モンスター・クラブ・コンパイル -ゴジラ・ガメラ・ギララ 史上最大の音楽決戦!-

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帯に「モンスター・ムービー・レア・グルーヴ・バトル!!」とあります。「50~70年代のSFXならぬ昭和特撮サウンドが鼓膜を直撃するカルトコンピレーション」というわけで、これは隠れた大名盤。いや、これを隠れたままにしておくなんて、日本音楽界の一大損失です。とりあえず、各小学校に一枚は常備するよう手配して、子どもたちを洗脳……もとい教育しなければなりません。
「昭和特撮サウンド」などと言うと、例の伊福部昭のマーチ等を想像されるかもしれませんが、まったく違います。もちろん、あれはあれで燃えるんですが、このアルバムでは、怪獣なんて雰囲気は全然感じ取れません。勇壮な戦闘音楽もありません。悲劇的なメロディーもありません。流れてくるのは、ジャズ、ゴーゴー、サーフミュージック、サイケデリックロック(この名前自体が懐かしい)が唸りまくる、究極のラウンジ・ミュージック。ただただ快感、このままトリップしてしまいそうです。
「昭和特撮」の映画音楽というのは、実に多様で、実に贅沢だったのだなぁと改めて感動してしまいます。イカス音楽というものがどういうものか知りたかったら、このアルバムをお聞きなさい。さすがは泣く子も黙るVAPのミュージック・ファイル・シリーズ、期待どおり、いや、期待以上の素晴らしい選曲でマニアのツボを刺激しまくります。最早サントラなどという枠を飛び越えて、全世界に問うべき人類の至宝です。
『ゴジラ』シリーズでは、一段低い評価しかされていない真鍋理一郎の仕事、こういうところではなかなか聞けない、いずみたくの仕事、本当に素晴らしいものです。『宇宙大怪獣ギララ』のブロックで流れる激しいチェンバロは、ちょいとスゴイですぜ。
特に「ギララのロック」(台詞なしバージョンなのが少々残念)、「大巨獣ガッパ」、そして『ゴジラ対ヘドラ』の「かえせ!太陽を」なんて歴史に残るトチ狂ったボーカル曲を連続で聞かされた日には、曲に身を委ねる以外、何をする気も起きません。ギララの永六輔(!)、ヘドラの監督でもある坂野義光の作詞センスが光りに光っています。それにガッパの美樹克彦(実は、この人、私の小学校の大先輩だったりする)の伸び、艶のある声はどうでしょう!さすが「大嫌いだ、白い雲なんて」「バカヤロォォォォォッ!」の美樹克彦、怪獣映画の主題歌だからといって、まったく手抜きはありません。
五社協定(後に六社)なんて何のその、映画会社の垣根も取り払って、東宝、松竹、大映、日活から(あら、新東宝はともかく、東映がありませんね)、レアな佳曲が目白押しです。おまけに、各作品の完全盤アルバムが発売されている場合は、どこの会社のものであろうと関係なく紹介するという太っ腹なところまで見せています。他者を儲けさせるようなことしていいんでしょうか。ここんとこ、ちょっと心配ですね。更に、御覧のジャケットをはじめ、水野久美をフィーチュアしまくったアート・ワークも素晴らしすぎるほどに素晴らしい。騙されたと思って聞いてみていただきたい。とにかく聞いてくれ!いいから聞いてくれ!今すぐ聞いてくれ!

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