ベンチャーズ 国内盤ディスコグラフィ 30cmLP編
初版 2022/12/29 06:21
改訂 2024/07/23 15:33
始めに
私たちの世代は、ベンチャーズを通じてロックン・ロールを体験し、学習した。もちろん、ビートルズの存在を忘れるわけにはいかないけれども、ビートルズは次々と新しい音楽を切り開いて行った「イノベーター」であり、我々はそれについて行くことしかできなかった。ビートルズから受けたインパクトは限りなく大きかったが、我々はそれを受動的に受け止め、消化して行くだけで精一杯だった。それに対し、ベンチャーズは、より裾野に近い層(私もそのひとり)にとっても、判り易い材料をふんだんに提供してくれた。「下手でもやってみる」楽しさを教えてくれた。それまで、学校で聴かされる音楽や歌謡曲ぐらいしか知らなかった洋楽初心者にとって、ベンチャーズはギターやドラムのお手本であると同時に、ロックン・ロールそのものの原点だった。
ベンチャーズ人気がブレイクした1960年代は、様々なスタイルの音楽が共存していた時代で(当時の感覚としては、ビートルズもそのひとつだった)、そういった豊富なマテリアルがベンチャーズの膨大なレパートリーを形成して行ったわけだけれども、ベンチャーズのアレンジを通じて聴き親しみ、その真似をしながら、自然にロックン・ロールの基礎を身に付けて来た。これは、当時洋楽に目覚め始めた日本の若者層にとって、ある程度普遍性のある事実だと思う。
中学生の頃の私の小遣いは毎月500円だった。だから、シングル盤(330〜370円)でも1枚だけ、LPは何ヶ月分もため込まないと買えなかった。友達から借りたり、中古盤を安く買ったりで、かなり耳にすることはできたが、それでも次から次へと発売されるレコードの多くは揃えることができず、とても悔しい思いをした。
当時よりはいくらか余裕もできた時に、CDのヒストリー・ボックスをいくつか購入したのだけれども、どうもあの頃の悔しさが解消されない。ヒストリー・ボックスはオリジナルに忠実になり、編成もUS盤のそれに準拠しているのだが(それはそれで良いこと)、国内盤を聴いて育って来た私の感覚とはギャップがある、ということがひとつ。更に、もっと重要なことは、レコードの魅力というものが、「ただ単に音が出る」ということだけではなかったことに気付いたことだ。
当然、買ったレコードは何度も聴き返していたが、それ以外に、ジャケットを眺める,ライナーをなめるように読む,内袋に掲載されている商品を確認するといった、聴きながらやっていた行為が、レコードの魅力と切り離すことのできない、とても重要なことだったわけだ。買えなかった盤も、何度となくレコード店に足を運び、さんざん眺め回してはエサ箱に戻していたわけだけれども、その時の空気感のようなものも含め、自分にとってはレコードの魅力の一部であったわけだ。
そこで、あの頃の無念さを晴らすためには、当時の国内盤(アナログ)を集めるしかないことが判り、少しずつ買い集め始めた。徐々に枚数が増えてくるのに伴って、自分なりに情報も整理してみたいと思うようになり、それがこのディスコグラフィにもつながっている。
アルバムの整理方法について
国内での発売順をベースとしているが、新装再発盤などの「同種」と考えられるアルバムはひとつのグループとし、そのグループ単位に一連番号(JLPナンバー)を設定した。本ディスコグラフィは、そのJLPナンバー順にアルバムを取り上げている。
【「同種」とみなす基準】 「収録曲の80%が重複していること」とした。(12曲収録だと10曲以上、14曲収録だと12曲以上ということになる)これを「完全一致」とする方法もあるが、そうした場合、カラーフル・ヴェンチャーズの初期の盤(LBY-1007,LP-7161) と後期の盤(LLP-80803,GXH-45,TOJP-7248)は別アルバムということになってしまい(「急がば廻れ」と「ブルーアー・ザン・ブルー」だけの違い)、これだと一般的な認識とのギャップが生じると考え、採用しなかった。
また、考え方の統一性を重視し、この「80%ルール」を原則としているので、アルバム・タイトルの類似性は考慮していない。従って、「10番街の殺人(LP-8734)」は全14曲のうち12曲が「ノック・ミー・アウト(LP-7200)」と重複しているので同種ということになり、「カラーフル・ベンチャーズ(LP-8760)」は、初期盤(LBY-1007,LP-7161)との重複曲が6曲しかないので、同じアルバム・タイトルではあっても別種ということになる。
対象アルバムは、ベンチャーズ名義で正式に一般発売されたもののみとした。他のアーティストとの競演盤については、「ボビー・ヴィー・ミーツ・ザ・ベンチャーズ(K22P-9148)」や「Yuya Meets The Ventures(LLS-80302)」が、アルバム全体にベンチャーズの演奏を収録しているので、「ベンチャーズ名義に準ずるもの」と解釈して対象にし、「トリニ・ロペス&ザ・ベンチャーズ(日REPRISE : SJET-8208)」や「BLUE JADE/エディ藩(WTP-90151)」などは、あくまでもゲストとして 或いは 1曲のみの共演なので対象外とした。その他のオムニバス盤,通販等の特殊ルートのみで販売されたもの,プロモーション用のレコード等は対象外としている。