車の紙模型からイギリスの悪法「Red Flag」を知る
初版 2024/03/30 01:18
改訂 2024/03/31 19:09
「いにしえの名車たち」という副題の Shell Berre 紙模型は、ミニカーを作りながら歴史に触れる玩具でした。60年後にリペアしたり組み立てて遊んでいる大人にとっても、初めて知ることが多く楽しいので、紹介します。
赤い旗を振りながら、車の前を人が歩くことを義務づけた「Locomotive Act / 機関車法」という法律について。
イギリスで蒸気エンジンが発明されたのは、産業革命のごく初期に、燃料だった石炭を掘る炭鉱が深くなるにつれ滲み出てくる地下水を、効率よく汲み上げる装置としてだったようです。それが、水車の代わりに機械類を動かす動力となって産業革命を押し進め、のちに馬より速く人や物を運ぶ「機関車」にも応用された。
1840年ごろの絵から、蒸気動力車の巨大さがうかがえます。そして、小さいながら速度の出るガソリン自動車も登場する頃には交通事故が問題になる。「危ない機械の乗り物をなんとかせよ」という声に応えて1865年に「Locomotive Act / 機関車法」が制定されました。その法律は「すべての機械式車両の前に、赤い旗を振りながら先導する人」を義務づけ、「最速スピードは時速5.6キロである」という但し書きが付いていたらしい。
のちに再現された写真とイラストから垣間見ると、こんな感じです。
赤い旗を持って歩く人の後ろ進む車を、警官や道ゆく人がじろじろ見ています。子供が先導した例もあったのですね(旗が小さすぎでは?)。
同じ「内燃機関つきの車」でも、レールを走る蒸気機関車にはこの制限がなかったので、自動車の開発に関わっていた技術者たちがこの法律を機に鉄道へと仕事を変え、それでイギリスの鉄道網が発達した、という説もあるようです。
さすがにこの法律は非難轟々を受け、それでも30年も続いたのち、やっと廃止されたのが1895年。廃止の日、自動車乗りたちが集まって「祝賀の走行」をしたのが今日に続くイベント「London to Brighton Run」の始まりで、今もスタート時に赤い旗を破って、規制の終わりを祝うのだそうです。
London to Brighton Veteran Car Run(ウィキ記事/英語)
https://en.wikipedia.org/wiki/London_to_Brighton_Veteran_Car_Run
画像を見つけた「Red Flag」の記事
https://tinyurl.com/3cywvyps
+++
Red Flag と言えば「悪法の代名詞」らしいこの法律について、フランス語の解説を読むまで(Photosの言語コピペ機能と翻訳AIありがとう😭)知りませんでした。これ↓が、技術者の戻った自動車産業が「自由に走る権利」を謳歌しつつ発表した、ローバー社の1909年の車です。
tomonakaazu
ほぼ四半世紀になる切手コレクターです。切手ブログ『 wellcentred 』を2009年より綴っています。
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紙の模型やジオラマを作ったり集めて修復する、はかない紙もの愛好家(Ephemerist)でもあります。
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職業は家具やプロダクトなど立体系のデザイナーで、紙模型好きが高じて名作家具と室内のジオラマをキット化しました。
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レイレイ
2024/03/30 - 編集済み勉強になります🚩
30年も?!…おどろきです🚗
赤旗を持ったフィギュアも立たせたいですね。
9人がいいね!と言っています。
tomonakaazu
2024/03/31レイレイさん。
コメントありがとうございます♡
>>赤旗を持ったフィギュア
この車の縮尺1/32にして立たせる、車の年代のファッションを装った人たちの図を探し始めていたのですが、、、そうですよね!赤旗のフィギュア!!
8人がいいね!と言っています。
fanta
2024/03/31 - 編集済み乗り物の前を人が先導…
いかにも危なそう、、と思いつつ、
当時は人の通行目線がなにより優先って感じだったのが面白いです😁
車にとって自由に走る権利💨
なるほど、目線を変えると新鮮ですね。だからこその、その後の車の発展なんでしょうね~😊
7人がいいね!と言っています。
tomonakaazu
2024/03/31fantaさん。
>>いかにも危なそう
まったくです。赤い旗を持って怪我した人もいたのでは?と思いました。
今では、産業を振興させてもっと車を売ろう!という政策が長く、イギリスでは人や自転車よりも車が優先されている気配があります。さすがに、赤い旗の時代には戻れないけれど、これはイカンのでは?と思うこともありますねー。
6人がいいね!と言っています。