開始し、以降、Zeni Geva, High Rise, YBO², Musica Transonic, Vasilisk, Dissecting Table, ZOAやあぶらだこ等のバンドでDrsを担当しています。1985年に、DrsとBによる自身のデュオRuinsを結成し、1990年代には海外ツアーを始めるとともに、Ruins以外に、和製シンフォニック・ロック・バンドの高円寺百景、叙情派/ユーモラス・プログレ・バンドの大陸男対山脈女、プログレ・ジャズ・ロック・バンドの是巨人、赤天、アカペラ・トリオのZubi Zuva/Zubi Zuva X等、次々と違うコンセプト/音楽性に基づくユニットを立ち上げ、そのレパートリーの大半を手掛けています。それ以降、現在まで様々なアーティストとの共演や自身のバンドにおいて、プログレやジャズ・ロック、即興演奏の分野で活動を続けています。また、国内のみならず海外でもコラボ等で精力的にライブを行っており、セッションでの参加を含めて多岐にわたる作品を様々なレーベルから発表しています。国内外の音楽家との共演も多く、近年では、菊地雅章、藤井郷子、林栄一等のJazzミュージシャンともセッションを行う他、反対派ロックのSamla Mammas Manna, サイケ・ロックのAcid Mother Gong (Acid Mothers TempleとGongの合体バンド), John ZornとBill LaswellとのPainkillerといった日本国外のバンドのメンバーでもあります。近年では、吉田氏一人で打ち込み/生Drs/Vo/Kbd等を演奏するRuins aloneや、Sax奏者の小埜涼子氏とのSax Ruins、天才キーボーディストの武田理沙氏とのデュオ等でも国内外でツアーを敢行し、観客を魅了しています。また、音楽活動のかたわら石仏や石像など、石の写真を撮り続ける写真家でもあり、その趣味は結成するバンド名やレーベル名(磨崖仏、Ruins[廃墟の意]、石窟寺院)や特徴的な作品のジャケットにも現れています。吉田氏の経歴は多過ぎて、書き出すとキリがないので、ここら辺にしておきます。 それで、そんな八面六臂の活躍を続ける吉田達也氏が、1970年代から活動を続けているRichard Pinhas氏と共に、仏のNantesのLa Sourisスタジオで録音・作成したのが、本作品”Ascension”です。担当は、Richard Pinhas (G, Effects)とTatsuya Yoshida (Drs, Kbd, Vo)で、プロデュースは吉田達也氏が行っています。どうも、Pinhasが高齢の為、2019年のジャパン・ツアーが最後の来日となったようです。しかしながら、Pinhas氏は、仏ではまだまだ精力的活動を続けていますので、吉田氏が渡仏して制作されたアルバムと言うことになります。と言う訳で、本作品の各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Ignition.” (7:54)では、重厚なイントロ部分から、一気に雪崩れ込み、変拍子のリズムに乗せて、吉田氏のDrsとPinhas氏の伸びやかなGのセッションへ、更に往年のHeldonを思わせるパートへと移ります。 ★A2 “Affection.” (6:10)では、シーケンスに導かれて、Pinhas氏がGを弾きまくっており、吉田氏の超絶ドラミングも炸裂して、途中で現代的なエフェクトやPercプレイのブレイクから、再び炸裂する演奏になります。 ★A3 “Infection.” (7:58)では、ややスローな出だしで、三味線のような音やピアノの演奏に移って来ますが、やがて、両者の壮絶なインタープレイとなります。そのバックから、シンセに導かれて、3拍子のリズム〜更にポリリズムとなります。Pinhas氏はGは弾きまくっていますが、曲はフェイドアウトしていきます。 ★B1 “Ascension.” (21:53)は、組曲になっており、”Procession”, “Ascension”, “Invasion”, “Confusion”, “Elision”, “Decision”, “Illusion”と言うパートからなっています。先ずは、連続する電子音のバックに、Pinhas氏の伸びやかなGで始まり、5拍子のリズムに乗って両者の凄まじいインタープレイが繰り広げられます。やがて、叙情的なピアノの連打に合わせて、9拍子のパートへと。口ずさむメロディも加わりますが、一瞬のブレイクの後に、再び、両者の凄まじい激突演奏が展開され、アップテンポ化します。一旦、フェイドアウトした後に、今度は、両者のインプロ・プレイが始まります。その後、通奏低音らしきシンセに吉田氏のDrsとシンセのメロディが始まり、そこにPinhas氏のGが切り込んできて、5拍子のリズムでの演奏に続きます。やがてフェイドアウトした後に、エレピによるシーケンスで曲は幕を閉じます。 本作品は、「現代版Heldon」とも言って良いかもしれませんが、とにかく吉田氏も得意な緊張感溢れる変拍子プレイと、展開の早い曲作りに、Pinhas氏の往年のHeldonを思わせるGプレイ(Frippertronicsっぽい音色等)ががっつりハマった名作だと思います。多分、吉田氏もHeldonのファンであったのだろうと想像も出来(直接、聞いた訳ではないです)、ツボを押さえた展開や曲作り及び演奏をしています。なので、両者の息もピッタリで、リスナー側も、流石の緊張感を感じることが出来ます。本作品は、単なる懐古的なプログレの再現と言うよりも、「新しいロック」として聴く方が楽しめると思います!なので、Heldonのファンも吉田達也ファンも存分に楽しんで下さい! [album digest] https://youtu.be/IUjig1GPDeA?si=PPU9NULxZLet7-cu [Richard Pinhas last Japan tour at 秋葉原Club Goodman; 2019/09/23; part 1] https://youtu.be/5CYpCiK9JFU?si=AzXqdv3pr8LDpfue #RichardPinhas #TatsuyaYoshida #Ascension #BamBalamRecords #ExperimentalRock #ProgressiveRock #Heldon #Movements #Guitar #Effects #Drums #Keyboards #Synthesizers #Sequencer #Vocal
Experimental Rock / Progressive Rock Bam Balam Records 不明Dr K2
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Sissy Spacek / K2 “Continuously Deformation”
またまた、Sissy Spacek関係の作品を紹介します。今度は、Sissy Spacek / K2名義の7インチ・シングル”Continuously Deformation”です。前回、Sissy Spacekについては紹介していますし、わたくしK2についても以前に書いてありますので、そちらをご参照下さい。本作品では、以前にリリースされたセルフタイトルのスプリット・コラボ作品に収録されていたSissy Spacek with K2の曲”SS/K2”と更にわたくしK2の音源やCharlie MummaとJohn Wieseの音源を、2023年8月にJohn Wieseがグチャグチャに撹拌して、脱作曲して作った作品で、これも超限定20部で、完全にコレクターアイテムです。しかも、両面共に曲名も全く同じです。なので、多分、この現物を目にすらことはないと思いますが、敢えて、今回、紹介させて頂きます。まぁ、「世の中にはこんな珍品もあるんだ」程度に読んでみて、音を想像してもらえると幸いです。それに、わざわざ、”Collectors item”と明記されてますしね。では、両面を纏めて紹介します。 ★A “Continuously Deformation” ★B “Continuously Deformation” K2の4枚組CDボックス”Sexencyclopedia”の再発に際して、ボーナスDiscとして既存の4枚のCDを素材に5人のアーティストにやってリミックスされてているのですが、その時にSissy Spacekもリミキサーに含まれており、おそらく、その時の音を素材とした使っているのではないかと思われます。その結果として両面共に「間」を活かしたメタル・ジャンク音のカットアップ・ノイズとなっていますが、A面では、恐らくMummaとWieseによる電子音も加わって、より混沌として粘着質なノイズになっているものと推測します。私が、何故、「恐らく」とか「推測する」とか言うのは、いつも、Sissy Spacek、多分Wieseが勝手にわたしくK2を音源を使ってやってしまうからなんですね。でも、Wieseとは信頼関係があるので、こういうことも許せる訳ですよ。それに、前回も書いたように、彼は優秀な実験音楽家兼エンジニアでもあるので、そこは心配していないです。これからもまた、一緒に音楽をやって行きたいなあと思わせるアーティストの1人です(今度は、Charlie Mummaともコラボしたいなぁ)!! [この作品はYouTubeにもBandcampにも上がっていませんでしたが、The Haters のG.X. Jupiter-Larsenがやっている”A 5-Minute Hour”で、2023年のJohn Wiese(Sissy Spacek) & K2のコラボ・ライブ*動画が取り上げられていましたので、貼っておきます] https://youtu.be/q9kU1jNcrow?si=HYIICzdckk5Wg4Aw *この時のライブCD “Multiple Density”絶賛発売中です。”Part 1”を貼っておきますので、よろしくお願いします🙇 https://youtu.be/YKIhVvlJpBI?si=cMK_t0qAI2RP8Zm8 #SissySpacek #K2 #ContinuouslyDeformation #Helicopter #7-inchSingle #UltraLimitedEditions #20部 #CollectorsItem #Noise #NoiseCore #CutUp #DeComposition #JW #SoundSource #SS/K2 #MetalJunks #Electronics #KimihideKusafuka #CharlieMumma #JohnWiese
Noise / Cut-Up Noise Helicopter なしDr K2
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Bastard Noise “Incineration Prayer” & “Self Righteous Suicide”
GrindマスターことEric Woodが辿り着いた境地、それがBastard Noiseです!元々は、Power ViolenceバンドMan Is The Bastardのサイドユニットとして、1991年6月からBastard Noise名義の活動が始まってはいますが、ダブって名義を使っていた時期もあるので、いつからとは正確には言えないのです。しかし、Man Is The Bastardの終焉が、Bastard Noiseの始原と言えるでしょう。当初は、Caveman electronicsと言う真空管の化け物のようなHenry Barnes自作のオシレーターもWoodのデス・ヴォイスから成っていましたが、ヘヴィロックからパワーエレクトロニクスまでの様々な形態で活動をしています。1999年に、John Weiseが加入すると、よりアトモスフィリックな領域まで侵食していきますが、2004年にWieseが脱退し、コアメンバーは、WoodとW.T.Nelsonとなり、近年では、Joel ConnellとDanny Walkerも加わって、元のMan Is The Bastardに近い形態も取っていました。その後は、Woodのソロノイズ・ユニットとして、エレクトロニクスとデス・ヴォイスから成る形態で活動しているようです。 と言うのが、Bastard Noiseの簡単な略歴ですが、本作品は、A面がEric WoodとRick Grinrnasから成る編成で、2018年第二期に、CAのSun ValleyにあるSpeed Semen Clove Factoryで、Michael Roxonによって録音されたトラックであり、B面は、Woodのソロの形態で、2007年第3期〜2011年の第一期に、ペンシルバニア州PittsburgにあるAntennacle StudiosとCAのSpeed Semen Clove Factory Burbankで録音されたトラックから、この作品は構成されています。共に長尺の曲が収録されていますが、B面は都合4章から成り立っています。と言う訳で、各曲をご紹介しますね。 ★A “Incineration Prayer” (15:13)では、恐らくTrogotronicのオシレーターによると思われる、線は細いが切れ味の鋭い電子ノイズが暴れまくっており、徐々にその奥から持続電子音が不気味に忍び込んできます。やがて、金切り声のようなVoが挿入され、更にもう1人のデス・ヴォイスも挿入されて、一気にテンションも上がり、「破壊」のイメージと「(宇宙)空間」のイメージが同居し始め、そして、静かにフェイドアウトしていきます。 ★B “Self Righteous Suicide (Parts I-IV)” (12:59)の第一章は、爆発する電子ノイズとデス・ヴォイスの打つかり合いからなります。第ニ章は不気味な低音Voに導かれて、切り裂き電子音とデス・ヴォイスの衝突からなります。第三章は、アンビエントっぽい電子音が不気味に流れており、そこに「何か」がいる気配が感じられる曲調ですが、結構、緻密な音作りをしています。そして、第四章では、突発的に爆音がその正体を表したかのように空間を支配していき、唐突に終わります。 MITBからのBastard Noise。見事に、Eric Woodの変遷と進化が感じ取れ、またBastard Noiseとしての成熟具合も見事です。多分、彼には元々のグラインド・コアとしてのコアな信念があるので、ここまで続けられたのだと思います(別に上から目線ではなく、単純にそう感じるので)。今はすっかりヴィーガンになったEric Woodですが、それも何らかの信念があってのことだと思います。現在、中耳に骨化が起こり、難聴の為、処置をしなければならない状態ではありますが、アメリカの医療経済事情を聞くに大変だとは思いますが、きっと不死鳥のように元気な姿を見せてくれることをしんじてきます! [B: “Self Righteous Suicide”] https://youtu.be/PnQMDvxuCaY?si=0bXf6helQDfV8EXB [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nUhVMgDlrEbAXcXzS8fR808qVmgDteEwY&si=oNFNcf0hDfTHjfCZ #BastardNoise #IncinerationPrayer #SelfRighteousSuicide #ArmageddonLabel #Album #2023年 #LimitedEditions #500部 #Noise #Electro #Experimental #DeathVoice #Atmospheric #EricWood #RickGribenas
Noise / Experimental Armageddon Label 不明Dr K2
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The Serfs “Half Eaten By Dogs”
私は、このバンド、全然知らなかったのですが、試聴して良かったので、即購入しました。なので、先ず、The Serfsについて調べてみました。The Serfsは、元々、オハイオ州シンチナティで、2010年代後半に結成された3人組で、メンバーは、Dylan McCartney, Dakota Carlyle, Andie Lumanですが、それぞれが別のサイド・バンド(The Drin, Crime of Passing, Motorbike)を並行してやっており、この地域の新しいアングラ・シーンには欠かせない存在です。それで、彼等は、最初のカセットアルバムを2019年に独のミニマルシンセ・レーベルDetriti Recordsからリリース、その後2022年に、シアトルのレーベルDreamから彼等のファーストLP”Primal Matter”をリリースしています。そうして、2023年に、本作品であるセカンドLP”Half Eaten By Dogs”をシカゴを拠点とするTrouble In Mindから出しています。その作品は、モダニスト達が、Total ControlやCold Beat等の未来指向のバンドを米国中西部へグッと引っ張り上げるようなもので、ポスト・インダストリアル或いはインダストリアル・ロック・バンドであるSkinny Puppy, Dark Day, This Heat, Factrixによるグライムと同様の衝撃があったようです。 調べてみましたが、この位のことしか分かりませんでした(すまん!)。過去の作品を聴いてみると、ポストパンクと言うよりも打ち込み系ロック、即ち、インダストリアル・ロックと言う方がしっくりくる感じでした。それで、本作品についでの文章がありましたので、引用します。「この作品は、スカスカの異教徒のヴィジョンに焦点を当てており、それは、氷のようなシンセのハーモニーが、滲み出すケミカルなリズムとボコボコに穴の空いたロックの様式に統率しているようなもので、そうすることで、サイケな憂鬱さも体現できます。そう言うのは抽象的な歌詞にも反映されており、その内容は、自然的厄災と超自然的厄災とが運命的に決まっていることも、また、より可視化された音楽シーンの運命も含んでいると言うことです。」とのこと。実際、彼等は、陰気なドラムやギターとインダストリアルなシンセの予定調和を越えて、方向転換していますし、この作品ではSaxやハーモニカ、Fluteなんかも使っています。まあ、つべこべ言わずに聴いてみましょう。本作品の参加メンバーは、Dylan McCartney (Vo, Perc, G, B, Drs, Synth, Electronics, Harmonica, Flute), Dakota Carlyle (Programming, Electronics, Synth, B, G, Vo), Andie Luman (Vo, Synth)で、ゲストとして、Eric Dietrich (Sax [A5]), Luke Cornett (G [B4]), Bradley Kennedy (Perc [A2])も参加しています。また、内容も両面とも5曲ずつ収録されています。それでは、各曲について紹介していきたいと思います。 ★A1 “Order Imposing Sentence” (3:08)は、いきなりサーフ系ロック・アンサンブルで飛ばすチューンで、カッコ良すぎます。時に入ってくるSE的シンセ音やオルガンも最高です! ★A2 “Cheap Chrome” (3:37)は、性急なマシンリズムとミニマルなシーケンスに、シンセによるメタ・メロディと複数のVoが重なる曲で、ちょっとだけSuicideを想起しますね。 ★A3 “Suspension Bridge Collapse” (4:10)は、LFOシンセとディレイを掛けたマシンリズムから始まり、ミニマルなシーケンスとドリーミーなメロディそしてインダストリアルなシンカッションに、深いエコーを掛けた単語切りのVoから成る曲で、甘くも硬派な印象です。 ★A4 “Beat Me Down” (3:30)は、反復するシンセのリフに、生DrsとGが加わり、ミニマル・ロックな曲で、VoはJesus & The Mary Chainのようで、結構、カッコ良いです。 ★A5 “Spectral Analysis” (4:35)は、A4と連続して、マシンリズムが淡々と流れる中、Bと共に、緩やかなシンセのメロディとディレイを掛けた語り口調とVoが乗ってくる曲で、郷愁を誘うSaxと共に「新しい工業音楽」を感じさせます。 ★B1 “Club Deuce” (5:30)では、シンセで作ったリズムのシーケンスとミニマルなB-Synthに加えて、シューゲイザー風女性Voがメインに入ってきます。微かな男性の語りもワンポイントで。何処かポップになり切れないインダストリアルを感じます。 ★B2 “Electric Like An Eel” (3:47)は、ロック調のマシンリズムに、不思議なシーケンスと地を這うB-Synth、そこに突き放すようなVoが乗る曲ですが、曲はミニマルで、シンセの音色もグーです! ★B3 “Ending Of The Stream” (3:00)では、フランジャーの掛かった低音持続シンセに、土俗的生DrsとVo、それに流れるようなシンセとGが加わり、シンセ版ポストパンクのような曲に仕上がっています。 ★B4 “The Dice Man Will Become” (4:07)は、アップテンポな生DrsとBかつドリーミーなパワーポップな曲で、ノリも良く、シンセも秀逸で、思わず踊りたくなります。 ★B5 “Mocking Laughter” (4:28)は、直線的なキックとBで始まり、ポストパンクなVoが乗ってくる曲ですが、脇を固めるGやシンセが嘗てのFactory系のバンド・サウンドを想起させると同時にドリーミーさも感じます。 私的には、凄く好みのサウンドで、インダストリアルと言う程、悪意や攻撃性は無く、寧ろ、セカンドの頃のSuicideの淡い感情や1980年代のポストパンクやパワー・ポップ或いはガレージのロックっぽさを上手く自分達のテイストとして消化していると感じました。なので、確かにミニマルな曲は多いですが、シンセ・ウェーブよりももっと「ロック」に近いとも思えますし、インダストリアルともインダストリアル・ロックとも全く異なる「歌心」があるように感じます。そう言う意味では、結構、掘り出し物でした❗️多分、好きな人にはピッタリハマると思いますので、先入観無しで聴いてみて下さい!ありそうで無かったサウンドです。 https://youtu.be/_nX6wZz7uLU?si=qQKplt2sOsJc_HWh [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nQmflopNqtRhxj1Xe2wOVqaSoPGanSn9g&si=SpkBrPrVQDfGDDO2 [BandcampのURLも貼っておきます] https://theserfsmusic.bandcamp.com/album/half-eaten-by-dogs #TheSerfs #HalfEatenByDogs #TroubleInMindRecords #3rdAlbum #USA #CincinnatiUnderground #SynthPunk #PostPunk #MinimalWave #PowerPop #Garage #打ち込み #Shoegazer #Synthesizers #DylanMcCartney #DakotaCarlyle #AndieLuman #Guests #EricDietrich #LukeCornett #BradleyKennedy
Synth Punk / Post Punk / Minimal Wave Trouble In Mind Records 2900円Dr K2
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V. A. “7Ai9”
これは、始め、なんだぁ?と思った謎物件でしたが、どうも、フィンランドのレーベルが出したコンピレーション・アルバムのようで、それをキュレーションしたのが、レコード・コレクターにして1980年代にパンクファンジンPölyを弟と一緒に出していたPiitu Lintunen (ピーツ・リンツネン)みたいです。彼は、1980年代〜2000年代まで、MerzbowやGenesis P-Orridgeともコンタクトがあり、この時代のインフルエンサーでもあったようです。それで選出されたメンツをザッと見てみると、1980年代から活動しているグループから比較的最近出てきた北欧のグループも混じっているようで、所謂、ノイズ〜アヴァン系なのかな?と期待は膨らみます。なお、A1, A2, A3, A4, B3, B4のトラックは、1980年代にキュレーター兼ソロユニットNeljän Seinän JumalatでもあるPiitu Lintunenの所に送られてきた「デモテープ」からセレクトした音源であるとのことで、1982-1986年に録音されています。それ以外は、B2が1992年に録音で、A5, B1, B5が2022に年録音された音源と言うことです。なお、A1は1983-1984年辺りに録音されたものですが、今回、収録に当たり、2021年録音のロングヴァージョンになっていると言うことです。それでは、 各曲を各アーティストと共に紹介していきたいと思います。因みに、ジャケは、先述のファンジンPöly4号のカバーから取られています。このファンジンを出していたのが、今回のコンピのキュレーターであるPiitu Lintunenです。 ★A1 DDAA (仏) “Now It's Time Now” (3:23)では、Sylvieの淡々とした朗読と物音系Percに、BだかGだか良く分からない弦楽器やシンセ持続音が絡まっていきます。正にアヴァン・ポップな1曲です。 *DDAAはDéficit Des Années Antérieuresの略称で、1977年にJean-Luc André, Jean-Philippe Fée, Sylvie Martineauで仏で結成されたアヴァン・ポップ・バンドです。 ★A2 Konstruktivists (英) “Opening Singns” (4:51)は、不明瞭なシンセ音が多層化していく曲ですが、後半には高周波リズムが聴取できますし、どうもシーケンスもあったようです。 *Konstruktivistsは英国のGlenn Michael Wallisかわ1982年から始めたインダストリアル・ユニットで、嘗てはHeuteとしても活動しています。 ★A3 Ramleh (英) “Black Ark” (2:08)は、いきなりの爆音電子ノイズで始まり、テープ音も時に聴こえます。音の潰れ方が正しく正統派のパワ・エレですね。 *RamlehはノイズレーベルBroken Flagを運営していたGary Mundyを中心としたパワー・エレクトロニクス或いはギターノイズ・バンドです。 ★A4 Neljän Seinän Jumalat (芬) “TV-Orgasmi” (4:43)は、怪しげな低音シンセと一見、合ってなさ気なリズムに、鳥声らしきシンセ音とCabsのようなBが被る曲で、後半はホワイトノイズが唸る中に、テープ音やSE的電子音が散りばめられます。 *このコンピの首謀者Piitu Lintunenが1980年代にフィンランドでやっていたソロ実験音楽ユニットです。 ★A5 Corum (米) “Hecate's Swaying Garden” (5:37)では、ウニョウニョした電子音がリズムレスにのたうち回ってますが、その内、3拍子のリズムボックスや明瞭なメロディの無い電子音とVlnらしき弦楽器のリフが入ってきます。 *Corumは米国人Grant Corumのソロユニットで、2010年代から活動しています。 ★B1 Clair (米) “Magick Garden Rebirth” (5:31)は、フルートとシンセ(?)の静かで落ち着いた雰囲気で始まり、そして柔らかいシンセのメロディも加わったオーケストレーションになっていき、最後にはVoらしき音も聴取できます。 *Clairも米国人Clair Crawfordのソロユニットで、2020年代から活動しています。 ★B2 Jimi Tenor (芬) “Ainon Kyynel” (4:00)では、ヘンテコな音/ピコる音のシーケンスが弾け、やがてマシンリズムや同期した別シンセ音も加わります。一番、テクノかも? *Jimi Tenorは本名Lassi Lehtoで、1990年代から活動しているフィンランドの実験的ジャズ・ミュージシャン名義です。 ★B3 Tasaday (伊) “Il Rito” (3:34)では、ポリシンセの反復で始まり、その内、ドラムマシンも入ってきて、更に、アジるVoやら打楽器やら電子音やらの断片が無作為にインしてきます。 *Tasadayは、伊Brianzaで、1982年に結成された不定形実験音楽/インダストリアル/ノイズ・バンドで、仏のForm & Nulla Iperrealeと関係があります。 ★B4 Odal (蘭) “Flaming Piano” (3:33)は、デロデロのテープで録音したピアノを古い壊れ掛けの機材で再生したかのようなLo-Fiな「テープ音楽もどき」です。 *Odalは、蘭のPeter Zinckenのソロノイズユニットのことで、1986年から活動しています。 ★B5 Pekka Airaksinen (芬) “Untitled” (3:34)は、闇の中から、様々な電子音が立ち上がってくる曲ですが、やがてマシンリズムとSynth-Bのシーケンスと上物のシンセによるメロディも出てきて、ちょっと安心します。 *Pekka Airaksinenは、フィンランドで、1967年にThe Spermとして活動したり、又は1000体の仏陀に捧げる曲を使ったりしてきた古参の実験電子音楽の作曲家で、2019年5月に他界しています。 このコンピのコンセプトに関しては、分からない訳ではないんですが、出来れば、コンパイルする音源を、1980年代にLintunenが受け取ったデモテープだけからか、フィンランドのアーティストだけからかのどちらかにして欲しかったです。この手の電子音楽って機材の進化にかなり左右されるところもあるので、年代が離れ過ぎた曲を1枚のコンピにするのはちょっと反則だなぁと思いました。しかしながら、フィンランドのこう言うアングラ・シーンの一端を垣間見れたのは貴重な体験でした❗️ノイズだと、フィンランドと言えば、Miko AspaのGruntとそのレーベルFreak Animal Recordsを思い出しますが、それじゃないアーティストのことも知ること出来て良かったです。 [今回、YouTubeには、アルバムとしてまとめてあったサイトが無かったので、各曲を別々に貼っておきました。なお、BandcampのURLも貼りましたので、まとめて聴きたい方はそちらからアプローチしてみて下さい。] A1 DDAA “Now It's Time Now” (3:23) https://youtu.be/LivrD3IJchk?si=1d8xRC3kWJqKeMtW A2 Konstruktivists “Opening Singns” (4:51) https://youtu.be/IJqq5vEREvc?si=jEd8qR4yrWtNRK3H A3 Ramleh “Black Ark” (2:08) https://youtu.be/Vd_7LRtV6rE?si=6V6VxTjgBxPRrWnD A4 Neljän Seinän Jumalat “TV-Orgasmi” (4:43) https://youtu.be/L7pmzpRhy9g?si=qkTk8-z5fQxPUjMn A5 Corum “Hecate's Swaying Garden” (5:37) https://youtu.be/7z9KYIC3KPs?si=wiugzQbGOj1CdhHt B1 Clair “Magick Garden Rebirth” (5:31) https://youtu.be/X_XzVPGVGDY?si=Pxlz_au_NEBUR_Al B2 Jimi Tenor “Ainon Kyynel” (4:00) https://youtu.be/UGBHZgmOKvQ?si=Za6C0g6EPMLp8oap B3 Tasaday “Il Rito” (3:34) https://youtu.be/tdLCavYiAF8?si=APZR_Kwh5S7G-kIp B4 Odal “Flaming Piano” (3:33) https://youtu.be/poug3ljnT9o?si=Ye3oOFz49loP2Fcr B5 Pekka Airaksinen “Untitled” (3:34) https://youtu.be/UPpko3NP_zM?si=vWpmNhBDURNtrHgr [BandcampのURLを貼っておきます] https://sahkorecordings.bandcamp.com/album/7ai9 #VariousArtists #7Ai9 #SähköRecordings #InternationalCompilationAlbum #Finland #1980年代 #DemoTapes #2022年 #Curation #PiituLintunen #PunkFanzine #Pöly #RecordCollector #Influencer #Industrial #Experimental #Noise #Avant-Pop #DDAA #France #Konstruktivists #UK #Ramleh #UK #NeljänSeinänlJumalat #Finland #Corum #USA #Clair #UK #JimiTenor #Finland #Tasaday #Italy #Odal #Holland #PekkaAiraksinen #Finland
Industrial / Experimental Sähkö Recordings 3530円Dr K2