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大峡製鞄 ダレスバッグ サンタクローチェ
大峡製鞄のダレスバッグ
社会人5年目を迎えた時、
これから先の長いお仕事人生において60歳になってもずっと大切にできる物を、という思いで購入しました。
自分がおじさんになったころ、
若い人から『渋い鞄をお持ちですねぇ』と言われた時に
『実はあなたくらいの歳の頃にこんなこんなで手に入れた物を今も大切に持っているんですよ』なんてエピソードを話しているイメージができて、
なおかついまはまだまだ身の丈に合わなくともこれに見合う人に少しずつでも近付けるように、との願いもありました。
当時は会議終わりにひとり百貨店へ行き、
同じものをあるだけ見せてくださいと店員さんにお願いし、
それぞれ微妙に異なる革に浮かぶ血管の模様や、持った時のしっくり感、縫製の糸の具合やらを白い手袋をしてスポットライトの光に当てて1時間以上悩みに悩んで三つのうちから一つを選んで帰ってきました。
ただ、この鞄でお仕事をするようになった一年間は驚くほど成績が奮わず苦しい年になってしまい、
翌年に代わった上司からは『生意気な物を持って』とか『格好と能力が見合っていない』『初心に帰ったらどうだ』などと散々な言われようでした。
人生でここまで他者に軽んじられたり、理不尽な扱いを受けた経験は後にも先にもなく、何の意味があってこのようなことになるものかと常日頃考えていました。
萎縮して良い仕事は絶対に出来ないということを学び、
同じ事を自分より若い人にしては決してならないと心に刻む経験になりました。
以来この鞄は2年ほどで棚に保管することとなり、再び手にして毎日の業務に励むようになる姿を思い描きつつ、今はまだナイロンの鞄を手にお仕事に努めます。