-
V.A. “Swiss Wave The Album”
Neue Deutsche Welleが独で流行り出した頃、当然、隣国のスイス(特に独逸語圏)でも、そのような音楽が注目されてきた訳ですが、それをいち早く察知して作られたのが、このコンピレーション・アルバム”Swiss Wave The Album”です。その頃には、既にGrauzone (グラウツォーネ)やLiliputはある程度人気がありましたが、他のバンドはまだ良く知られていませんでしたので、ここで、紹介していきたいと思います。先ずは簡単にバンドのメンバーとかを書いて、その後に各曲を紹介していくことにします。 ◉A1, A2; Grauzoneは、1980年にBernで結成されたスイスのNDW/ポストパンク・バンドで、1981年にリリースしたシングル"Eisbär(北極熊)”が独で12位、オーストリアで6位とヒットしています。メンバーは、Martin Eicher (Vo, G, Synth), G.T. (B), Marco Repetto (Drs), Claudine Chirac (Sax)で、1982年頃には解散しています。 ◉A3; The Sickは、Marcello Pinna (Vo), Röfe Hobi (G), Wäle Demuth (B), Markus Tränkle (Drs)で、略歴は不明ですが、Tränkle (Drs)は後にBayer名義でMother’s Ruinに加入しています。 ◉A4, B3; Jack & The Rippersは、1978年前頃から活動を始めたパンクバンドで、メンバーは、John Seilern (Vo), Francis Seilern (G, Vo), Babine (B), Philip Turrian (Drs)で、1本のカセット・アルバムと1枚のシングルを出していましたが、後にセルフ・コンピも出ています。 ◉A5, A6; Liliputは、1978年にZürichで結成されたパンクバンドで、元々Kleenexと名乗っていましたが、企業名と同じなのが問題になって改名しています。メンバーは全員女性で、ここではChrigle Freund (Vo), Marlene MarderことMarlene Marti (G), Klau SchiffことKlaudia Schifferle (B), Lislot Ha. (Drs), Angie BarrackことAngela Schleitzer (Sax)です。メンバーチェンジもしましたが、スイスのThe Raincoatsとも呼ばれており、2枚のアルバムをRough Tradeから1982年と1983年に出しており、2000年代にはボックスセットやセルフ・コンピレーションも出ています。 ◉B1, B2; Rudolph Dietrich & KDFは、Dietrich (Vo, G)で、KDFことKraft Durch Freudeには、Heinlich Heinricht (B, Back-Vo)とTomy Wylder (Drs, Back-Vo)から成るパワーポップ・バンドで、1979年にミニアルバム”Wir Bleiben Kameraden”と1980年に1枚のシングルを出しています。 ◉B4; Ladyshaveは、Enzo Esposito (Vo, G), Phil Esposito (B, Back-Vo), Adolph B. Schlatter (Drs)から成るパンク・バンドで、1984年にカセット・シングルを出しています。 ◉B5, B6; Mother’s Ruinは、1978年3月に結成されたニューウェーブ・バンドで、メンバーは、Sylvia Holenstein (Vo), Markus Engelberger (G), Reto Ressegatti (G), GulyことAndrej Gulewicz (B), BayerことMarkus Tränkle (Drs)で、3枚のシングル以外に、1979年にミニアルバム”Godzilla”と1981年にフルアルバム”Want More”を出しています。 それでは、各曲の紹介です。 ★A1 Grauzone “Eisbär” (4:45)は、当時のヒット曲でもあり、寒々したSEからポップソングが始まり、Voは元気一杯で、サビでのシンセとGとその後のSaxが効果的で、カッコ良いです! ★A2 Grauzone “Raum” (4:00)では、出だしも凝っており、その後には簡素なポップソングが続きます。間奏のSaxも優しい音色です。目覚まし時計がポイントかな? ★A3 The Sick “World War Three” (3:15)は、音質も曲調もかなり荒い性急なパンクロックで、元気一杯ですね。間奏のGもカッコ良いです。 ★A4 Jack & The Rippers “I Think It's Over” (2:45)は、やや雰囲気のあるポストパンクな曲で、ちょっとスカスカな所がまた魅力です。 ★A5 Liliput “Hitch-Hike” (2:35)も、ややスカスカしたいたポストパンクな曲で、Saxが隠し味になっています。普通なんですが、何か分からない魅力があります。 ★A6 Liliput “DC-10” (3:25)は、ロータムを使った土俗的リズムで始まりますが、UKのSax入りロックよりも独のそれに近い感覚の曲です。 ★B1 Rudolph Dietrich & KDF “Lies” (2:20)は、Gのリフを上手く使ったパンクロックで、コーラスワークが良いですね。歌詞はやっぱり英語なのかな? ★B2 Rudolph Dietrich & KDF “Do What You Want” (3:10)は、硬質な感触のパンクロックと言うかロックンロールで、やはりコーラスワークが効いています。 ★B3 Jack & The Rippers “Down” (1:55)は、元気一杯のポストパンクな曲で、こちらもコーラスワークが良く効いてます。 ★B4 Ladyshave “Tonight” (3:50)では、エフェクターを掛けたGと通常のGの2本立てで、ポップソングを演奏しています。ちょっと泣けるキャッチーな曲です。 ★B5 Mother's Ruin “Heartbreak” (2:55)は、やや焦燥感のある雰囲気の曲で、それを後押しするVoの歌唱力やバックの演奏も素晴らしいです。 ★B6 Mother's Ruin “With Us” (4:35)も、アコギとGを使ってのポップソングで、こちらは一種の爽やかさを感じますね。最後のGソロも派手すぎず良いですね。 全体として思ったのは、独のNDWが、割と独逸語に拘っていたのに対して、スイスのNDWは、初めから英語での表現になっているのが、興味深かったです。また、モロにパンクなバンドもいますが、多くはポストパンクで、かつスカスカのバンド・サウンドの曲が多く、それも特徴かな?って思いました。Grauzoneは、以前にボックスセットを紹介していましたので、何だかまた聴きたくなってきました!皆さんも、スイスを侮るなかれ! B4 Ladyshave “Tonight” (3:50) https://youtu.be/-RNqkiYEdEI?si=gVefw-MiBrXkcSpX [full album excerpt B4] https://youtube.com/playlist?list=PLYVDPCHD0uYPvUsO9HfgAxcbawUhl31gk&si=TzrINEc9GLOi_6tD #VariousArtists #SwissWaveTheAlbum #Babylon #OffCourseRecords #CompilationAlbum #1980年 #PunkRock #NewWave #SynthPop #Switzerland #Grauzone #TheSick #Jack&TheRippers #Liliput #RudolphDietrich&KDF #Ladyshave #Mother’sRuin
Punk, Synth Pop, New Wave Babylon / Off Course Records €10.00Dr K2
-
Hans-A-Plast “2”
またまた、来ましたよ、Hans-A-Plastです。彼等は、1978年結成のHannover出身の独パンクバンドの古参で、以前に、彼等のライブ盤とファースト・アルバムをご紹介していると思うのですが、覚えていらっしゃいますか? 今回は、彼等のセカンド・アルバム”2”をご紹介します。Hans-A-Plastのバイオグラフィーは前回、書いてありますので、そちらをご参照下さい。メンバーは、いつものAnnette Benjamin (Vo, Sax), Jens Meyer (G, Vo), Micha Polten (G, Vo), Renate Baumgart (B, Vo), BettyことBettina Schröder (Drs, Vo)の5人組で、内容は、A面7曲/B面5曲となっています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。因みに、2021年にバンドの創設者でもあるJens Meyerは他界しています。 ★A1 “Spielfilm” (2:40)は、インダストリアルなイントロから始まるノリのよいパンキッシュな曲で、間奏の鈴の音も良いです。 ★A2 “Reicher Vati” (2:42)も、パンキッシュな元気一杯の曲ですが、ここに来て漸く、BenjaminのSaxプレイが聴けました。 ★A3 “Kunde Und Vieh” (3:30)は、シンコペーションなリズムも持ち合わせたアップテンポな曲ですが、最早、ポストパンクです。スキャットやBソロもあり、曲構成も凝っています。 ★A4 “Dicke Kinder” (2:37)は、それぞれが何となく勝手に音出ししているようなフリーなイントロから始まる、切羽詰まったような曲調が秀逸で、Saxも聴取できます。 ★A5 “Sicherheit” (2:42)は、独特なユーモアを感じることが出来る何処か変な曲で、それが結構速いテンポで演奏されています。最後のコーラスもグー! ★A6 “Machtspiel” ~ ★A7 “Eidexe Kriech (3:31)は、闇を切り裂くGで始まり、アップテンポな小気味良いポップパンクな曲と成りますが、その内、軍靴の靴音に合わせた、何とも心許ない合唱になっていきます。まるで、予測不可能な面白さです。A6とA7はメドレーです。 ★B1 “Humphrey Bogart” (2:47)では、単に直線的なビートだけではなく、突っかかるビートや緩急を付けたり、反復したりと中々凝った構成になっており、上物にはコーラス等を使ったりと曲構成も意外と複雑です。 ★B2 “Kurz Und Dreckig” (3:09)も、最初のコーラスで油断していたら、いきなりアップテンポなビートをかましてくれます。間奏ではSaxソロや時に聴かれる変なブレイクとかもアイデア一杯で絶品です。 ★B3 “Tuaregs” (5:25)は、ミドルテンポで、自在なSaxソロやGのリフで始まりますが、Voが出てくると硬く垂直飛びをするようなビートになります。スローな曲ですが、Saxも沢山入っています。 ★B4 “Ich Zünd Mich An” (2:10)では、Gのリフから始まるアップテンポな曲で、早口Voと対比して、途中のGのリフがしょぼくて素敵ですね。最後はスパニッシュっぽいアンサンブルで終わります。 ★B5 “Mono-Ton” (3:49)は、最初、片方のスピーカーからしか音が出ておらず、故障か?と思い、そのまま聴いているとアップテンポのパンキッシュな曲なんですが、意外とGもフリーキーにかき鳴らされています。途中で反対側から人声が聴こえてきて、わざとなんだなと安心しました。 確かに、このアルバムは、単にパンクの枠では収まらずに、割と変なアレンジやちょい複雑な曲構成も聴けて、Hans-A-Plastのよりフリーキーな面とかポストパンクな面が出てきているようです。なので、このメンツでは最高峰の出来ではないでしょうか?また、Bの音も充分聴こえ、そのフレーズも絶妙で、また、BettyのVoとの掛け合いも良い味付けになっています。しかも、独逸語歌詞を早口で歌ったりして、独特のユーモアもあり、正しく、Hannoverの代表的ポストパンク・バンドに成長していますね。なので、ポストパンク好きなリスナーさんはトライしてみては如何ですか? 因みに、元々、彼等はX-Ray Spexのライブで衝撃を受けて、バンドを始めたようです。 https://youtu.be/B_YGaSe5scs?si=tMRk_KzSumHk00HU #Hans-A-Plast #2 #TapeteRecords #Reissue #2023年 #NoFunRecords #1981年 #2ndAlbum #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Punk #PostPunk #AnnetteBenjamin #JensMeyer #MichaPolten #RenateBaumgart #BettinaSchröder
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Post Punk Tapete Records (No Fun Records) €10.00Dr K2