『若きカフカス人』~重要文化財 中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(旧旭川偕行社)

初版 2023/11/09 11:15

改訂 2024/01/30 20:47

中原悌二郎の彫刻を見に旭川市彫刻美術館にやってきました。何とも明治村っぽいですが、手前が六角堂、奥が旭川市彫刻美術館(旧偕行社)です。六角堂(1901年建築)は旭川市4条通12丁目にあった旧竹村病院の玄関を飾っていた塔屋部分です。本屋解体によりここに移築されました。

「旭川偕行社」‥‥ウィキペディアより。1896年(明治22年)、北海道札幌市屯田兵を中心として編成された陸軍第7師団が設置される。 それから4年後に第7師団は札幌市から旭川市に配置を移すこととなり、陸軍省臨時建築部の指揮の下、師団の生活する家屋とともに、将校たちの社交場「旭川師団将校集会所」として1902年(明治35年)に建設された。 木造二階建てで半円形の玄関など、当時の北海道としては珍しい先進的な洋風クラブの建築物であった。 この建物は、師団将校達へ向けた集会所・社交場や迎賓館となる目的で建設されたもので、当時は建物前庭の入口に門も取り付けられていた。往時には皇太子時代の大正天皇昭和天皇の行在所としても使用され、威厳があった。

明治35年の建築中の偕行社です。

戦後、この建物は国から市に移管されました。学校や庁舎の仮施設として使われた後は利用されず荒廃が進行。窓ガラスは割れ、鳥が棲みつき、昭和30年代には上の写真のような荒れ果てた姿になり、子供たちに「お化け屋敷」と言われていました。たしかに心痛む惨状です。

その後、旭川市がこの建物を修復、平成元年に旭川初の重要文化財に指定されました(現在も旭川で唯一の重要文化財です)。平成6年からは中原の作品を中心とした彫刻美術館として利用されています。彼は生まれは釧路ですが、育ちが旭川でここを故郷と呼んでいたそうです。

美しいバルコニーを持つ玄関です。

天井のシャンデリア。漆喰の基盤もきれいです。

展示室は二階です。入口正面、傾斜は急ですが洋風の素敵な階段です。

展示室の入り口が見えます。

中に入ると中原悌二郎の現存する全作品12点が並んでいて誠に壮観です。

展示室は間仕切りのない広大な空間になっています。

中原の代表作、『若きカフカス人』1919年作。トラブルになってモデルのロシア人が居なくなってしまったそうで、未完成のままです(後頭部がありません)。写実性が高いかは別として、「その人の魂を表す」という彼の目的は十分達成されているように思います。

芥川龍之介はこの像に感動し、ノートに次のように記しました。「誰かこの中原悌二郎氏のブロンズの若者にほれるものはないか。この若者は未だに生きているぞ。」見た目は「いけてる氣志團風」。

『乞食老人像』 そのまんまのタイトルですが、他に良い題はなかったのでしょうか。ずいぶんと哲学者っぽく見える男性です。

『老人』1910年

『墓守老人像』 1916年 それにしても老人ばかりの像が残っており、彼は「彫刻の対称として女性に興味が無かったのか」とも思ってしまいます。

『平櫛田中像』1919年 107歳まで生きた平櫛の47歳の像です。これが中原の遺作になりました。夭逝が悔やまれる鬼才だと思います。

荻原守衛作 『坑夫』1907年 荻原守衛の作品に影響を受けて彫刻家を目指したのが中原です。首から肩にかけての力強さが素晴らしいです。

荻原守衛がその彫刻にショックを受けたロダンの『ジャン・デールの裸体習作』1886年頃……『カレーの市民』のための習作です。   
静岡県立美術館による解説   『年代記』という14世紀の歴史書によると、ジャン・デールは二人の美しい娘を持つ誠実な商人でした。人質になるため、二番目に名乗り出たと記されています。完成した群像では、降伏の印としてイギリス国王に渡す城の門の大きな鍵を持って立っています。
この裸体の試作品では、握りしめた両手や全身の張りつめた筋肉の盛り上がりに、見えない鍵への重量感がうかがえます。両脚を開いて直立し、唇を固く閉じ、決然として前を見据える姿に、死を恐れぬ強い意思の力が感じられます。左右の腕は互いに異なった反りとひねりを見せ、強調された筋肉の起伏が見事に表現されています。完成作では、この力強い肉体は衣の下に隠されています。

傑作揃いの美術館ですが、観覧者が少ないので多くの方に見て頂きたいです。入館料はわずか450円です。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    Railwayfan

    2023/11/09 - 編集済み

    私の地元は彫刻の町と言われていて中原氏、萩原氏の彫刻を町中で見かけます。
    遊園地にはここのログで登場した『坑夫』、『若きカフカス人』があります。

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      グリーン参る

      2024/01/30

      Railwayfanさん、
      お返事が大変遅くなったことをお許し下さい。

      Railwayfanさんの地元には彫刻の名品が溢れているのですね。「坑夫」のブロンズ像は全国に何か所かありますが、これは宇部の常盤公園でしょうか。とても美しく野外彫刻を鑑賞する抜群の環境ですね。
      旭川の買物公園で見る佐藤忠良さんの作品も良いです。

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      Railwayfan

      2024/01/30

      いえいえとんでもないです(^^)

      グリーン参るさん正解です!
      ここは常盤公園です!
      公園、そして私の街は彫刻で溢れており癒されます。
      旭川も佐藤忠良さんの作品を初め、すてきな彫刻がたくさんあるんですね!
      私は北海道が大好きで旭川にもよく行ってました。
      この記事を機にまた旭川に行ったらじっくり見てみたくなりました。

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      グリーン参る

      2024/01/30

      是非旭川で彫刻を堪能して下さい。ラーメンも美味いですしね(笑)。
      人混みに紛れた美術鑑賞は、間違いなく見る人の感性を劣化させます。この美術館なら作品を一人占め出来ます🎵

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      Railwayfan

      2024/01/30

      美術鑑賞が独り占めできるなんて、なんとも贅沢であります。(^^)
      旭川は鉄道部品店もあることですし。ラーメンもぜひ堪能したいです。

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