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Andreas Dorau Und Die Bruderschaft Der Kleinen Sorgen “Demokratie“
今回は、またまた、Andreas Dorau (アンドレアス・ドーラウ)関係を!Discogsで調べてて載ってないなあと思っていたら、後に続く、Die Bruderschaft Der Kleinen Sorgen (ディー・ブルーダァシャフト・デア・クライネン・ザールゲン; 「ちょっとした悩みのある親友」の意)も含めてのアーティスト名だったので、漸く分かりましたが、この名義では、本アルバムと表題曲のシングル1枚しか出ていません。なので、実質、Dorauのソロと考えても宜しいかと思います。それで、この作品の一つ前の作品は、所謂Die Andreas & Die Marinas名義で、かつメジャーから出ていたのですが、その時に、音楽産業のやり方にほとほと嫌気が刺して、一時期、映像作家への道も目指していました。しかしながら、再び、音楽の世界へ戻ってきて、暫く振りに制作されたのが、本作品となります。「クラウトロック大全」によると、英国で活動していた時に、Flying LizardsのDavid Cunninghamと知り合い、彼を通じて、Michael Nymanをアレンジャーに起用して制作されたとのことです。しかも、古巣のATA TAKからのリリースとなります。そして、本作品の参加者は、Andreas Dorau (Vo, Synth, Kbd, etc)とそれ以外に、Christian Kellersmann (Sax), Christoph Bunke (B), Moritz von Oswald (Drs)がいます。それで、A1-B7はオリジナルに収録されていますが、B8-B9は、再発盤でのボーナストラックとなっています(A面8曲/B面9曲収録)。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Immer Nur Warten” (2:06)は、可愛らしいKbdの響きとワルツのリズムに乗って、地声で歌うDorauが何とも瑞々しい。最後はマーチ調になってフェイドアウトします。 ★A2 “Sei Steif!” (2:50)は、タイトなリズムのノリの良い曲なんですが、ワザと不協和音を使ったりするところがニクいですね。弦楽四重奏やシンセの間奏も中々のアレンジです。 ★A3 “Demokratie” (4:02)は、表題曲で結構ロック調ですが、何とも可愛らしい声で「これが民主主義だ!」なんてサビで歌うのは変な違和感があって、聴いている方がくすぐったいです。声での管楽器のマネもおちょくってるみたいで、如何にもATA TAKっぽい。 ★A4 “Sucht Eure Tat” (2:58)で、もろバロック調の室内楽をバックに、掠れ声で歌うDorauは、何故か悲し気で、こちらまで泣ける。何故か、戸川純を思い出します。 ★A5 “Taxi Nach Shibuya” (3:18)も、弦楽器の爪弾きのイントロからクラヴィアと打ち込みBの清らかなメロディですけど、間奏の弦楽器が入っているところが、Dorauらしいインスト曲です。 ★A6 “Blume '86” (2:35) は、再び、タイトなリズム隊とDorauのKbdワークとVoが冴える1曲になっています。、 ★A7 “Tradition” (1:47)では、弦楽器のリズムにクラリネットのサブメロディをバックに、変調Voで対抗していますが、サビではDrsも入ってきて、力強く曲が進行します。 ★A8 “Frauenfüsse” (3:01)は、軽やかなリズム隊とKbd に、爽やかにDorauに歌ってますが、聴いてるこちらが気恥ずかしくなります。「ラララッ」って歌うのも、何だかDorauっぽくて良いですね。 ★B1 “Stehst Du An Der Himmelspforte” (3:41)は、カッコ良いビートに、DorauのVoとエレピが乗るポップ・ロック調の曲で、ちょっと異色です。最後のSaxとエレピの絡みもサイコー! ★B2 “Na, Du Alte Kuh” (2:38)も、タイトで強力なリズム隊にシンセでの刻みと、やや落ち着いたDorauのVoが乗り、間奏のシンセとSaxの絡みもカッコ良い! ★B3 “Ein Liebesraum” (2:14)は、一転、Logic Systemか⁈と思いましたが、スローで落ち着いた曲ですが、変調Voで「TOKIO〜」とか歌っていて、ちょっとクスって。曲自体は素晴らしいです。 ★B4 “Ein Fall Für Dr. D” (2:49)は、指パッチンとBとエレピのイントロから、Drsと共に女性のスキャットとコーラスが瑞々しいメロディを歌いあげており、これぞ!Dorauとも言うべき曲です。 ★B5 “Immer Noch Warten” (2:45)は、勇ましいマーチのリズムに、ナヨっとしたDorauのVoが「おい、大丈夫かぁ?」とツッコミを入れそうな勇壮な曲です。 ★B6 “Willi Im Busch” (2:28)は、ちょっと悲しげなワルツの打ち込みから成るインスト曲です。暫し、休息かな?でもメロディは最高で、泣けます。 ★B7 “Ein Tropfen Geht An Land” (1:02)は、ジェット機音のイントロから始まる、女性とのデュエットの小曲です。 ★B8 “Menschenschicksale (1. Version)”では、ループ音のイントロから、柔らかい女性Voが優雅なワルツのリズムに乗って流れていきますが、Dorauは歌っていません。最後は不協和音。 ★B9 “Ein Liebesraum (Remix)”は、打ち込みのリズム隊に、ゆったりしたシンセが流れ込んできて、没入してしまい、甘い気分になります。そこに「TOKIO〜」と一回だけ入ります。 全体としては、Die Marinasを引き連れていた頃よりも、格段に大人びた曲調になっており、彼の成長/本来の音楽的指向が伺えます。それにしても、彼の曲と言うのは、多分ブラインドで聴いても、Dorauでしょ?と分かるくらい、個性的だと思います。それで、思ったんですが、日本で言うと戸川純が一番近いかなぁと。当然、男女の違いはありますが、中々、「大人」になれないけど、本人は頑張っているところの立ち位置なんかは似てると思えます。まぁ、そんなこと言うのは、私だけかもしれませんが。本作品では、バックの演奏もタイトで、しっかりしていので、また、今までの童謡調ポップ・ミュージックとは異なり、その分、音楽的にも楽しめます。多分、Michael Nymanのアレンジ力も後押ししているのだと思います。それで、解説書を読んだら、「Dorauは、Frank Zappaか?Morzartか?」と言う見出しが付いていましたが、「変だって?いや、彼はMozartだから。」と締めてありました!分かるわぁぁ❗️ https://youtu.be/8d_vx7JiBlw?si=f7YKgO5qcc6jesRp #AndreasDorau #DieBruderschaftDerKleinenSorgen #Demokratie #BureauB #2012年 #Reissue #Remastering #ATATAK #1988年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #SynthPop #Electro #Synthesizers #ChristianKellersmann #ChristophBunke #MoritzVonOswald #Co-Producer #FrankFenstermacher #Arranger #MichaelNyman
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop Bureau B (ATA TAK) €20.00Dr K2
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A. K. Klosowski & Pyrolator “Home-Taping Is Killing Music”
実は、この作品、CDでは持っているのですが、どうしても、アナログで聴きたくなって買ってしまいました。そして、1990年代に西新宿の某専門店で初めて、この作品の存在を知った時は、凄くショックでした。ジャケ写とかインナーの写真を見てもらえると分かるのですが、10数台のカセット・ウォークマンを連結して、それぞれに長めのテープループを仕掛けた、完全手作りの「アナログ・サンプラー」のような装置(? 楽器?)を使って、他の楽器と一緒に演奏し、それを録音していたからです。当然、1985年頃にサンプラーと言えば、非常に高価なEmulator-1がやっと市場に登場した時期でしたので、このLo-Fiでアナログな発想の凄さにビックリした訳です。そのテープ・ループ・マシンを作製したのが、Arnd Kai Klosowski (アルンド・カイ・クロゾヴスキー)で、それと共演しているのが、Der Plan及び面白音楽の宝庫ATA TAKで有名なPyrolator (ピロレーター)ことKurt Dahlke (カルト・ダールケ)で、それぞれの志向を思い浮かべると、両者の会合は必然でした。これを使えば、サルサのトランペットとグレゴリオのコラールが出会い、鉄道のノイズとカンボジアの音楽が出会い、ゴスペルとバイエルンのヨーデルが出会うことが可能であるとのこと。いやはや、こう言う「自作楽器」を作り、また、それで「音楽」を作ろうとする柔軟な思考とそれをやり切る努力には本当に頭が下がります。 それで、A. K. Klosowskiのバイオグラフィーを簡単に書いておきます。彼は、1968年に、ハンブルクのAlbert Schweitzer中学校に通っており、そこの音楽教師がクラシックだけではなく、The Beatlesとかテープループとかも教えていたそうで、Klosowskiは、テープループを作ることに熱を上げていました。そこで思いついたのが、第一世代のPhilipsのカセット・レコーダーを使ってみることでした。そうして、1970年代末〜1980年代初頭に、ちょっとしたメモリー機能も付いたテープループマシンを作り上げます。彼自身はジャズギターもやってはいましたが、このマシンには全く合いませんでした。その後、彼は金細工職人になる修行の為にミュンヘンに移りますが、やはり、このマシンを使って音楽をやりたいと思い、ディスコでDJがブース内でやっていることに利用できないかと思い付きます。そこで、彼は8チャンネルのミキサーを用意して、友達の手を借りて、即興的に、このマシンを操作してみます。しかしながら、その「演奏」を理解してもらえる人はいませんでした。そこで、彼は中学校時代のテープループの実習を思い出し、再び、改良を加え、このマシンを完成させて、自分自身で最初の録音を行なってみます。その録音した作品を、独自主制作レーベルZickZackのボスAlfred Hilsberg (アルフレート・ヒルスバーク)に聴かせます。Alfredは、好意的な反応を示しますが、彼から「多分、君のやりたいことは、ATA TAKのPyrolatorが適任だよ」とアドバイスを受け、早速、ATA TAKに連絡を取ります。しかしながら、Pyrolatorは当時、プロデュース、レーベル運営、出版そして音楽活動等で時間が中々取れませんでした。しかしなが、Pyrolatorは、彼に録音仕方などの音楽のイロハを教えつつ、1984年/1985年に1週間で一緒に作ろうと約束してくれて、Klosowskiは自作のテープループマシンを、Pyrolatorも自分の特注のコンピューターBrontologik (Korg MS-20やYAMAHA DX-7を動かす為のシーケンサー・システムの一種)での演奏を録音しています。2人は、面白いサウンド・コラージュが出来たと満足し、更に、曲になり得る部分をトリミングして出来たのが、本作品とのことです。この作品は、2人の志向が似ていたのとも幸いしていたようです。つまり、2人は、サウンド・コラージュやオブスキュア・ミュージック、新しいテクノロジーに興味があったようです。それで、出来上がった作品は、当初、ZickZackから出そうと思っていたそうですが、Alfredに、ATA TAKの方がカラーが合っていると言われたことで、ATA TAKからリリースされた訳です。現在、Klosowskiは、ハンブルクで金細工職人として働いており、勿論、マシンの方もまだ持っているそうです。 上記の流れの中で出来た作品ですが、最初は、Klosowskiの単名で、Pyrolatorはプロデュースと言うことも考えられていましたが、最終的には、2人の共作と言うことになりました。私の購入した作品は、再発盤なので、A1-B2が1985年作のオリジナルに収録されており、B3-B7は、今回の再発盤でのボーナス・トラックとなっています(A面8曲/B面6曲)。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Overtüre” (0:36)は、仰々しいシンセとベースシンセから成る短い前奏曲です。 ★A2 “Österreich” (3:30)は、複雑な打ち込みドラムマシンとオーケストラのテープループに、カットインで入ってくるテープ音やシンセから成る曲ですが、不思議なメロディ感もあって、差し詰めちょっとした「室内楽」ですね。 ★A3 “Tschak” (2:44)では、アラビックなイントロから、ジャジーな曲調になり、時に他の雑多な音要素も混在しており、音的には複雑ですが、難解ではありません。 ★A4 “Hammond” (3:41)は、硬質なリムショットから、アップテンポの曲になりますが、変調した子供声らしき音やシンセ音などの色々な音が次々に出てくる楽しい曲です。ひっそりとシンセのメロディも流れています。 ★A5 “Agana Wudiov” (3:37)は、如何にもな人声のテープループから始まり、複雑な打ち込みリズム隊に合わせて、ループ音(ゴージャスなブラス音も)やシンセ音がちょこまかと絡み合う曲です。 ★A6 “What Made You So No Good” (3:45)は、Bのソロから始まり、囁き合う男/女の声のテープループ音やシンセのリフと可愛らしいリズムとが淡々と綴られる曲で、一番落ち着いた雰囲気です。 ★A7 “Heimat” (2:41)では、変調した人声のループ音とマシンリズムが変な調子で絡み合う曲で、硬質なシーケンスやシンセ・ソロも聴取できます。教会の鐘音で終わります。 ★A8 “Dahomey” (5:07)では、爆発音らしき音の後に、タブラらしき打楽器のループと時折のドラムマシン音で曲が進み、段々と中近東風の歌(多分テープループ)の断片やいびきの音が入ってきます。中々ユーモラスなセンスです。 ★B1 “You Know I Need” (3:18)は、ショット風のシーケンスと打ち込みドラムに、エコーが掛かった人声のテープ音やシンセのリフ等が巻き垂らされつつ入ってくるゆったりとした曲です。 ★B2 “ZV9” (3:52)は、いきなりロックGで始まりますが、それのループに同期した打ち込みリズム隊が入ってきて、擬似ロックな曲に仕上がっています。「Gソロ」もあり、中々カッコ良い! ★B3 “Hi Fidelity” (3:28)では、ハウス風のシンセ音ループから始まり、四つ打ちキックと同期して進みますが、当時、ハウス・ミュージックは、それ程世間に浸透していなかったと思われますので、その先見性は素晴らしいです。 ★B4 “China First On Mars” (5:52)は、ロケット発射のカウントから始まる曲で、不明瞭なマシンリズムにシンセのメロディが延々と続く中、ディレイを掛けた人声や不明な音等が次々に投下されていきます。僅かに中華風の女性の歌唱も含みます。 ★B5 “Österreich (Roughmix)” (3:43)では、バンブーリズムと人声のテープ音で始まり、中々複雑な打ち込みリズム隊(時に逆回転も)に、アコーディオンの音の残骸も時に聴取されます。 ★B6 “Dahomey (Roughmix)” (6:19)は、不鮮明なリズム音のテープループにタブラの音等が加わり、中近東風歌声のテープ音の断片も撒き散らされる曲で、シンセ音はA8ほど入っていません。マントラのような曲です。 久しぶりに聴いてみましたが、当時、聴き流しながら聴いていた時と異なり、じっくり聴いてみると、そこここにテープループ音が上手くハマっており、仕上がりを聴くと、流石Pyrolatorと言うべきミックスになっていますね。まだ、ボーナストラックでの聴き比べも面白かったです。多分、Klosowskiだけではここまでの音楽性は確立出来なかったのでは?と思います。逆に言うと、全体的にはPyrolator色も強いのですが、Klosowskiのテープループマシンによって、異化されており、そのバランスは絶妙ですね。今や、サンプラーなんて素人でも手に出来る機材ですが、この時代にこう言うアナログ・サンプリングによる音楽が世に出た意味は大きいですね! https://youtu.be/IihmgkcUboE?si=Xwig_-XSgn5RTeNn [full album] https://youtube.com/playlistlist=PL22Aa1wSmDcUFSSA7H5YIt3KXl-i2cABf&si=_Btq-jQltzPlSgIc #A.K.Klosowski #Pyrolator #Home-TapingIsKillingMusic #BureauB #2013年 #Reissue #Remastering #ATATAK #1985年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #HandMadeCassetteSampler #TapeLoopMachine #Brontologik #Experimental #Electro #SoundCollage #ObscureMusic #TechnicalInnovation #ZickZack #AlfredHilsberg
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Experimental Pop Bureau B (ATA TAK) €20.00Dr K2
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Holger Hiller “Ein Bündel Fäulnis In Der Grube”
今回は、独Palais Schaumburgの初代Vo/Gとしても有名なHolger Hillerの完全なソロとしては、ファースト・アルバムに当たる“Ein Bündel Fäulnis In Der Grube”がめでたく独レーベルBeau Bから再発されましたので、紹介していきたいと思います。Palais Schaumburgについては、以前にもバイオグラフィーは書いてありますが、Holger Hillerについては、今回が初めてなので、彼のバイオグラフィーをちょっとだけ書いていきます。Hillerは1956年12月26日、独Hamburg生まれで、ハンブルク造形芸術大学に通っていた時に、Walter ThielschとThomas Fehlmannとに出会い、3人で初めて録音をしています。HillerとThielschで、”Konzentration der Kräfte”EPを、また、HillerとFehlmannで、”Das ist Schönheit”と言う曲を2枚組のコンピLPに提供し、1980年にリリースされています。その後、Fehlmannと共に、1980年にPalais Schaumburgを結成し、そこでVoを担当します。1979年に、Palais Schaumburgとしてのデビュー・シングル”Träneninvasion”をZickZack Recordsから出して、その後も、他に2枚のシングルをZickZackより出して、1981年に、セルフ・タイトルのデビュー・アルバムを大手のPhonogram Recordsから出しています。と同時に、Hillerはソロ活動も開始しており、欧州で初めて、メインの楽器としてサンプラーを使ったミュージシャンの一人と言われています。ソロとしてのデビューシングル”Holger Hiller”を1980年にAta Takよりリリースしており、1983年には、本作品でもあるソロとしてのデビュー・アルバム”Ein Bündel Fäulnis in der Grube”をAtaTakから出しています。1984年に、彼は渡英し、LondonでMute Recordsのプロデューサーとして働き始めます。その間にも、1985年には、Hillerは、独のミュージシャンAndreas DorauとのコラボEP”Guten Morgen Hose”をAtatakから出しており、翌年には、Hillerは、ソロアルバム”Oben Im Eck”をMute Recordsから出しています。その後、1988年には、ビデオ・アーティストの羽田明子と共に、Ohi Ho Bang Bangと言うパンドと言うかプロジェクトを始め、”The Three”と言う作品を12㌅シングルとCD Video (CDV)と言う2つのフォーマットでMute Recordsからリリースしています。そのCDVでは、HillerとKarl Bonnieは、一つの部屋でそれぞれのモノを使って、異なる音を出し、それらを羽田が編集して、一連のビデオの流れの中で、その音の鳴らし方が自然になるようにして作ったと言う映像と音楽が収録されています。彼等は、音楽からビデオへのサンプリング・テクニックの先駆者になりましたが、ほんの10年後には、カスタマイズされたソフトウェアで出来るようになり、すっかり普通の技法となっています。1995年頃まではアルバムもコンスタントに出していましたが、その後はリリースは途絶え、2000年に、アルバム”holger hiller”をMute Recordsから出したのが最後となっています。なお、2003年以降、HillerはBerlinに居を構え、英語講師として働いているとのことです。 以上が、Holger Hillerの遍歴となります。それで、今回、ご使用するアルバムは、ジャケが変わったりして、3回程再発されていますが、今回のが4回目再発となります。それで、本作品に参加したメンツは、Holger Hiller (Sampler?, Mix, Produce)以外に、Catherine Lienert (Emulator), Jürgen Keller (B), Moritz von Oswald (Drs)もいます。Hillerが実際には何をやっているのかは良くわかりませんが、、、。また、Hiller本人の考察によると、本作品がリリースされたのが、1983年と言うこともあって、同時に、George Orwellの小説”1984”やそれを元にした映画”Blade Runner”には、人々は暗澹たる気持ちに支配されており、それらの中では、救いようない世界しかないと描かれています。そして、未来は決してクリアカットではなく、ディストピアのイメージがポップ・カルチャーに巧妙に混ざり込んでいますが、それ自身が希望の素となるように仕込んでおいたとのこと。また、彼は、サンプリング・テクニックと言うのは、彼自身や他の人にとって画期的な音楽的手法であって、カットアップとか自動書記とかに馴染んでいるWillam Burroughsの世代及び彼を興奮させたものであり、以上のようなコンセプトやテクニックを、「ポップ」の文脈で使い、欧州における「新しい音楽」に影響を与えたのが、このアルバムであるとのこと。要するに、画期的であったと言うことらしいです。まぁそれは別として、本作品(A面6曲/B面5曲)の各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Liebe Beamtinnen Und Beamte” (1:56)では、何とも異形のポップ・ミュージックを披露しています。確かにサンプラーをふんだんに使って、ビートに合わせている為か、カクカクしたリズムになっており、それにVoを乗せています。 ★A2 “Blass Schlafen Rabe...” (3:17)では、「骨折具合」は多少マシですが、ピアノの単音弾きとBとサンプラーの混合物が、骨折しかけたリズム隊の上で踊っていますが、時にノリの良い部分も。 ★A3 “Budapest - Bukarest” (2:12)は、小動物のような音と鐘の音で始まり、やがて反復するサンプリング音も加わり、一種のアンビエンスさえ感じますね。 ★A4 “Jonny (Du Lump)” (3:35)は、彼の代表曲で、割とノリの良い曲で、それ程「骨折」も無く、Drsは一定のリズムは刻んでいます。HillerのVoも良いです。 ★A5 “Akt Mit Feile (Für A. O.)” (1:54)は、一定のパタンを取るリズム隊と思ったのですが、やがてインダストリアルな硬質な音へ変換されたり、戻ったりします。 ★A6 “Hosen, Die Nicht Aneinander Passen” (1:06)では、点在する電子音をバックに、Hillerが飄々と歌っています。 ★B1 “Chemische Und Physikalische Entdeckungen” (2:57)は、犬の鳴き声らしき音から始まり、割と短いパタンを繰り返して、更に人声のサンプリングを挿入したり、弄ったりして、全然落ち着きません(褒め言葉です)。 ★B2 “Mütter Der Fröhlichkeit” (3:48)でも、やや落ち着いたリズム隊に、Voやサンプリング電子音や物音等を挿入している曲で、Hillerのポップネス全開です。空間の使い方が素晴らしい! ★B3 “Ein Bündel Fäulnis In Der Grube” (2:47)では、エフェクトを掛けたフィードバック音とガチャガチャした音、囁くVo、工場の音等等がリズミックにコラージュされています。 ★B4 “Das Feuer” (3:40)は、ディスコチックなDrsに、ドライブするBと囁き声での反復Voが絡み、時にサンプリング音や重層化されたVoが挿入される曲で、後半には多幸感溢れるシンセ音も! ★B5 “Ein Hoch Auf Das Bügeln” (2:00)は、これまたリズムを無視したようなサンプリング音の断片から成る曲で、ここに無理やり歌を入れると言う、Hillerらしい曲ですね。 私がこれを聴いて思ったのは、 Hillerは、自分だけの時間軸を持って曲を作り、独自の空間性を持って音を配置しているのではないかと言うことです。しかも、それをポップ・ミュージックの範疇に納めようとしている所が、Hillerの最大の特徴だと言うことです。なので、通常のポップ・ミュージックからは溢れてしまいそうになり、そのギリギリのコーナーポストを狙っているような音楽が、結果的に生まれてしまったような気がします。まぁ、そんなミュージシャンがサンプラーを使うと言うのは、当然と言えば当然な訳です。そして、Hillerはいつも自分なりの「ポップネス」をこちらに投げかけてきます❗️そんな特異なポップ・ミュージックを是非とも体験してみては如何でしょう。 A4 “Jonny (Du Lump)” https://youtu.be/xr0l_Yi7QtU?si=oI8MaPmNZ08UarXq [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mf5lSwtr5vRWDT-L7uOOLMO0G8GnZSpxg&si=yewGTQiIbLTTFbxw #HolgerHiller #EinBündelFäulnisInDerGrube #BureauB #ATATAK #Reissue #Remastering #FirstAlbum #SoloAlbum #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Experimental #ElectroPop #Avant-Garde #Sampler #WilliamBurroughs #CutUpTechnique #AutomaticWriting #GeorgeOrwell #1984 #BladeRunner #Guests #CatherineLienert #JürgenKeller #MoritzVonOswald
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop Bureau B (ATA TAK) 4840円Dr K2
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Pyrolator “Pyrolator’s Wunderland”
これで漸くPyrolatorの”なんちゃらland”シリーズをコンプリート❗️これが作製されたのが、1983年〜1984年なので、機材的にも曲調的にも最も私の好みの時期の作品です。要するに、Neue Deutsche Welle的で、音もそれ程デジタルでない辺りの音源であると言うことです。これは、Pyrolator (本名Kurt Dahlke「クルト・ダールケ」と発音)の魅力が詰まったアルバムです(まあ、私のは再発盤ですが)。チープなリズムマシンに、比較的短い曲が並んでおり、聴き疲れないし、曲のエッセンスを体感できるので、好きなアルバムですね、Der Planの時と違い、インスト曲で、そこはかとないユーモアも塗してあって、これぞ、宅録インスト系German New Waveの究極型と言えるのではないしようか? また本作品にはFrank SambaやFrank Festermacher (Der Plan)も少しヘルプで入っていますし、デザインではMoritz Rrr (Der Plan)も協力しています。ユーモアを醸し出す曲以外にも、割とシリアスっぽい曲もあり、Pyrolatorの音楽的幅を感じさせてくれます。個人的には、彼の”なんちゃらland”シリーズでは一番気に入ってます。ジャケ絵もDer Plan調ではありますが、本作の内容を端的に表していると思います。Neue Deutsche Welle (German New Wave)に興味がありましたなら、是非、このアルバム「不思議の国」を体験してみて下さい。 A1 “Im Zoo” (2:42) A2 “Große Welt, Kleine Welt” (2:21) A3 “Der Geruch Der Stadt” (2:47); Frank Samba (Shaker) A4 “Rush Hour In Singapore” (3:16) A5 “Die Hängebrückenbauer” (3:40); Frank Samba (Hi-Hat, Tom Tom) A6 “Hal’s Dream” (3:38) A7 “Am Morgen + Ein Spaziergang” (2:43) A8 “Ein Herrenzimmer In Schottland” (3:58) A9 “Blick Durch Eine Zeitlupe” (1:10) A10 “Atlantisches Intermezzo” (2:53) B1 “Gespräch Mit Der Erde” (4:02); Frank Fenstermacher (Drs) B2 “Passage To Melilla” (2:58); Frank Samba (Brushed Snare) ◉Bonus Tracks: B3 “Augenblick” (5:55) B4 “Programm 15” (1:41) B5 “Pisang” (4:11) B6 “Abschied Von Einer Schönen Zeit” (3:47) B7 “Ein Spaziergang (Lange Version)” (5:38) A4 “Rush Hour In Singapore” (3:16) https://youtu.be/3720hC8Ay_0?si=bLdYPChABu4qhjn_ [full album; Bureau B盤] https://youtube.com/playlist?list=PL22Aa1wSmDcW9iJ5V9TY6w5qt55Mc6Ufk&si=_svAC9yfZP1tvqMf #Pyrolator #Pyrolator’sWunderland #BureauB #Reissue #BonusTracks #2013年 #AtaTak #1984年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #DerPlan #KurtDahlke #Electronic #Synthesizers #Instrumental #Guests #FrankSamba #FrankFenstermacher
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Bureau B (ATA TAK) 7000円?Dr K2
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Pyrolator “Traumland”
またまた出ました。Der Planの音楽的頭脳Krut DahlkeことPyrolatorの”何ちゃらLand”シリーズ第4弾「夢の国」です(「トラウマランド」ではないです❗️)。今回は様々なヴォーカルなどのゲストを招いて作製されている点がこれまでのシリーズとは大きく違うところだと思います。また、順メンバーとして、Susan Brackeen (Vo), Joerg Kemp (Vo, Co-mix)とFrank Samba (Drs, Perc, Drs Programming)が名を連ねています。しかも、英語の歌詞で歌っています。また、日本のPicky Picnicもヴォーカル(A6 “You Me”)で参加、ギター (A5, A7 Pete Jekyll)或いはトランペット(A4,A5 Reiner Winterschladen)やフルート(B3,B5でSusan Windsberg)、そして、Der Plan及びATA TAKでの盟友Frank FenstermacherもA5 “Whiteness”でパーカッションで参加しています。彼等以外にも、A8ではGerhard Veeck (Sax), Biber Gullatz (Sax), Wietn Wito (B)でとバンド編成のようにもなっています。歌詞はSusan BrackeenやJoerg Kemp, Kaoru Todoroki, Kiriko Kubo & Yuji Asukaが担当しています。そして、曲の方でも進化がみられます。シンセもデジタルシンセに代わっており、良くも悪くも「今風に」なっています。色んな人がゲスト参加している為か、それまでやや禁欲的てあったPyrolatorの本領発揮とばかりに、弾けた(と言うか、はちゃめちゃに能天気な)曲作りやアレンジをしています。しかしながら、彼はこのアルバムで、「バンド」編成的なことをやろうとしていた訳で、その為に色んなアーティストの力を借りて、仕上げているようです。A2 “The Trophotropical House”のリズムは盆踊りのように跳ねる感じで良いですねえ。なお、再発LP盤にはボートラとして、”Ritual”, “Triggers Of Target II”と”Sao Paulo”がB面に追加されていますが、元のB1をA8にしてちょっと詰め込んでいます。ちょっと変則的ではありますが、欧米のポップミュージックとはちょっとだけ違うPyrolatorが料理した大人向けボッブスはどうでしょう❓きっとハマる人はハマりますから。 https://youtu.be/-ucwMyzlilA #Pyrolator #Traumland #BureauB #ATATAK #Reissue #KurtDahlke #GermanNewWave #NeueDeutscheWelle #Pops #SusanBrackeen #JoergKemp #FrankSamba
Neue Deutche Welle (German New Wave) Bureau B (ATA TAK) 4548円Dr K2