明治期 若狭塗 変り塗十種 吸物椀

初版 2022/10/01 11:58

改訂 2024/02/25 17:29

コレクションのところでもご紹介していますが、若狭塗の吸物椀の画像を纏めて掲載します。

若狭塗のところでご紹介した説明文を載せます。
十種の変り塗が施された吸物椀が二客ずつ、合計二十客です。箱蓋の裏に「明治参拾七年求之」と書かれていますが、どうも合わせ箱のようで椀自体はそれ以前の製作のようです。はじめてこの椀を見たとき、この椀揃えに大変興奮しました。外側からは何の変哲もない黒の椀に見えますが、蓋を開けると身と蓋の裏に華麗な変り塗が見えるという趣向です。お客を驚かせる、そんな趣向があったものと思われます。

外見は黒塗りのお椀ですので地味な印象です。

身の底もごく普通の黒塗りのお椀ですが、蓋の裏は本当にきれいです。

蓋の裏には変り塗の名称を書いた文字が見えます。粘性の高い漆で文字を書くことは墨で書く何倍も難しいのですが、達筆で本当に素晴らしいです。

以下蓋の裏の変り塗です。

身の部分の変り塗です。

以下それぞれの変り塗をご紹介します。全部で十種あります。

1.はだれ雪(はだれゆき)

2.菊の霜(きくのしも)

3.菊結(きくゆい)

4.菊合わせ(きくあわせ)

5.月代(つきしろ) ここでは月志路という漢字

6.葉の霜(はのしも)

7.高雄(たかお)

8.春の山(はるのやま)

9.千草(ちぐさ)

10.夜の海(よるのうみ)

「葉の霜」の文字違い

このように同じ名称を書くにしても文字を変えています。作者の高い教養を伺わせます。

どこのどんな方がこの吸物椀を注文したのか分かりませんが、とんでもない手間と時間を掛けた、まさしく職人さんの畢生の作です。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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