和紙なモノ

初版 2020/04/29 14:12

改訂 2020/04/30 07:54

私め、房総半島の東端から、大都市東京日本橋まで大凡、120分近く電車に身を委ね働きに出ているものですから、電車の中で過ごす時間が、妻と過ごす時間より多いのではないか、と思うくらいに、冗長で情緒のない、いわば孤独の時間を過ごしているのです。


妻の代わりに(それは、以上であることには疑いの余地はないのですが)見目麗しい女性を眺めながら、邪な下衆な想像を描こうにも、何事も顔に現れてしまう質ですので、やおら女性を眺めようものなら、(コロナ騒動で電車を緊急停止させてしまった福岡の事案が思い出されます)不審者とおもわれ、緊急停止ボタンを押されてしまうんじゃないかしら、とどうにもやるせない気持ちに侵されるものですから、ついつい車中はスマートフォン(スマホ、なんて便利なのでしょう)を、いたずらに弄ぶしかなかったのです。


しかし、こと最近、"データ通信料が制限を超えましたので、制限モードに切り替わりました"などという、キャバレークラブで黒服が脅しのように延長有無を問いかけてくるような、この一瞬に何の意味があったのだろうか、否、愉しむことに意味などいらぬ、など格好をつけて刹那的に生きるハードボイルドを気取って、家に帰ってから妻にこっぴどく罵倒される、このような、いわば人生そのものを否定するようなメールが届くものですから、電車のなかでスマホを叩き壊してやろうか、はたまた、NTTド○モに苦情の一つでもいってやろうじゃないか、と思うのですが、やはり、不審者と思われて緊急停止ボタンを押されてしまうのも、他の乗客のみなさんに迷惑がかかってしまうなあ、と他愛を信条とする、私のちんけな品格が顔をのぞかせてくるため、ぐっと我慢して、耐え忍んでいたのです。


この鬱屈とした時間をどうにかできないものか、と思案をしておりましたところ、本をよんでみようじゃないか、これは名案だ!、いまは所謂"ステイホォム"なるプロパガンダが発せられてるわけで、読書はうってつけではないか!!

なんて、産まれたての小山羊でもわかるような(山羊は紙を食べるのでしょうか?)、迷暗なるくだらぬ論を信ずることとしたのです。


私は若かりし頃、自己紹介欄を書くときには気取って音楽レコード蒐集のわきに読書、などという誇大妄想に等しい言葉を書いていたものですから、"おい、君は一体どんな文学が好きなのかい?"と、不意にそのようなことを、尋問されてしまったら、へどもどして、おぼっちゃまくん(へけけ!)と、漱石の坊っちゃんとも答えられぬきがしましたので、古書を無駄に集め、本棚をみて、その恐怖から逃れようとしておりましたことをここに告白します。


さりとて、全くのポーズで本を集めていたわけではなく、しっかりとそして着実に読破しておったわけですが、不意に私が持ち合わせている断捨離の気質、ミニマリズムの精神("こんまり"以前の"こんまり"が私であると自負しております)によって、はたして蒐集させられた本を一掃してしまったのです。


しからば、また新たに本を買えばよいではないか、という、これまた滑稽で、まさに金の貯まらぬ欲望の亡者が顔を覗かせ、呑んでは吐き、吐いては呑むアルコール中毒者がどうにか酒にありつこうとするような無駄な行動に走らせ、気づけばこの二週間で10冊もの本が書庫に積み重なってしまったのです(むろん、先の気質ですから、全て缶ビールが買える程度の中古品であることを申し添えます)。


しかし、本棚に並べてみたならば、これがまた、桃の節句の雛壇のごとく、何か意味のある、そして気品のある並びにどうにもこうにもならなく、ミニマリズムの本性が顔を覗かせてきたので、読むまもなく、全て捨ててやろうかしら、と初めて父親の春画を見たときのような、何もかもどうにでもなれ、という、ある種、原始的な衝動がふつふつと沸きあがってきたのですが、しかし、その一方で、これらの本に費やした金を集めれば、ウヰスキーのダルマが2本くらい買えてしまうことを考えれば、いよいよ吝嗇さが顔を表し、どうにか妙案がないものか、以前友人から貰ったコーヒーが辛うじて一杯分残っていましたので、子供(小学校四年生)に淹れさせ、啜りながら思案していると、不意に障子紙で本を包み込んだらどうかしら?と、ダーウィンが唱えた進化論は自分のためにあるんじゃないかしら?と思うくらいに、私にとって非常にそして荘厳な案を思いついたのです。


果たしてさらば、そのような結論に達し、すぐさま障子紙を買いにでかけ(途中でマスクをしていないことに気づきあたふたと家に戻ってきました)、遂に漸く障子紙で本包を拵えることができたのです。


はい、すっごく疲れます…疲れました

ブックカバーつくるのにこんなに疲れると思いませんでした…まだまだたくさん残ってます…





#なんかスミマセン

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negrita

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    sat-2019

    2020/04/29

    お疲れ様です!
    これだけの文章を書かれるのに、相当なエネルギーを費やされたことを感じさせました🙌🏻
    しかしながら、毎日の長時間の通勤もさぞかしハードなことと思います。
    こんなご時世だけに、ご無理はなさらないようにして下さい🙇🏻‍♂️

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      negrita

      2020/04/29

      はじめは2行だったんですけど、流石にさみしいなぁ、とおもいダラダラと(笑)
      スマホのフリック入力ができないので(苦手!)、時間がかかりましたww٩(๑´3`๑)۶

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      sat-2019

      2020/04/29

      私もフリック入力は苦手ですので、ご安心下さい…🙇🏻‍♂️

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      negrita

      2020/04/29

      ほんと今の若い人たちはどうやって指動かしてんの!?って、もう、ついていけませんね(笑)

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    mj0129

    2020/04/29

    こんにちは。Negritaさん、読書とは、博学多才ですね!(わたしなんぞは、真っ先にBoxセットに目がいってしまいますが)いまどきは、車内で読書どころか、新聞を広げているサラリーマンもめっきり見かけなくなりましたよね。それにしても120分は長いですね。宣言下の中、大都市への通勤は、まわりにも気を使うし、大変ですね。いつ終息するのでしょうね?それにしても武漢から始まったのは、わかりきっているのだし、わたしの会社でも中国へ発注している原材料がいまだに足止めをくらってまして、まったく仕事ができませ~ん😠いったいどうしてくれるんでしょう?
    やる事が無いので、Stones聴いて過ごします!

    https://www.youtube.com/watch?v=ROAKlnaMuRw


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      negrita

      2020/04/29

      こないだのチャリティライブ的なやつ、無情の世界じゃなくて、こっちやればよかったのに!っておもうくらいジャストな曲ですよね〜✨
      はじめは楽観視してましたが、いやはや大事になったものです…
      いまはテレワークなので120分の時間がまるまる睡眠にまわって、元気いっぱいです(笑)

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      mj0129

      2020/04/29

      ですね〜〜✨しかし、テレワーク、リモートワークって、何も進まない。。。😥

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    nocturnalclan

    2020/04/29

    お疲れ様です!!
    私も過去に埼玉から千葉まで
    120分チョイと言う荒行通勤
    をしていましたので。
    御苦難の程良く理解いたします。

    で、本ですか、幸か不幸か
    生来のビブリオフィリア
    なもので、色々な背表紙が
    雑多に並んだ様が
    非常に癒される景色なので
    ブックカバーを必要とした事は
    無いです・・・・・

    大変そうですね。

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      negrita

      2020/04/29 - 編集済み

      埼玉から千葉ですかっ!!東京までなら上ってるかんじですが、通りすぎて千葉だと、下野してる感じかもですね(笑)ぼくもビブリオフォリアの気はあるので↓のようなものに興奮を覚えるくらいなんですが(なんのだっw)、本棚が比較的明るいところにあるので背が色あせてきてしまって、それを防ぐために、ってのもありまして〜٩(๑´3`๑)۶やりはじめて後悔してます(笑)

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