まるでタイムカプセル?! 文化十二年(1815年)作 朱塗珠蒔絵吸物椀
初版 2022/07/15 21:35
改訂 2023/08/20 16:46
古い漆器の中には、たった今塗り上がったような状態のものがごく稀にあります。まるで何百年間真空状態で保管されてきたかのようで、今回ご紹介するのはそうした器のひとつです。
十客揃いの吸物椀です。大振りですが、形の良い朱塗りのお椀です。
立派なサイズのお椀が十客あるとそれなりの迫力があります。
鳴門の渦潮を思わせる金の渦巻きです。もちろん手描きではありますが、十客の蒔絵の正確な再現性には驚かされます。
蓋を開けても全く使った気配がありません。完成してずっとそのまま置かれていたのでしょう。せっかく注文したのに残念な話です。
直径は13センチ強、たっぷりとした美しい形の器です。煮物椀のように見えますが、箱書には「吸物椀」と書かれています。木地はやや厚めではありますがとても軽く、ケヤキではなくアテ、ホウ、センあたりを使っているのではないかと思います。
「珠蒔絵」と箱書されていますので、この渦は珠模様と言うのでしょう。力強いデザインで「産地は輪島」と言いたいところですが、文化年間には輪島では蒔絵はまだ発達していなかったそうです。かなり腕のいい蒔絵師さんですから、京出来なのかもしれません。
近くで見ても傷ひとつなく、金蒔絵も光り輝いています。木地も痩せや捻れもなく、使われてはいませんが、漆器に最適な環境で保管されていたようです。
黒漆で塗られた共箱ですが、こちらは中の椀をしっかり守った替わりにかなり草臥れています。
左の「百八十九番」という文字は、後年売りに出された際に箱に書かれたものと思われます。その前に188点の品々があるということですね。余程裕福な家が没落して手放したお椀なのだと思います。
文化12年(1815年)はヨーロッパではナポレオンが「ワーテルローの戦い」で敗れ、セント・ヘレナ島に流された年です。長い年月、忘れ去られていたお椀が、我が家でナメコ汁なんかを盛られているのも何か不思議な気がします。
蒔絵師さん、ゴメンナサイ。これからはちゃんと料理します。
1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。
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sat-2019
2022/07/16 - 編集済みこれまたかなりの骨董品ですね😲
活かして長く使い続けることも大切ですね🙌
このような貴重なお椀で飲むなめこ汁も、また格別な気がします😆
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グリーン参る
2022/07/16実際にお椀を手にしてみると全く骨董といった感じはありません。たぶん展示会に新しいお椀と一緒に並べられても「新品」で通用すると思います。
漆器には湿度が絶対必要ですから、どきどき洗ってやるとさらに長持ちします。過度な湿気はカビの元になりますが、北海道の冬のような過乾燥は木地の割れや捻りを生じるので、湿度計を納戸に置いてチェックしています。
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