ざんねんなぬりもの事典~若狭塗五段重 八寸重台付

初版 2022/09/21 14:43

改訂 2023/05/25 11:46

若狭塗の中には職人さんが自分で工夫をしたつもりでも、出来上がりがなんだか残念なものになってしまうものがあります。ここでご紹介するのは重台付の八寸重で大変な力作です。

重台にこの五段重を載せると高さは優に50センチを超える大作です。変り塗の種類は蓋、重台含め5種類です。明治中後期の作品と思われます。

重台には上の五段のズレを防ぐ型板が嵌められています。これにも変り塗を施す念の入れようです。

かなり使われており、内部の湯焼けが顕著です。若狭塗としては重箱の厚みがあるほうです。蓋は二方桟ではなく四方桟。五段重は二段、三段に分けて使うことが多く、蓋が二枚付いていることがほとんどです。このお重も蓋が二枚付いていますが、各段で異なった塗りが施されているので、蓋もそれに合わせて二種の変り塗にして欲しかったですね。

波型を描き変り塗の種類を重箱の途中で変えています。それぞれの変り塗は素晴らしいのですが、この波の形状で模様を切り返したことで中途半端な印象となり、なんとなく「ざんねん」な感じが漂ってしまいます。

特に中盤のこの紐と四角い箆を使った変り塗は素晴らしいデザインです。色も美しい。

蓋の変り塗です。粗い卵殻の海に四本の松葉を模様として配しており、素晴らしいセンスだと思います。

重台ですが、黒地に稗で赤、青で抜いた美しい変り塗です。

重台の一番下は檜葉と紐、菜種で付けられた変り塗です。

それぞれの技術が超絶でも「何か変?」な印象。若狭塗も「手を掛ければすべての作品が素晴らしくなる」わけではないようで、そういったことからも漆芸は難しいですね。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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